初登場以来、10年以上もの間愛されている「パジャマアンダー」。就寝時にパジャマの下に着ることで、からだから熱が逃げていきやすい部位をカバーして、ここちよい眠りに導いてくれます。ストレスを感じにくい肌ざわりのよい生地も魅力たっぷり。そんな「パジャマアンダー」が生まれた経緯や工夫について、開発に携わったふたりにインタビューしました。
――「パジャマアンダー」はどんなきっかけで生まれた商品でしょうか?
岡本 ワコールには1964年に発足した人間科学研究所がありまして、女性のからだを科学的に研究し続けています。研究所発足当時からの体型計測データはたくさんあったのですが、20年ほど前に、体型だけではわからない、人の生理現象を見ていくと、もっといろんな発見があるんじゃないかという話になり、体型研究に加えて生理研究を開始することになったんです。中でも温熱生理に注目したのがきっかけです。
白綾 当時は日中に着る肌着のみを開発していましたが、人間科学研究所のデータを活用できたからこそ、「パジャマアンダー」が生まれました。「睡眠科学」というテーマでパーソナルに特化して開発を進めようとしていたタイミングでもあったんですよ。
岡本 人のからだの皮膚温がわかるサーモグラフィという装置で年代別、サイズ別のからだの皮膚温のデータを集めていたのですが、年代やサイズが違っていても肩から背中にかけての皮膚温はみんな高かったんです。その理由を探ると、背骨付近は脂肪がつきにくく皮下組織が比較的薄いため、からだの熱が逃げていきやすい部位だということがわかりました。つまり皮膚温が高いのは、それだけ体内の熱が奪われているということなんです。
白綾 そういったデータに基づいて、普通に一枚の肌着を着るだけではなく、その部分をふさぐような発想でアイディアを出していきました。方法として、生地を二重にすることもできますが、この商品は編み切り替えといって組織をその部分だけ変えることで熱を逃したくない部分を厚地に仕立てる集中保温設計を採用したんです。吸湿発熱性のある繊維を使用して、首回りや袖口などの開口部のあきを少なくすることでも熱を逃げにくくしています。
2018年10月より店頭に並ぶ「パジャマアンダー」トップス。
――長年販売されていますが、今回の商品ならではの特徴はありますか?
白綾 最初に発売したときは、先述したように編み立てで縫い目が発生しない仕様だったんですけど、今回は脇と背中の部分のパーツを変えているので、縫製しています。でも、眠るときに背中には圧がかかるので、縫い目があると気になってしまいますよね。そこで、特殊な縫製で縫い代がペタッと平らになるように仕上げています。そこが、ほかのインナーをつくるときとの違いでしょうか。就寝のことを考えてつくった、繊維自体が柔らかいフワフワした肌ざわりなので、日ごろ通常の肌着のチクチクやかゆみを気にされている方にも、ぜひ手に取っていただきたいですね。
白綾 今回のカラー展開は4色です。10月からの発売ですが、店舗によっては夏でもクーラー対策の需要があるので店頭に置いていることがあります。ぜひ店頭でチェックしてみてくださいね。
――開発の時、何に一番苦労されましたか?
岡本 当時から、サーモグラフィや衣服と人の皮膚の間の温湿度を測るセンサーなどの装置があり、生理現象を数値で表すことはできましたが、まだ測定技術も今ほどなかったので、出てくる結果がまちまちだったり、その結果が実際の製品の着用感とどう関係しているのかが不明瞭だったり…と、そのあたりでつまづいていました。とにかく、自分たちで試作品を持って帰って、試着を繰り返し、みんなの着用感が一致するかどうかを確かめていました。試作品は女性用ですが、少しでも多くの意見が聞きたくて、男性メンバーにも声をかけて着て寝てもらっていましたね(笑)。
――トップスと合わせるのにオススメのアイテムについても教えてください。
白綾 腹巻とボトムもご用意しています。トップスと同じ吸湿発熱素材で、腹巻はたっぷりの丈があるのでおなかもお尻もすっぽりとカバーして温めてくれます。トップスと同じく腹巻の背面とボトムのウエスト部分は熱を逃しにくい仕様に。さらにボトムの裾は、開口部を狭くして温かさを保つようつくっています。
岡本 お手持ちのパジャマと合わせて使っていただけますので、ぜひこれからの冷え込む季節にお試しください。
語り手/白綾真弓(しらあや・まゆみ)
卸売事業本部 パーソナルウェア商品営業部 商品企画課
睡眠科学・グランダーのデザイン担当
語り手/岡本智子(おかもと・ともこ)
人間科学研究所 研究企画課
人間科学研究所にて素材や人の生体について基礎研究をベースにした商品開発に従事。初代ナイトアップブラで寝るとき用ブラのカテゴリーを開拓するほか、研究所からのサニタリーショーツ、美ショーツ骨盤サポートなどのオリジナル商品開発、人ともの(製品)の温熱特性を考慮したワコール商品開発のバックアップなど、日常生活を快適に過ごすための研究開発を行っている。繊維製品品質管理士。
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二
※今記事は、文章・写真ともWacoal Body Bookより転載し、「Rhythm」にあわせ体裁を整えたものです。
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