最近よく耳にする”冷え取り”や”温活”などの言葉。寒い季節になると”冷え”からからだを守るグッズやアイテムが多く並び、冷え対策の意識も高まります。
今回は”冷え”について、そのメカニズムや冷えによって起こるからだの不調、さらに克服するための対策法について、東京女子医大附属青山自然医療研究所クリニック所長の川嶋朗先生にお伺いしました。
「今、現代人の半分以上の人のからだが冷えていると言ってもいいでしょう。これは55年前の体温の平均データと比べても明らかなこと。昭和32年度の日本人の平均体温は、なんと36.9度。平均でこの体温ですから、37度を超えていた人がざらにいた、ということです。現在の平均体温を示す実測データがないのでどのくらい下がっているかは正確にはわかりませんが、おそらく今の平均は36度台前半でしょう。
この50年で一気に現代人のからだが冷えたことがわかります。そして、冷えはからだだけでなく、心にも影響しますから、からだや心に深刻な”冷え”を抱えているのが現代人だと言えます。
50年前と比べて体温が下がっているということは、言いかえると、この50年で私たちが歩んできた生活の発展は、心身を”冷やす”文化であった、ということ。冷蔵庫の普及によりいつでも冷たいものが飲めるようになったこと、家庭や職場、あらゆる場所にエアコンが備わり自ら体温調整をする必要がなくなったこと、乗り物が増えてからだを動かす機会が減ったことなどのすべてが”冷え”につながっています。
そもそも冷えとは、手足や腰などがいつも冷たく感じる症状、あるいは体質のことです。冷えは、大気の温度などの寒さとは違い、からだの内側、内部に入り込んだ冷たさなので、外部の気温に関係なく、暑いときでも、真夏でも、冷えの症状は出ます。
ただし、忙しい現代人に”冷え”は放っておかれがち。私が診ている患者さんの多くは重度の病を患ってから、”そういえば冷えていました”と振り返る人がほとんどです。ところが、冷えというのはそんなに軽視していい問題ではありません。慢性化したり、冷えが進んでしまうと、美にも健康にも深刻な悪影響を及ぼして、病気を引き起こす原因になりうるのです。
冷えは痛みと同じように個人的な感覚でもあります。同じくらいのレベルの冷えでも、日ごろから自分のからだの変化や不調に気がつきすぐに改善させようとするか、冷えくらいどうってことない、と見ぬふりをして後回しにしてしまうか、個人のからだとの向き合い方でのちのちの美や健康には大きな差がついてしまいます。まずは自分が冷えているかどうか、チェックしてみましょう。
(※以下チェックボックス)
□ 低血圧である
□ 体温が低い
□ 肩こりがひどい
□ 腰痛がある
□ 膝痛がある
□ 下痢気味
□ 便秘気味
□ 疲れやすく、寝ても疲れが取れない
□ イライラしやすい
□ やる気がおきず集中力がない
□ 貧血気味
□ 夏でも汗をかかない
□ 朝起きるのがつらい
□ 生理痛がひどい
□ 生理前に不快な症状が出る
ひとつでもチェックが付いた場合は、からだが冷えている可能性があります。ほかにこんな方法でも冷えがチェックできますよ。
◆朝、目が覚めて布団の中で手のひらを脇の下に挟み込みます。次にその手をおなかの上に置いてみます。脇の下よりもおなかのほうが冷たいと感じたら、からだは冷えています。
◆耳を折ってみてください。健康な人はそれほど痛くないはずですが、飛び上がるような痛みを感じる人は、毛細血管の末端まで血が通っておらず、冷えている可能性があります。
冷えを撃退するにはまずは”冷え”を自覚することから。自身のからだの声に耳を傾けながらチェックしてみてください」
チェック項目いかがでしたか。次回は実際に冷えがどのようにからだ、美容、心に影響しているかについて、お伺いします!
※今記事は、文章・写真ともWacoal Body Bookより転載し、「Rhythm」にあわせ体裁を整えたものです。
先生/川嶋朗(東京有明医療大学教授)
取材・文/大庭典子(ライター)
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