「家電のことでお困りのことがあったら、なんでもお聞きください」というスタンスで、「家電コンシェルジュ」として活躍中の神原サリーさん。
今回は、「今どきの家電」についてお話を伺いました。想像を超える進歩スピードに、まるで未来の話を聞いているよう。買い替えのタイミングやモデル選びなどでお悩みの方も、参考になる内容です。
神原サリー(かみはらさりー)
顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュ。新聞社勤務、フリーランスライターを経て現在に至る。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆や商品企画、コンサルティングなど幅広く活躍。豊富な知識と取材経験を基に家電の賢い選び方・使い方を発信しており、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞等のメディアへの出演、記事掲載も多数。一般社団法人日本睡眠改善協議会認定・睡眠改善インストラクター。東京・広尾に事務所兼「家電アトリエ」を持つ。ブログ『Sallyの家電アトリエ』http://kaden.k-sally.jp/
—「うふふ」ポイント(前回参照)を確認するためにも、家電を選ぶときは実際に店頭へ足を運んだほうがいですか?
最終的に店舗で買わないとしても、触ってほしいし、見てほしい。試せるものは試してほしいですね。さらに言えば――よく「おトクに買うには?」という質問も受けるんですが――家電の「おトク」は安く買うことじゃないですから。大切なのは「自分にとって最適なものが選べたかどうか」で、それこそが「おトク」なんです。
10年スパンで使うものを、「数千円あるいは1~2万円安いから」という理由で買った場合、その後10年間「なんか違うなあ?」と思いながら使うことになりかねない。10年間毎日首をかしげながら使うなんて、不毛じゃないですか?
だから、価格に惑わされないでほしい。買うタイミングは「ほしいと思ったとき」「これがあったら毎日幸せになると思ったとき」。「これでお料理をつくりたい!」「これだったらアイロンがけが楽しくなるかも」という商品に出合ったときが、買いどきなんです。
—最新のものを選んだほうがいいのでしょうか?
私は「家電はロングセラーであれ」というタイプ。でも現実は、流通や価格維持の面で仕方のない部分もあるとはいえ、それほど変化のない商品でも「モデルチェンジ」とうたって新商品として売られている場合も多いですよね。
反面、数年間同じモデルを売り続けているケースもあります。三菱電機のZITANGというオーブンレンジ(RG-GS1)がその好例で、2012年の発売からずっと同じ型が売られているんです。つまり、このジタングはある意味完成品であり、多くの人に愛されているロングセラー家電です。
でもロングセラーは少ないので、「革新的にモデルチェンジした新商品を買うか」「実際にはそう変化のない商品を前年モデルで買うか」という見極めをしたうえで、「賢く」買うことは大事だと思いますよ――「おトク」ではなくてね(笑)。
結論としては、見極めが大事で、すべての商品を最新モデルで買う必要はないと思います。
—買い替え年数はどう考えるべきでしょう?
さきほど「買いたいときに」という言い方をしましたが、家電の買い替えスパンは一般的に8~10年です。洗濯機・エアコン・オーブンレンジは8~10年、モーターが劣化してしまう掃除機は少し短くて6年ぐらいでしょうか。
—10年経ったら、壊れていなくても新しいものを買い直したほうがいいということですか?
今から10年ぐらい前の製品の多くは、省エネではないんですよね。ただし、2~3年前以降に買ったものであれば省エネ性能が上がっているので、もう少し長く使えるかもしれません。
たとえば10年以上使っている冷蔵庫やエアコンは、すぐに買い換えたほうが。ランニングコストもですが、機能性が格段に上がっているというメリットも大きいです。10年前の商品を使っている方にとっては、浦島太郎レベルの衝撃を受けるほどですよ(笑)。
—今後、伸びそうな分野の家電は?
このサイトを運営するオムロンに迎合するわけではないんですが(笑)、高齢化社会で健康寿命が大事とされる現在、自分の身体の状態をチェックできる健康分野は伸びていくと思います。体重・血圧・脈拍、どれだけ歩いたか、運動したか、眠ったか、という計測をする機器ですね。
健康をつくるには、まずは自分の状態を知ることが大事ですから。また、健康分野には空気系も含まれます。エアコン、空気清浄機、温度管理を含め、空気環境をコントロールする家電も注目度が増すんじゃないかな?
あとは調理分野。人間の基本的な欲求であり健康にもつながるものだけに、この分野は不滅ではないでしょうか。
—家電はこの先、まだまだ進歩を続けるんでしょうね。
IoTや人工知能の進歩とともに、まだまだすごい商品が登場しますよ。そうした進歩の大きなメリットは、白物家電でもハードを買い替えなくてよくなるということ。機能はすべてソフトウェアでアップデートできるようになるので。
たとえばヘルシオ(シャープ/AX-XW300)の場合、現在のメニューは1000ほどですが、ソフトをアップデートすることで2000メニューにまで増やすことも可能になります。マッサージチェアにも人工知能付きのものが登場していますよ。
ルピナス(ファミリーイナダ/FMC-LPN1000)という商品は、人の背中に反応してプログラムを最適化して、その日の体調に合ったマッサージをしてくれるんです。もちろん、日々の健康管理の機能も付いています。
—すごい……。
新しい家電が欲しくても「どうせすぐに新しいのが出ちゃうんでしょ?」と買い控えしていた人も、ソフトで最新機能が手に入るのであれば、買う時期を悩む必要もなくなりますよね。まさに「ほしいときが買いどき」の時代が来ているんです。
—家電の「今」がすごすぎて、ますます選ぶのに迷ってしまいそうです……。
そういう方が多いからこそ、私の役目もまだまだ必要なんです(笑)。ウェブで検索できない人、店頭でどう聞いていいか分からない人、身体が不自由だったり忙しかったりでお店に行けない人のために、なるべく発信チャネルを増やして有意義な情報を伝えていきたい。
私がラジオやテレビなどにも出るようにしているのは、そうした情報に触れてもらう機会をなるべく増やしたいからなんです。
語り手:神原サリー
文:細井秀美
写真:リズム編集部