厚生労働省が平成26年に実施した調査では、仕事関連における強い不安や悩み、ストレスを感じているとする労働者が半数を超えるという結果が出ています。
従来より積極的に労働者の心の健康増進へと繋げる試みとして、メンタルヘルスケアの実施を呼びかけていたにも関わらず、近年もストレスによる精神障害を発病し労災認定される労働者の増加傾向が止まることはありませんでした。
そこで登場したストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する必要性から、労働安全衛生法の改正法律として平成27年12月1日に施行されたものです。
今回は、そのストレスチェック制度の目的や意義について詳しくご紹介します。
ストレスチェックとは、自分のストレスの状態を調べるための質問表に労働者が記入し、それを集計分析することによって、ストレス状態を確認する簡単な検査のことです。
下記3項目、57の質問事項を4段階で答えていく方式で、ウェブ上でも所定の用紙でもどちらでも回答可能となっています。
1)職場における心理的な負担の原因に関する項目
2)心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3)職場における他の労働者による支援に関する項目
ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防止するための一次予防強化が狙いです。定期的に労働者のストレス状況についての検査を実施し、本人にその結果を通知することによって、自らのストレス状況を認識してもらい、ストレス低減を図ります。
それとともに、事業者は検査結果を集団毎に集計・分析することによって、職場のストレス環境を把握し、労働環境改善に繋げていこうとするものです。つまり、事業者に対して、ストレスの要因を減らしていく努力を求めています。
そして、ストレスの高い労働者を早期に発見することで医師の面接指導に繋げ、結果としてメンタルヘルス不調の未然防止に努めることが最大の目的です。
1)事業者は、年に1回労働者に対して、医師や保健師などによるストレスチェックを実施します。(※労働者数50人未満の事業所では、当分の間は努力義務)
2)検査の結果は、検査を実施した医師や保健師から直接に本人へ通知されます。本人の同意なくしてこの結果は事業者へ提供することはできません。
3)結果を踏まえて、高ストレス者として認められ、面接指導を受ける必要があると判断された労働者から申し出があった場合は、事業者はその労働者に対して面接指導を実施します。
4)事業者は、面接指導した医師から意見を取り入れ、必要に応じて職場環境の健全化に向けた措置に取り組みます。
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を狙った新しい制度となりますが、実はこの制度の受検義務はありません。しかし、個々のメンタルヘルス不調の有無を早い段階で知ることのできる機会だと捉えて、自発的に行動し、利用することが望まれています。
また、事業者は受検していない労働者に対して受検をすすめることができ、その際、受検の有無の情報取得は、労働者の同意を得る必要はありません。これは、労働者と事業者が共に協力することによってこそ、この制度の価値は高まるものと考えられているからです。
労働者のストレスへの気付きを促すだけではなく、事業者側にも労働者のメンタルヘルス不調の未然防止という大きなメリットが生じることになります。
そして、事業者に課せられている集団分析結果を踏まえて、より働きやすい職場環境をつくるという努力義務の成果のためにも、お互いの協調が必須であると言えるでしょう。