歯周病予防のためには、歯垢や歯石を除去することが欠かせません。とくに、歯石がたまる歯周ポケットケアは、なかなか自分で行うのはむずかしいものですよね。歯科で歯石を取ってもらう方法がありますが、自分の手磨きで除去できないか気になるものです。
もしかしたら、電動歯ブラシで除去できるかもしれないと思っている方も多いでしょう。そこで本日は、電動歯ブラシを使って歯石を取ることができるのかをご紹介します。
結論から言えば、電動歯ブラシでは、歯石を取ることはできません。
電動歯ブラシは、歯の表面をブラシの振動によって磨くため、手で磨く歯磨きより効果的に歯磨きができるといわれています。しかし、歯石を取ることはできません。
よく、電動歯ブラシで「除去率」がいわれることがありますが、これは、歯垢(プラーク)の除去率のことを指すことが多いようです。歯石とは異なりますので、誤解をしないようにしたいですね。
電動歯ブラシの種類には、振動式、回転式、音波式などがあります。中でも、音波式のものは、音波による振動や、音波水流という音波によって発生させた水流を使って歯を磨くもので、その振動数は手磨きの何倍もあるなどとよく耳にします。しかし、このような音波水流であっても、歯石を除去することは不可能です。
その理由は、振動によって摂ることができるわけではないからです。
歯垢と歯石の違いを明確にしておきましょう。
歯垢は、プラークともいわれるもので、細菌のかたまりです。歯磨きを怠ると、歯の表面がネバネバしているのを感じることがあるでしょう。実は、このネバネバしたものが、歯垢なのです。虫歯菌や歯周病菌などの細菌が1g中、なんと1,000億個以上も棲んでといわれているのです。イメージすると気持ち悪くなりますよね。
この歯垢の中には、細菌と共に、細菌が作り出したネバネバした物質が含まれており、歯の表面にこびりつきます。これにより、菌が作り出した酸が守られるのです。
普通、菌が酸を作っても、唾液の力で流すことができます。しかし、長時間、歯垢を放っておくと、酸がネバネバのバリアで守られてしまい、結局、酸が歯を溶かすことになってしまいます。これが虫歯です。
そして、歯垢は、やがて歯石へと変化していきます。歯垢の中に、唾液から沈着したカルシウムやリンによって、硬く石のようになってしまうのです。歯垢を取ったと思っても、歯と歯の隙間や、歯と歯茎の隙間には、たっぷりと歯垢がたまったまま。
歯周ポケットという歯と歯茎の間の溝に歯石がたまると、奥深くに入り込み、取るのが厄介になります。そうして、歯周病菌によって歯茎が炎症し、やがて歯の骨が溶ける重度歯周病につながるのです。
この硬くなった歯石は、手磨きの歯ブラシではもちろん、電動歯ブラシではとても取ることはできません。
歯石取りは、歯科で行ってもらわなければなりません。歯科では、主にスケーラーという先の尖った道具や、専用の超音波の機器などで歯石を除去します。
ところで、歯科では、ホワイントニングという施術が用意されていることがありますよね。このホワイントニングと歯石取りとはどう違うのでしょうか?
ホワイントニングは、歯に沈着したステインという色素汚れを除去するための方法です。ホワイトニング剤やレーザーなどを使用して行われています。これは、歯垢とは異なりますので、気をつけましょう。
電動歯ブラシでは歯垢派除去できても、歯石を除去することは不可能です。
普段から、歯垢をためないためにも、手磨きや電動歯ブラシを活用して、歯垢取りを欠かさずに。歯石になってしまうと、もはや歯科で取ってもらうしかなくなります。
文:リズム編集部
監修:高島美祐 (神谷町デンタルクリニック)
高島 美祐(たかしま・みゆう)
早く確実に治したい方や、何度も再発してなかなか治らなかった方のために、マイクロスコープとCADを使った短期集中治療に特化した歯科医院「神谷町デンタルクリニック」を東京都港区虎ノ門にて開院。歯の病気が早産や生活習慣病、認知症につながることや、かみ合わせの不良により顔のバランスが乱れてしまうことなどを啓蒙している。超高齢化社会において、自分の歯をできるだけ長く残すための治療を実践しており、国内外からの来院がある。
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