こんにちは。オーガニック農家の吉岡龍一です。
普段私たちは、さまざまな菌や微生物と触れ合いながら暮らしています。食に関する菌で代表的なのが、食べ物を発酵させるために使われる乳酸菌という微生物。
乳酸菌は、ヨーグルトだけでなく、味噌やヌカ漬けなどにも多く含まれています。乳酸菌のような善玉菌を多く体内に取り入れていくことで、悪玉菌を撃退し、健康的な身体を維持することができます。
菌のバランスは人間にとって、とても大切なんですね。
前回の記事で紹介したナチュラルチーズも、菌の力で熟成し、おいしくなっています。
農業の世界でも、菌は活躍しています。
野菜を健康に育てるために、最も重要な土作り。以前にもご紹介した緑肥を使ったり、堆肥などの肥料を畑に入れたりすることで、おいしい野菜を作るための土を作ることです。
私たちの農園では堆肥を使っていますが、これは人間の食べ残した、いわゆる食物残渣などを再利用して作ったものです。限られた資源を無駄のないように循環させる、環境を考えた堆肥です。
写真:堆肥の写真
この堆肥を、野菜の根が吸収しやすい状態にするためには、堆肥を分解してあげる必要があります。そのために私たちは、菌の力を使っています。
さまざまな菌が存在する中で、私たちが使う菌は、物質を分解する力を持っています。枯草菌(こそうきん)と呼ばれているもので、この一種が納豆菌にもなります。
写真:培養した枯草菌
この枯草菌を堆肥と混ぜることで、堆肥が細かく分解され、土中に溶け込みます。そして、野菜の根が堆肥の成分を吸収しやすいようにしてくれるのです。
菌を培養(菌を増やす)するには、米ぬかを使っています。米ぬかには、菌のご飯となる成分がいっぱいあります!
写真:菌類と米ぬかを混ぜる
菌類と米ぬか、それに水を入れて混ぜてから、一晩寝かせます。
写真:機械を使って混ぜます
すると、どんどん温度が上がってきます。
写真:温度が上がった様子
菌が活動を開始し、増え始めている証拠です。
中に手を入れると熱い!
最初は、少しツンとした臭い匂いがしますが、何日間かこれを熟成させると、チーズのようなほんのり良い香りがしてきます。熟成し、菌が元気になってきている証拠です。
これらの菌を畑にまいてあげることで、土と堆肥からの栄養を、野菜の根が吸収しやすい状態にしてあげることができます。こうやって菌の力を使うことで、健康でおいしい野菜を育てることができます。
オーガニックな農業は、化学的なものは一切使わずに、菌類や微生物など、自然由来の力でおいしい野菜を育てます。
そのための努力はこれからも続きます。
奥の深い菌世界は、1回ではご紹介しきれないので、これからもゆっくりご紹介していきます。
文・写真提供:リズムアンバサダー 吉岡龍一