一過性のブームというよりは、日本の国民文化のひとつになった感のあるキャンプ。さまざまなキャンプのスタイルが登場し、その楽しみ方も多様化するなか、Rhythm ULTRAでは「火」「雪」「野生」にフォーカスしたキャンプ特集をお届けします。今回は、アウトドアの「火」に特化した専門ショップ「iLbf(イルビフ)」を訪問し、店主の堀之内健一朗さんにキャンプには欠かせない焚き火の奥深い楽しみ方をレクチャーいただきました。
■特集:キャンプと火と
1. インタビュー:川口拓 「サバイバルな野遊び」ブッシュクラフトって?
2. 嗜好品としての炎を味わう。「火とアウトドア」の専門店「iLbf」の焚き火ガイド
3. 500g以下限定! 超軽量焚き火台を尾崎”Jacky”光輝さんとレビューしてみた
4. テントを使わない快適な雪中泊。イグルーの作り方とその魅力
5. 焚き火キャンプ場&スノーキャンプ場ガイド
――アウトドアでの焚き火には、どんな楽しみ方があるでしょうか。
堀之内 キャンプでの焚き火の目的を大きく分けると、「調理」「暖をとる」「安らぎを求める鑑賞用」の3パターンになるでしょう。焚き火に何を求めるかによって、使う道具も準備の仕方も変わってきます。焚き火台ひとつとっても、バーベキューに特化したものや鑑賞に特化したものなど、いろんな志向のものがあるわけです。自分の用途に合った道具を選ぶ必要があります。
「iLbf」は店舗のほか、焚き火のデモンストレーションを行うスペースを併設している。
「もともとは倉庫にしていた場所ですが、焼き肉屋に行った時に部屋のなかで焚き火を燃やせる仕組みが作れるだろうと思いついて、こんなスペースができました」(堀之内)
堀之内 実際に焚き火をしながらお話ししましょうか。この薪は桜ですが、優しくて甘い香りがします。燻製によく使われる材木ですね。薪の材質によって燃え方や香り、音が変わってくるんです。クヌギや栗はパチパチという音が積極的に出ます。観賞用に焚き火を楽しむ方には、こういったものを提案します。
それから、火をあまりいじらずに長く焚き火を楽しみたいのであれば、持ちの長い樫がいい。とにかく重くてクヌギの2倍くらいの重量があります。
――薪の違いを楽しむというのはおもしろい発想ですね。
堀之内 木の種類にこだわるのは、この店なりの提案です。うちでは薪を量り売りしているんです。それぞれ火に特徴があっておもしろいですよ。
――いま使われている焚き火台はすごくシンプルなつくりですね。
「PAAGO WORKS NINJA FIRE STAND」
堀之内 この焚き火台「PAAGO WORKS NINJA FIRE STAND」はとても軽くて、巻物のように畳んで持ち運べます。例えば自転車で移動しながら、休憩がてら焚き火を楽しむような人は持ち運べる荷物の量が限られるので、こういうコンパクトなモデルが良い。
中央手前のストーブが「SOLO STOVE」
堀之内 鑑賞用としてはこの「SOLO STOVE」もお勧めです。お湯を沸かすためのストーブですが、簡単な焚き火をするのにも丁度いい。独特の二重構造になっていて、それがいわゆる二次燃焼を起こしやすくするので煙が出にくい。だから鑑賞に適しているんです。薪は拾ってきた小枝や松ぼっくりで十分ですし、後片付けが楽なのも良いですね。
――暖をとる目的だとどういう焚き火台が良いでしょうか。
オプションのパネルを2枚追加した焚き火台「ANCAM FIRE WHIRL」
堀之内 間口が広くて、燃やしている時に薪がよく見える焚き火台がいいですね。薪が露出するものだと遠赤外線の熱線がじかに届くので暖かい。
この「ANCAM FIRE WHIRL」はパネルを組み合わせるタイプの焚き火台。パネル4枚がベースなんですけど、オプションのパネルを足すことでさらに間口が広がります。
――いわゆる焚き火とは別に、薪ストーブも注目されているように思います。
薪ストーブ「Orland Camp Stove」
堀之内 薪ストーブは焚き火を閉じ込めて無駄なく燃やすことができるもので、エネルギーの効率がいいので少ない薪で楽しめます。最近はフィールドで使えるコンパクトなモデルが増えていて人気も高い。
ただ、薪ストーブは扱いが難しいものなので、使用方法をしっかり理解したうえで、自己責任のもとで使うことが求められます。そのうえで、使い方を極めれば冬が楽しくなりますよ。
