最近、若い世代を中心に、農業という職業や営みそのものを見直す動きが広まっていると感じています。
国が発表しているデータでは、年間で約5万人が新規就農者として、農業デビューしています。ただ、そのうち49歳以下の若手は全体の約35パーセントです(そもそも農業という業界では、49歳以下を若手と呼ぶくらい、産業従事者が高齢化しているのが残念ながら現状です)。
このデータには、そもそも家が農家で定年退職前くらい(つまり50歳以上)に会社を辞め、家を継ぐパターンも加算されているため、参考になる数字とは言い切れませんが、一定程度は、農業に関心があり、農業を仕事にしようとする若者がいるわけです。
実際に私もその一人です。農業を仕事にしようと思い、大学を卒業してから勉強や研修を経て、新規就農しました。前回説明しましたが、新規就農における新規参入者とは、親が農家ではない個人が、自ら農地を取得して農家になることです。
新規参入には大きなハードルがいくつもあります。農地を見つけ、農業機械を購入し、作業場を確保する。その全てを基本的には一人でやります。お金も時間もかかります。
新規就農を支援する制度を設けている地域もあり、担い手不足がより深刻な地域では、その制度が手厚かったりしますが、農業を始めるというのは、本当に経済的なリスクを伴う勇気のある決断だと思います。
私の場合は、制度に頼らず、自ら地域や農村を歩き、その地域の農家のおじちゃんおばちゃんに出会うことで農地を紹介してもらったり、作業場をお借りしたりしてきました。農村は保守的な場所だと思われがちだし、実際にそういう側面もありますが、1回仲良くなればあとはしっかり面倒を見てくれます。
難しいとされる新規就農ですが、逆に言えば、農業を始めたい場所を決め、その農村の人たちから学びながら始めれば、身体一つでできるのです。実際問題、農村では農業を辞めてしまう人が増えているわけで、畑や作業場はたくさん余っているのですから。
なにも新規参入をすることだけが、農業を始めるということではないと思っています。農業人生をスタートさせるために重要なのは、なぜ農業をやるのか?どのような農業をやるか?だと思います。
私の周りには、様々な農業をしている人たちがいます。小さな畑で作った野菜を、自ら調理して提供するレストランをやっている人もいますし、食べる野菜だけではなく、コットンを作って糸を紡いだり、障がい者の就労の場所として農園を運営している人もいます。
実際、私もただ野菜を作って販売しているわけではありません。地域で体験農園を運営したり、菜園付きマンションの菜園講師をしたり様々な取り組みをしています。野菜を作り、それを食べることは本当に面白いですし、素敵な営みだと思っています。
これから丁寧に、一つ一つご紹介できればと思います。
文・写真提供:リズムアンバサダー 吉岡龍一