空模様がいわゆる秋晴れになってくると、いよいよサツマイモ掘りの時期になります。雨が降った直後の畑では、土が湿っているので、芋を掘ると芋にその湿った土がついてしまいます。ですので、2、3日間晴天が続き、土が乾燥している状態で掘るほうが良いです。
収穫する前に、まずは伸びに伸びた芋つるを刈ります。つるは、3m〜4mほど伸びたりします。刈るだけでも、けっこう時間がかかりますので、しっかり作業時間を確保しておきます。私の農園でも、芋掘りの作業は毎年体験してもらっていますが、掘る作業よりも、このつるを刈る作業でみんなヘトヘトです。
せっかくなら、大きいサツマイモを掘りたいですよね!育て方によっては、子どもの顔ぐらい大きくなることもあります。野菜は全般的に、大きく育つと味も大味になるといいます。たしかにサツマイモもそうですが、スイートポテトなどお菓子にするなら、大きく育てたほうがなんだか得した気になります。
子どもに掘らせてあげるのにも、大きいほうが喜びますし、せっかくなら大きく育ててみましょう。大きく育てるためには、肥料をたくさんあげなきゃ!と思ってしまいがちですが、実はそうでもありません。特に、サツマイモの場合は、肥料を多くあげすぎると、「つるぼけ」といって、つるばっかり伸びてしまい、芋がまったく育たなくなってしまいます。
この現象は他の野菜にもあります。
トマトやナスなどは、木だけが伸びてしまって、実があまりつかなかったり…野菜には適切な量の肥料をあげましょう。野菜には野菜本来の力があります。その力を信じて、少なめに肥料をあげるぐらいがちょうど良いのです。
もう一つ、サツマイモを大きく育ててあげるためのポイントは、つる返しです。サツマイモのつるは、伸びていく段階でそのつるから根が生え、地面に根を張っていきます。根を張ってしまうと、その部分がまた土から養分を吸ってしまうため、これによっても「つるぼけ」が起きてしまいます。
ですので、つるがある程度伸びた8月頃に、つる返しといって、つるを地面から剥がして、つるを裏っ返しにする作業をしてあげます。そうすると、根である芋の部分に養分が集中して、芋が大きくなるというわけです。
新鮮な野菜がおいしい!というのは、すべての野菜で正しいわけではありません。夏の野菜、キュウリやオクラ、そして枝豆などは新鮮なものほどおいしいですが、芋類は時間を置けば置くほど、芋の水分が抜け、味が濃縮します。
特に、サツマイモはその代表格です。収穫したては、あまり味がしないので、必ず10日から2週間は置いてあげましょう。
最適な保存の環境は、13℃~15℃で湿度が85%くらいといわれていますが、農家でもそのような設備を持っている人は多くありません。家庭で保存するには、芋を新聞紙に包んでから、発泡スチロールなどに入れて、更にそれを布で包み、日の当たらない涼しい場所に置いておくと良いでしょう。
これでやっとサツマイモを食べられるわけです。
栽培自体が難しいわけではありませんが、ほんの少しの作業の工夫で、サツマイモのできは大きく変わってきます。栽培の方法に正解はありません。ぜひいろんな方法にチャレンジしてみてください。
文・写真提供:リズムアンバサダー 吉岡龍一