あなたにちょうどいい、リズム|Rhythm

『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』 日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.2

『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』 日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.2

  • Column
  • INTERVIEW

<COLUMN>
『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』 日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.2

更新日:

| ヒップホップ | ライフスタイル |

日本語ラップの黎明期から活動を開始して、2019年には30周年を迎えるヒップホップグループ「RHYMESTER」。今年の9月には11枚目のアルバム「ダンサブル」をひっさげてツアーを開催中だ。MCを担当する宇多丸さんは、ラッパーとしてだけでなく、ラジオパーソナリティーを務めるなど、アラフィフになっても多忙な毎日を送っている。そんな宇多丸さんに、ヒップホップの話と共に、生活リズムを整えるための普段のライフスタイルについてお話をお伺いしました。(Vol1前編後編より続く)

宇多丸(うたまる)
ラッパー・ラジオパーソナリティ。ラップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。早稲田大学在学中に「ソウルミュージック研究会 GALAXY」に所属し、後に後輩となるMummy-Dと出会い、1989年にRHYMESTERを結成。日本語ラップの黎明期からシーンを牽引してきた。当初からヒップホップシーンで評判だったトークスキルが、後にラジオパーソナリティとして開花。TBSラジオ『ウィークエンドシャッフル』の他、インターネット放送「AbemaTV」の『水曜The NIGHT』などでも活躍中。今年9月には、11枚目となるアルバム「ダンサブル」をリリースすると共に、ツアーを開催。来年1月には島根・東京・京都の三か所にて追加公演が決定している。

音楽以外で集中したい時は、無音がいい

——高校生以降は、主にブラックミュージックを聞いていたということでしたが、宇多丸さんにとって、普段の生活のなかで音楽というのは、どういう位置づけになるのでしょうか?

ブラックミュージックに限らず、僕は大まかに言えば、リズムが気持ちいいダンスミュージックが好きなんですよね。だから、ダンスミュージックの要素が多いニューウェーブや、ハウスなども好きです。

ミュージシャンなので音楽漬けな毎日だろうと思われがちですが、実は逆ですね。朝、起きてすぐに音楽をかけたり、街中を歩くときに常にヘッドフォンで音楽を聞くといったことは、今はしないです。これを言うとよく驚かれるのですが、実は無音の状態のほうが好きなんですよ(笑)。

——それは、確かに驚きますね(笑)。

音楽が鳴っていると、どうしてもそっちに気を取られてしまうんですよ。たぶん、僕は音楽を聞きながら他のことをすることができないんですよね。“ながら”で何かすることができないというか。だから、音楽以外の仕事の時は、無音じゃないとダメなんです。

街を歩いているときでも、常に音楽を聞いているという感じではない。ヘッドフォンをして自分がチョイスした音だけを聞くというのが、ちょっとどうなんだと思えてきて……。街を歩くだけで、街で鳴っている色んな音とか、人の話し声が聞こえてくる。それを全部、シャットアウトしてしまうのはもったいないと思うんですよ。

自分を気持ち良くさせるためのルーティンというか、この曲をこんなシーンで聞けば気持ち良くなるというのはあって聞くこともありますが、音楽をむやみやたらと垂れ流すことには抵抗感があるんですよね。

音楽を聞くと勉強モードになってしまう

——音楽を聞くときは集中して聞いて、それ以外のときは、今、そこにある音を聞くという感じですか?

なるべくメリハリをつけたいと思っています。音楽を聞くのに一番好きなシチュエーションはクラブですね。クラブに行って大音量で音楽を聞いて踊るとか、バーで好きな曲をかけてもらってお酒をたしなむとか。それが僕にとって一番、音楽に集中できる状態なので、そういった時間を過ごすのが好きです。

逆に、自宅にいるときは基本的に無音です。テレビをつけっぱなしにする時期もありましたが、それすらもうるさく感じるようになってきたので、気づくと音楽もテレビも止めて無音にして過ごす時間のほうが多くなったと思います。職業上、もっといろんな音楽を聞いたほうがいいんですけどね。ある意味、職業病みたいなところもあるし、聴覚情報に敏感だという面もあると思います。

特に新しい音楽を聞くとなると、この新しい音楽を自分ならどうできるだろうとか、分析的に聞いてしまったりするので、どうしても身構えてしまう。だからどうしても、心地良くはならないんですよね。どうしても勉強モードになってしまうので、リラックスはできないというのが理由ですね。

——プロのミュージシャンになるまでは、頻繁に音楽を聞いていたんでしょうか?

