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缶切りが使えないアイドルたち~カラダの機嫌をとってみる(姿勢編)

缶切りが使えないアイドルたち~カラダの機嫌をとってみる(姿勢編)

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缶切りが使えないアイドルたち~カラダの機嫌をとってみる(姿勢編)

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先日、テレビ番組を見ていたら、あるアイドルが「これまで経験しなかったことに挑戦する」という企画があり、そこで選ばれたのが「缶切り」でした。

缶切りを前にして彼女たちは「怖い」「わからない」と漏らしたのです。一部は演出もあるのでしょうけれど、おっかなびっくりの様子はあながち演技だけでもなさそうでした。

その様子を見て、「わけがわからないな。缶切りくらい普通するでしょう?」と思ったのです。しかし次の瞬間、そういえば私も久しく缶切りを使っていないことに気づきました。

最近の製品はプルトップで簡単に開けられるものがほとんどだからです。生まれたときから缶切りを使ってわざわざ蓋を開けなくても済む環境があったのならば、当然開けた経験がなかったとしても不思議な話ではありません。

tin can food on wooden board

「普通、それくらいはするでしょう?」とか「そんな当たり前のこともできないの?」といった戸惑いは、放っておくと「嘆かわしい」といった感情的な反応に簡単に結びついてしまいます。しかしながら世の中が変われば「普通」「当たり前」の基準も移り変わります。環境の違いがもたらした結果を能力の問題と直接結びつけて考えてしまうのは、短絡に過ぎます。

それに「缶切りもできないの?」と若い世代について嘆いたとして、100年、200年前の人からすれば、私などは「火起こしもできないの?」「田植えも満足にできないの?」と言われてしまうようなレベルにあるわけです。

いつの時代も若者は「そんなこともできないのか」と何かにつけて先行世代に言われがちです。前の世代が若い頃もそう言われたはずです。これは若い世代だけの問題ではなく、時代がくだるにつれて起きる避けがたい現象です。

どういうことかと言うと、社会が「発展」し、高度に複雑になるほどに、自分の身ひとつで生きて行く必要がなくなります。私たちは体を使って生活していくことから遠ざかっており、手ずから行う機会が減っています。そのひとつの現れが「缶切りができない」なのでしょう。

彼女たちの振る舞いでとても印象に残ったのは「姿勢」です。

例えば、ノコギリだとか包丁だとか道具を扱うには、それにふさわしい姿勢があります。道具を使ってものに対して働きかけるには、行いに伴う構えがあります。でも、彼女たちにはそれが見当たりませんでした。そして缶切りを持つ手に入れる力の加減がわからない様子でした。

それを見て、思い出したのは以前、複数の小学校教師から聞いた話です。教師らは「最近、鉄棒にぶらさがれなかったり、登り棒を上れない子をちらほら見かけるようになった」と話してくれました。

統計があるわけではないので、そういう子供が本当に増えたのかわかりません。ただ目立つようになっているというのが、教師らの実感でした。

大人の常識からすれば、力の入れ方がわからないのは考えられないことでしょう。けれども子供らの様子やアイドルの反応を見るにつけ、ひょっとしたら「力の入れ方がわからない」身体像がこれからの世代の前提になりそうな予感がします。

昭和世代は「やればできるはずだ」「がんばれ」とさんざん言われ続けてきたこともあって、やたらと力を入れるといった硬直した姿勢をとることには長けています。

ですが、がんばったところでどうしようもないし、がんばらなくてもいろんなことに手が届く時代に生まれた人にとって、力を入れる理由がわからないのも頷ける話です。

実際、スマートフォンがあれば身体を使わなくてもいろんなことが行えます。わざわざ力を用いる意味がわからないとも言えます。

Man opening tin

こういう現象に先行世代が「昔はよかった」といってもあまり意味がありません。根性や忍耐を持ち出して身体に無理を命じることが習い性となったとして、それは身体を無視していることに他ならないからです。

身体を使って生きていくことから離れていく傾向はますます高まっていくでしょう。身体は脳の思い描いた通りにならない、コントロールできない煩わしいもの扱いされていくことでしょう。

しかし、私たちが生きていく上で手放せないことがあります。それは「生きている実感」です。これがないと、いまのところ私たちは人生を味わうことができないのです。イメージの中で実感を得ようとしても所詮はイメージで、そうした思い込みでは「味わう」という深い納得を伴う体験は得られないのです。

私たちはどのような状況であれ、喜びと幸せを求めています。想像ではなく手触りのあるそれらを得たいと思っています。そのために体験が欠かせません。験とは「ためす」を意味し、要は実際にやってみることでしかわからないのです。

イメージを感じるのではなく、自らが動いてみて身体で感じる。生きる上での基本的な姿勢とは、身体で験すことにあるのだと思います。

文:尹雄大

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