手足がいつも冷たいことに慣れてしまったり、冷えなんて大したことないと軽視することが、美しさや健康に大きなマイナスの影響を及ぼすかがよくわかったところで、いよいよ実践編です。
体内に居座るにっくき”冷え”を撃退する方法とは? 引き続き東京女子医大附属青山自然医療研究所クリニック所長の川嶋朗先生にお伺いしました。
「生まれたときから冷えている赤ちゃんはいません。むしろ子供は常に熱を発しているエネルギーの塊。それが大人になるにつれて冷えてきてしまうということは、つまり冷えは後天性で、生活習慣による要因が大きいのです。
からだの隅々にまできちんと血がめぐり、冷えないからだをつくるには、大きく分けて3つのポイントがあります。ひとつめは、「食事で内側から温めること」。
食材には、からだを温める”陽”の食べ物、からだを冷やす”陰”の食べ物とがありますが、いきなり食材を把握するとのは難しい…という人には最初のステップとして “冷たい食べ物、飲み物を控える”ことを実践してください。
冷たいものを口にした瞬間に胃腸の血流はぐんと減ります。常温以上の食べ物、飲み物を心がけてください。それでも冷えていると感じるなら体温以上のものを口にしましょう。さらに対策を練るならば、食材を気にしてください。からだを温める食材の基本は
・寒い地方で採れたもの
・旬が冬のもの
・色の濃いもの
・味の濃いもの
・地中に向かって伸びるもの
と覚えておくといいでしょう。
具体的に一部を紹介すると…
【野菜】
玉ネギ、かぼちゃ、わらび、長ネギ、にんじん、らっきょう、パセリ、れんこん、かぶ、菜の花、ピーマン、にら、小松菜、にんにく、グリーンアスパラ…など
【肉類】
鶏肉、牛骨や髄、鳥レバー、羊肉、豚レバー
【魚類】
いわし、まぐろ、鮭、鯖、あなご、ぶり、かつお、えび、うなぎ、明太子、ちりめんじゃこ
【穀類、豆類】
玄米、もち米、黒豆、あずき、納豆
【果物、木の実類】
ざくろ、あんず、桃、さくらんぼ、黒ごま、くるみ、栗、なつめ、松の実
があげられます。からだを冷やす食べ物としては、蕎麦、小麦、豆腐、タケノコ、ナス、トマト、ほうれん草、きゅうり、レタス、カニ、カキ、梨、白砂糖、コーヒー、緑茶…などですが、これらも熱を与えれば、温め料理に変身します。からだを冷やすと言われているコーヒーなどもホットで飲めばコーヒーの “熱”は体内に取り込めるのです。
また、食事の際、よく噛むことも冷えには効果てき面です。からだの中に熱が生まれ、熱が生まれればからだが温まり、体温も上昇します。
太ももを温めて”冷え”を撃退!
ふたつめのポイントは「からだを外側から温めること」。取材を受けている今もそうですが、患者さんを診ているときも絶えず私の太ももの上にはこの電気湯たんぽ『エコ湯~ゆ愛』が乗っかっています(笑)。
1か所だけを温めると汗をかいて冷えてしまうので、ときどき腰の右側、左側、椅子と背中の間に挟むなど、いろいろな場所に動かしながらも特に太ももは重点的に温めます。それは、太ももや二の腕など、筋肉の多い場所は血めぐりに効果的な場所だからです。そこを温めるとからだも効率よく温まりますよ。デスクワークの方など、ぜひ試してみてください。
また、外側からからだを温めるのに”お風呂”は必須。毎日シャワーで済ませてしまっているという方、それではからだは温まりません。お風呂に入るとき、お湯の温度はどれくらいに設定していますか?
お風呂は自律神経を整えるにも有効な手段。なぜなら、お湯の温度しだいで自律神経のスイッチが切り替わるからです。その境目となる温度は40度。40度より高いお湯につかると、交感神経(活動モード)にスイッチが入り、40度よりも低いお湯につかると、副交感神経(休息モード)にスイッチが入ります。
夜、これから寝ようとするときに優位にしたいのはもちろん、副交感神経。ということは、夜入るお風呂のお湯の温度は40度以下が望ましいということがわかりますね。できれば40分以上時間をかけてゆっくり入るのがいいでしょう。
心臓病の方などは、半身浴で心臓への負荷を軽くしたほうがいいですが、その場合を除いて、肩まできちんと沈めて浸かってください。途中暑くなったら、ヘリに腰かけるなどからだと相談しながら入ってくださいね。
お風呂から出る際にも気をつけてほしいことがあります。それは、脱衣所を温かくしておくこと。お風呂あがり、急に寒いところに出ると血管が収縮して血めぐりが悪くなってしまいます。同じ理由から、お風呂あがりに冷たいものを飲むのもご法度です。せっかく温まってリラックスモードになったからだが目覚め、冷えてしまいます。
お風呂にゆっくりつかって副交感神経を優位にすることは、昼間のストレスを解消する方法としても有効。冬だけでなく、シャワーで済ませがちな夏にもきちんと浸かってくださいね」
お風呂と食事、今日から実践できそうなことばかりです。お風呂あがりに当然のように冷蔵庫を開けていた習慣も実はからだを冷やしていたんですね。
※今記事は、文章・写真ともWacoal Body Bookより転載し、「Rhythm」にあわせ体裁を整えたものです。
先生/川嶋朗(東京有明医療大学教授)
取材・文/大庭典子(ライター)
関連キーワード
| Wacoal Body Book | 冷え性 | 温活 |