当時はウォークマン全盛でしたから、ティーンエイジャーの頃はどこに行くにもヘッドフォンで聞いていました。外に出ても自分の好きな音楽だけ聞くのは、自分の世界に籠もって“自分が主役だと思える”最強のツールだと思うんですよ。

これは僕の持論なんですけど、極端なことを言えば、音楽好きな人にはナルシストが多いですよね(笑)。もちろん、僕もそういう時期があって、自分の生活を好きな音楽で彩って、主役気分に浸っていたこともありました。

ただ、若い頃は自分が自分がということになりやすいけれど、さらにオトナになってくると、外の情報にも目を向けたり、人の話を聞いたりしてもっと勉強したいという気持ちが強くなってくるじゃないですか。だから、年齢を重ねるごとに、外界を遮断して自分の好きな音楽に浸るという行為は、少なくなっていったのかもしれませんね。

そういうこともあって、自分を慰める時だとか、リラックスしたい時に聞く音楽と、仕事上聞く音楽というのが、僕のなかではかなり乖離した形で存在しているということだと思います。

音楽は“逃げ場”となるひとつのチャンネル

——自分を慰めたりリラックスしたい時に聞く音楽というのは、どんなモノですか?

これはハッキリしていて、映画音楽と80年代の洋楽ですね。音楽が仕事になる前に好きだった音楽ばかり。クラブでDJするときも、今は80年代の洋楽専門です。ただ、無人島に1枚だけ持っていくなら、映画のサントラ盤ですね。それ1枚さえあればいいやっていうのがあります。

それは、1978年の映画スーパーマンのサントラ盤。スター・ウォーズシリーズなどでも有名なジョン・ウィリアムズの作品です。小学校4年生の時に映画を観て、すぐにサントラ盤を買った。当時はDVDなんてない時代ですから、映画を追体験しようと何度、聞いたことか。

おかげで聞く必要ないくらい頭のなかでいつも全曲オール再生できるほどですが(笑)、自分を慰めたいときによく聞きます。このサントラを頻繁に聞いていたあの頃に戻れるんですよね。

——音楽を聞いていた頃の自分に戻ると言いますか、ある意味、リセットみたいなところがあるんでしょうか?

懐メロを聞いていた頃の自分に戻れるといった感じですよね。当時、よく聞いていた音楽を聞くと、その頃に抱いていた気持ちにスッと戻れる。これは、音楽に限った話ではないと思いますが、そういった逃げ場というかチャンネルをいくつか持っておいたほうがいいと思います。何か傷つくようなことがあったりしたら、避難できる場所を自分なりに作っておくといいですよね。

僕の場合は音楽が仕事だから、音楽のことで嫌な思いをしたときには、音楽ではなく、映画を観ようとかマンガを読もうとなる。映画の評論もやっているので、逆に映画方面の仕事で何かキツいなあとなると、音楽に逃げるとか。そんな感じで、いくつか逃げ場となる複数のチャンネル、しかもまったくそれぞれがリンクしない逃げ場を作っておくと、メンタル的にいいと思います。

心を落ち着かせるためのセッティング方法を知る

——逃げ場となるチャンネルを持つのは、確かにいいかもしれないですね。

もっと言えば、人とのネットワークもたくさんあったほうがいいと思います。例えば、僕の仕事のことをまったく知らない飲み友だちとか(笑)。僕の本名は佐々木士郎ですが、行きつけのお店でよく一緒に飲む友だちから「佐々木さんってラッパーだったんですね!この前、テレビで観てビックリしましたよ!!同一人物とは思えない」とか。普段は大人しいので、そのギャップにみんな驚くんですよね(笑)。恐縮するやら恥ずかしいやらですが、それも僕にとってのチャンネルになっています。

