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「腰を入れる」がわからない私たち 〜カラダの機嫌をとってみる(姿勢編)〜

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「腰を入れる」がわからない私たち 〜カラダの機嫌をとってみる(姿勢編)〜

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私たちの体からは足腰が消えかかっています。前回、「低い姿勢に不慣れになり、どんどん足元がおぼつかなくなっている」と書きましたが、その現象も足腰を失いつつあることと関係しています。

足腰が消えかかっている。そう言われてもピンとこないかもしれません。そこでものは試しで腰に手を置いてみてください。どうでしょう。

いまどきは身体のくびれたところを指す人が増えています。読者の中にもくびれに手を当てた人もいたと思います。しかしながら、そこはウエストであって腰ではありません。

日本の伝統的な捉え方からすれば、腰は帯を巻いた時に体感できる空間です。解剖学が言う腰椎を意味しているわけではないのです。

Kendo

スポーツや武道では「腰を入れる」という表現がよく用いられます。

コーチが「腰を入れろ」と指示したところで、腰についての共通理解がなければ誤解が生まれる可能性があります。腰をウエストだと捉える人が増えているようでは、腰を入れても身体をねじる動きにしかならないでしょう。

では、足の方はどうかといえば、太もものあたりの感覚は濃厚でも末端に行くほど感覚は薄いはずです。足指はどうでしょう。素足になってフローリングや畳の上に立ってみてください。ものを掴むような動きをすることで身体を前進させられますか?仮に進んだとしても中指から小指にかけておぼつかない感じがしないでしょうか。地面を掴むこともないため動きも感覚もぼんやりしています。

足も腰もよく感じられないのであれば、「腰を入れる」の「入れる」に至っては、さっぱりわからないかもしれません。私たちが日常的に慣れているのは「力を入れる」ですから、「腰を入れる」が何を意味しているのか掴めないのです。

腰を入れたつもりでも、単に腹筋に力を入れ、膝を曲げて姿勢を低くとっているだけのことも多いでしょう。しかも体重を太ももの筋肉で支えるものだから、そんなに長時間は低い体勢は続けられません。それでは「腰を入れる」とは、きつい姿勢を我慢して続けるという誤解だって生まれるでしょう。

私も「腰を入れる」が何か本当のところわかりません。ただ腰を入れると重心が少し下がります。膝を曲げて姿勢を低くするのではなく、あくまで腰を落とすようにすると足腰に力が入る感覚が生じます。この時の「力が入る」は、局部の筋肉に力が入るものではなく、自然と張る感じです。

腰を低くし、そのまま腰を下げていくと座る姿勢になります。立つと座るは別のポーズではなく、腰の位置によって身体の様子が変化しただけのものではないでしょうか。

そこで普段の所作を思い出して欲しいのです。例えば椅子に座っていて、そこから立ち上がるとき、スッと立つのではなく、「よっこいしょ」という動きになっていないでしょうか。この「よっこいしょ」は太ももなり局部に力を入れて立ち上がるときの動きです。

私たちは立つと座るとは別個と考え、座ると力を抜いて腰がへたった状態になりがちです。力を抜いた状態だからあえて入れないと立ち上がれません。だから「よっこいしょ」は二挙動の動きになります。

でも、必要なのはただ立つことですから一挙動で済むはずです。しかし、それが足腰の消えかかった現代人には難しくなっています。

それは何も日本に限った現象ではないようです。

兵馬俑

先日、兵馬俑展を見に行きました。たいへん感銘を受けたのは跪いた姿勢で弓を構える「跪射俑」で、彼は座っているのに座っていないのです。

肘を膝にもたせかけていても置いてはいない。左右の足首は直角が保たれ、胸も肩も落ち、首もすっと立って背骨の上に乗り、背は歪むこと伸びています。つまり、いつでもスッと立ち上がれるし、弓を引けるし、かけ出せるといった、臨戦体勢です。

展示では現代人が作った複製品も並べられていました。ふたつを比べて明らかなのは2200年前と現代の中国では身体観が全く異なってきていることです。

レプリカの跪射俑は、立ち上がるには「よっこいしょ」が必要です。低い姿勢は不安定だからと股を開くことで安定しようとし、しかも尻をかかとの上にもたせかけて完全にベタッと座ってしまっています。これではすぐに立ち上がるのは難しい。

しかも、首の位置は前へずれていて、その重みを張った肩で支えようとしています。同じ跪射の姿勢を作ったつもりかもしれません。

けれども現代人の身体観というフィルターを通して見た結果、出来上がったものは必然的に現代人そっくりになってしまっています。

中国人もまた足腰がわからなくなっているのかもしれません。

文:尹雄大

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