こんにちは。リズム編集部です。
今回は、新しくリズムアンバサダーとして連載を開始される高島美祐さんに、お話を伺ってきました。高島さんは、日本では数少ないマイクロスコープを利用した歯科治療に取り組まれています。そんな高島さんに、電動歯ブラシにまつわるお話や口腔ケアの重要性についてお聞きしました。2回のインタビュー連載形式でお伝えします。
高島美祐
歯科医師。早く確実に治したい方や、何度も再発してなかなか治らなかった方のために、マイクロスコープとCADを使った短期集中治療に特化した歯科医院「神谷町デンタルクリニック」を東京都港区虎ノ門にて開院している。歯の病気が早産や生活習慣病、認知症につながることや、かみ合わせの不良により顔のバランスが乱れてしまうことなどを啓蒙している。日経メディカル掲載や2015年OKWave Thanks賞受賞など、メディアでも広く取り上げられている。超高齢化社会において、自分の歯をできるだけ長く残すための治療を実践しており、国内外からの来院がある。
−−まずは、現在流通している電動歯ブラシについてお聞きしたいのですが。
口腔ケアの製品は海外ブランドのものが多くて、日本人のニーズに必ずしもマッチしていないという印象ですね。例えば、高齢者の口腔は非常にデリケートで繊細なのですが、海外ブランドのものだと刺激が強すぎるといったことがあります。
より早く、確実にケアできる商品を見つけるのは、容易ではありません。
−−日本人が求めるニーズには、どんな特徴があるのですか?
海外の方は日本人よりも、歯茎が強い傾向にあるように思いますね。一方で日本人は、口腔が繊細で、高齢者の例でもそうですが、世代ごとに求められるものが違ってきます。
−−世代ごとにニーズが違うということですか?
はい。例えば、子どもの歯磨きには、ちょっと楽しめる工夫が必要です。大人の場合、ビジネスなど対人交渉で多くの人と会うことが増えますので、毛先が少し固めの電動歯ブラシを用いて、歯をつるつるに磨かれている方もよく見かけます。
−−なるほど。確かに歯が汚いと初対面の印象も悪いですね。
ただ、歯の表面はつるつるなのに、歯周ポケットで歯石がガチガチに固まっているという方も実は結構いるんです。
−−電動歯ブラシを使っているのにですか?それは圧力などの関係で、歯の隙間の手入れがしにくくなるということでしょうか。
骨格標本のように歯並びが綺麗だと手入れも楽なのですが、実際は人によって違いますので、流行のものが万人にあうということにはならないですよね。例えば、歯の裏側は人によって違います。つるっとしていたり、窪んでいたり。だから、歯の場所によって最適な歯ブラシの形状も変わってくるのです。
1本の歯ブラシで全て済ますことができるのが理想なのですが、実際はなかなか難しいところです。
−−適切な口腔ケアをするためには、具体的にどう対処すればいいのでしょう?
歯並びがよくない方の場合、電動歯ブラシであっさりすませるよりは、毛が柔らかい通常の歯ブラシを使って隙間に入れ込むなど、歯ブラシを使い分けるのも有効ですね。
−−そもそも、電動歯ブラシを使用する以前に、正しい磨き方をよく知らない人が多いようにも思うのですが…。
残念ながら仰る通りです。ちなみに、電動歯ブラシの場合だと、「正しく磨く」というより「正しく当てる」という感覚です。一面2秒を目安にするといいですね。圧が強すぎてもダメです。歯肉に悪影響が出ます。やり方を間違えると知覚過敏の原因になる恐れもあります。
−−使い方を間違えるとデメリットもあるということですね。では、メリットはどんな点がありますか?
きちんと歯に当てるなら、電動歯ブラシのほうがプラーク(細菌)除去は圧倒的に上です。短い時間で効果は高いので、費用対効果を考えれば、多少高価でもいいのかなと思います。
人生を豊かに過ごす上で、歯磨きの果たす役割は、意外と大きいのです。歯の状態が悪いと病気になりやすいのです。歯がなくなると、噛みあわせる力が弱くなり、脳への刺激が低減することで認知症の遠因ともなります。食べ物を細かく砕けないことで、飲み込みにくくなったり、消化不良も引き起こします。
お口の中が健康になると、寝たきりになるリスクが下がるといいます。香川県の調査によると、歯周病が進行している方とそうでない方とで医療費が2倍違うんです。お金の問題だけではなくて、もちろん見た目の印象も大きく異なりますよね。虫歯がある方とそうでない方とでは。
つまり、歯を丈夫に長く保つことは、生涯コストの軽減や、質の高い生活の維持につながるのです。なので、日頃からの歯磨きが何より大事なのです。
今回の前編では、電動歯ブラシのメリット・デメリットを中心にお話を伺いました。後編では、なぜ口腔ケアがそれほど重要なのか、もし怠ると一体どういうことになってしまうのか、具体的にお聞きします。
語り手:歯科医師・高島美祐
文:リズム編集部
写真:たつろう