そういう意味では、自分が何をすれば心が落ち着くのかといったセッティングの方法を知っておくことが重要。何をすれば、自分を慰めることができるのか。それをわかっている人とわかっていない人とでは、大きく日々の生活が変わってくると思います。その方法がわからないまま生きていくことって、けっこう辛いと思うんですよね。

音楽が好きとか、映画が好きといったことだけでなく、好きなことが人それぞれにあると思います。それを自分で言語化できるほどにわかっている人というのは、逃げ場を見つけて、そこで自分を慰めたりリセットする。それができる人は、かなり救われているんじゃないでしょうか。

(『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.3(前編・後編)へ続く)

構成・文:國尾一樹
写真:たつろう

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • Line
  • Hatena
  • Pocket

関連キーワード

| ヒップホップ | ライフスタイル |

関連記事

食物アレルギー日記 vol.27 アレルギーっ子の生活習慣 早わざ!原材料名確認

  • Column
  • Food

食物アレルギー日記 vol.27 アレルギーっ子の生活習慣 早わざ! ...

専門家が教える!気になる断食と腸内フローラの関係とは?

  • Column

専門家が教える!気になる断食と腸内フローラの関係とは?

歯磨きは食後にすればいい?いつするのがベスト?【歯科医監修】

  • Column

歯磨きは食後にすればいい?いつするのがベスト?【歯科医監修】

シマ唄が流れる島、静けさが聞こえる島 〜島の、リズムvol.5〜

  • Column
  • Relaxation

シマ唄が流れる島、静けさが聞こえる島 〜島の、リズムvol.5〜

理学療法士が選ぶ健康予防のためのダイエット1週間筋トレ

  • Beauty
  • Column
  • Exercise

理学療法士が選ぶ健康予防のためのダイエット1週間筋トレ



新着記事

婦人用体温計と普通の体温計の違いとは?

  • Beauty

婦人用体温計と普通の体温計の違いとは?

ホットヨガの正しい呼吸法とポーズのやり方は?体の部位を意識しよう

  • Relaxation

ホットヨガの正しい呼吸法とポーズのやり方は?体の部位を意識しよう

季節の変わり目に起こりやすい冷えと自律神経の乱れに効果的な簡単ツボ押し

  • Beauty
  • Relaxation

季節の変わり目に起こりやすい冷えと自律神経の乱れに効果的な簡単ツボ押し

「朝型」は優秀なビジネスマン・ビジネスウーマンの条件? あなたの睡眠タイプをチェックしてみよう。

  • Relaxation

「朝型」は優秀なビジネスマン・ビジネスウーマンの条件? あなたの睡眠タイプをチェックしてみよう。

立秋(りっしゅう)/内臓冷えと夏バテに要注意

  • Beauty
  • Relaxation
  • Special
  • 提携メディア

立秋(りっしゅう)/内臓冷えと夏バテに要注意

人気記事

疲労回復やダイエットにも!水泳の驚きの健康効果

  • Exercise

疲労回復やダイエットにも!水泳の驚きの健康効果

インタビュー:村山彩 旅先で何を食べる? トライアスリートの体を作る食事【特集:トライアスロンと旅】

  • Special

インタビュー:村山彩 旅先で何を食べる? トライアスリートの体を作る食事【特集:トライアスロンと旅】

筋肉の疲労回復におすすめのマッサージ4選:筋肉痛になる前に対処できる!

  • Relaxation

筋肉の疲労回復におすすめのマッサージ4選:筋肉痛になる前に対処できる!

疲労回復レシピ!野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」の作り方

  • Food

疲労回復レシピ!野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」の作り方

ロンドンの男女は自転車ライフで輝いている!

  • Beauty
  • Column
  • Exercise

ロンドンの男女は自転車ライフで輝いている!

PAGE TOP

PAGE TOP

閉じる