――基本的なアイテム以外に、あるとおもしろい焚き火道具を教えてください。
「Kindling Cracker」(ハンマーは別)
堀之内 薪割りの道具としては斧や鉈がありますが、もっと安全に薪を割ることができるのがこの「Kindling Cracker」です。これならお子さんでも扱えるでしょう。焚き火では薪の大きさをコントロールすることが大事。こういう簡単に薪を小さくする道具があれば、焚き火が効率良くなりますよ。
――いろいろなアプローチがあるなかで、どんな焚き火スタイルがお勧めでしょうか。
堀之内 もちろん人それぞれですが、焚き火の恩恵をいちばん受けるのは調理して食べることですよね。焼き芋だけでも、普段食べているおにぎりをちょっと焼いただけでも絶対美味しい。いつもと違う体験を通じた調理だからこその感動がありますよね。
――確かに、凝った料理を作らなくても楽しいですよね。
堀之内 そういう意味では、お湯を沸かすだけでも楽しさがあります。空き缶に水を入れて、焚き火の近くに置いておくだけでいい。お湯は暖もとれるし飲むこともできる。キャンプでは、お湯はあるに越したことはないもので、そういうものを用意するだけでも楽しいことなんです。
それから、焚き火を始めるまでの過程もひとつの醍醐味だと思います。薪を拾って来ることとか、ファイヤースターターを使って原始的な方法で着火することは親子で楽しめますよね。
――もともと、どのような経緯でアウトドアで使う「火」の専門ショップを始められたのでしょうか。
「iLbf」店内
堀之内 子供の頃に五右衛門風呂を焚くのが好きだったんですけど、大人になってアウトドアに目覚めて焚き火をするなかで「やっぱり火っていいな」と感じたことがひとつのきっかけですね。
もうひとつ具体的なきっかけになったのが、趣味のスカイスポーツを楽しむ時に車中泊をするようになって、車中泊のための道具のオンラインショップを作ったことです。でも、車中泊のお店なのに、どういうわけか焚き火とか火の道具ばかりになっていってしまった(笑)。それで、こういう火の道具を集めたらおもしろいなって考え始めたんです。
とは言え、お店の構想を練っている時は不安でしたけどね。冬はまだしも、夏にお客さんは来てくれるのだろうか、なんて考えてしまって。でも実際に「iLbf」を始めたら、年齢も職業も関係なくいろんな方が来てくださるようになりました。
火のあるところに人は集まるんですよ。キャンプ場で初めて出会った人同士でも、焚き火に誘えば自然と道具を持ち寄って集まる。そういう不思議な魅力があります。焚き火は、コミュニケーション能力を高めて自然と話せるようにしてくれるツールなんですね。
――アウトドアに馴染みのない人がこれからキャンプでの焚き火を楽しむにあたって、どんなところから始めるのがいいでしょうか。
堀之内 あまり詰め込みすぎず、気軽に外に出てみること。まずはデイキャンプで焚き火をしてご飯を食べるのがいいのではないでしょうか。焚き火で調理をしなくても、お弁当を食べるだけでもいいと思います。そうやって楽しんでいるうちに、テントで泊まるとかバーベキューをするとか、次の選択肢が浮かんで来るはずです。
キャンプを始めると、何かしら不満が出て来るんですよ。椅子の座り心地が悪かった、焚き火をしたけど寒い体験だった、日帰りでは物足りなかったとか。そういう不満を少しづつ解消して、アップデートしながら楽しむといいと思います。
iLbf(イルビフ)
アウトドアで使う「火」をテーマにした専門ショップ。
焚き火台、薪ストーブ、ランタンといったギアや豊富な種類を揃えた薪など、さまざまなアウトドアスタイルに応じた火にまつわるアイテムを販売している。
住所:〒342-0003 埼玉県三郷市彦成4-4-17 みさと団地南商店街104
商店街専用共同駐車場12台あり
TEL:048-951-4949
営業時間:
OPEN 11:00(土・日のみ10:00)
CLOSE 19:00(土曜のみ20:00)
定休日:月曜、隔週火曜
https://ilbf.jimdo.com/
取材・文/Rhythm Ultra編集部 撮影/小高雅也
■特集:キャンプと火と
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『健康でなければ、番組でカルチャーがどうのこうのなんて言っていられない!』 宇多丸×宇垣美里 インタビュー Vol.1(後編)