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パックラフティング体験レポート【特集:パックラフトと川の旅~パドルスポーツの現在】

パックラフティング体験レポート【特集:パックラフトと川の旅~パドルスポーツの現在】

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パックラフティング体験レポート【特集:パックラフトと川の旅~パドルスポーツの現在】

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驚くほど軽く、コンパクトになることで、パドルスポーツやリバーツーリングの可能性を大きく広げると言われるパックラフト。その概要や魅力についてはここまでの特集記事を読んでいただいた方はすでにおわかりかと思いますが、やはり実際に体験してみなければ本当のところはわかりません。そこで、ここまでの特集でもパックラフトの魅力や楽しみ方を語っていただいているサニーエモーションの柴田健吾さんを訪ね、初心者向けのトレーニング&ダウンリバー講習を受けさせていただきました。

■特集:パックラフトと川の旅~パドルスポーツの現在
1. インタビュー:柴田健吾(サニーエモーション) パックラフティングを楽しもう
2. インタビュー:堀川臣樹(パドルクエスト) カヌー、カヤック、SUP
3. ギアからひも解くパックラフト旅:長谷川晋(Hiker’s Depot)
4.パックラフティングを楽しむフィールド、その広がり
5. パックラフティング体験レポート

柴田さんが待ち合わせ場所である安曇野市を流れる犀川の畔の運動公園の駐車場に現れると、さっそくクルマから丸められたパックラフトを取り出して広げ始めた。確かにとてもコンパクトで、空気の入っていない状態はまるでイカのするめ。持ってみても、片手で軽く持ち上げられるほど軽い。モデルにもよるが、1艇約2~3kgしかないという。

大型のスタッフサックのようなバルブ付きのナイロン製の袋を取り出すと、柴田さんはパックラフトのバルブと袋のバルブを繋いだ。パックラフトへの空気の注入は、なんとこの袋で行うのだ。空気で膨らませるタイプの家庭用プールを思い起こしていただければ、それを空気でパンパンにするには相当の労力が必要だし、ポンプが不可欠であることはご想像いただけると思う。しかし、大型のポンプやブロアーなどを持ち歩けば、せっかくのパックラフトの携行性が台無しになってしまう。歩いて幾つも峠を越えた先の川を下ったり、自転車の旅にも持っていけるのがパックラフトではないか。そこで考えられたのがこのインフレーションバッグで、中に空気をたくさん貯めてさっと締め、足や手で圧縮することによって空気を注入していく。

一回で結構な量の空気が入るし、足踏みポンプよりも軽く収納サイズもコンパクトで、労力も時間もかからない。慣れれば6~7回繰り返せば空気が入ってしまうという。こんなところからもパックラフトが徹底的に「旅の道具」として考えられていることを感じる。

エディキャッチとフェリーグライド

スローロープを使ったレスキューの講習

さてセッティングが終わり、ライフジャケットとヘルメットを着用していよいよ川へと降りる。最初の練習場所はプール状になった川の傍流で、まず柴田さんから転覆時の心構えからレクチャーを受けた。曰く、万一横転して艇から落ちた際には無理に川底に足を着こうとせず、ライフベストに身を任せて浮かびながら足を上げて流された方が良いのだとか。川底に足を着こうとすると石などに足が挟まれ、流れで溺れてしまう場合があるという。

続いてパドルの持ち方と基本的な動かし方の簡単なレクチャーを受け、いよいよパックラフトに乗る。乗船フォームは足がやや曲がった体育座り状態でグッと足と腰を前後に突っ張った状態が基本で、本体の剛性が低いパックラフトは、人が乗ってフレームになることで初めて成立する設計だという。そしてパドルはゆっくりでも、一漕ぎ一漕ぎを深く刺してしっかり漕いだ方が進むし、スピードが出てくればパドリングも軽くなる。重めのギアの自転車で漕ぎ出すイメージだとか。さらに右のパドルを漕ぐ時は右足を、左のパドルを漕ぐ時は左足を突っ張るようにする。

で、おっかなびっくり漕ぎ出してみたけれど、最初からなかなかうまくはいかないもの。練習場所はプール状で流れがほぼ無かったにも関わらず、ぐるりと一周しようとするとうまく回れずに本流に流されそうになった。緩やかとはいえプールの中にも流れはあるので、なかなかイメージ通りに動くことができない。ともあれ、何周か回っているとだんだん雰囲気が掴めてきたので、カヤックの練習場所としてよく使われる別の支流にパックラフトを担いで移動し、パドルスポーツ全般の基本動作である「エディキャッチ」と「フェリーグライド」の練習になった。

エディとは、川の本流から外れた淀みや、岩などの障害物に流れがぶつかりその下流の水がとどまり渦巻いている箇所を差す。常に上流から下流へと流れている川を旅する場合、必要に応じて、エディに止まって下流を観察したり、水上で休憩したり、難易度が上がるに従い、エディに止まる重要度は高くなる。

細かいテクニックはたくさんあるようだが、エディに入ることを総称して「エディキャッチ」という。そして水の力を利用して、流れの中で左右に移動するテクニックを「フェリーグライド」という。

練習場所はS字カーブになっており、屈曲箇所の両岸には本流から外れたエディができていた。「フェリーグライド」を使ってこのエディからエディへと渡るのだけれど、そのポイントはふたつある。まず、川の流れに対して舳先を斜め上流に向けること。そして、下流に向けて重心を傾けること。確かに、上流から下流へと流れる川を横移動するとき、バカ正直に真横に移動しても下流へと流されるばかりだろう。舳先を上流に向けやや遡るように進むことによって、初めて水流との力学的バランスが取れるのだ。そして水流を船体の底で受け止めることによって、その流れの力を利用して移動するのだ。

先ほどのプールとはうって変わって本格的に流れる川を前に少々ビビりつつ、舳先をやや上流に向け漕ぎ出す。あ、重心を下流に傾けなくちゃ。すると、パックラフトはするすると水の上を進み、ほとんど漕いでいないのに10mほぼ離れた対岸のエディに着いてしまった。なんだこれ、サーフィンみたいで楽しいぞ!

その後もフェリーグライドの練習を繰り返し、とりあえずリバーツーリング前の講習は終わった。当たり前だけれど、常に流れている川では行きたい方向には自由に動けない。でも、その流れを利用して効率よく移動できる方法があることはわかったし、その法則がわかれば、もっと自由に楽しく川で遊ぶことができるのだろうということもわかった。まだわかっただけだけど……。

いざ、リバーツーリング!

その後、軽い昼食を挟み、クルマで10分ほど離れたツアーの出発点に移動した。いよいよリバーツーリングの始まり! 今回のツアーの主な舞台となるのは安曇野を流れる犀川の支流となる万水川。支流ながら水量も多く、ラフティングやリバーSUPのツアーなどもよく行われる川だとか。

出発点は川幅が5mほどで水深もひざ程度だったので、リラックスして漕ぎ出すことができた。まず川の流れに乗ることそのものがとても気持ち良く、思わずニヤけてしまう。艇底から感じる河流のフィーリングやパドリングで起こる水しぶきがとにかく爽快なのだ。さらにパックラフトに乗ると視界がグッと低くなり、市街を流れる万水川とはいえ人工物はほとんど見えなかった。緑の森を流れる小川を下っていく感覚で、街中にこんな川が流れているなんて、安曇野市民に心の底から嫉妬した。

エディごとにエディキャッチして柴田さんのレクチャーを受けつつ、ツアーはのんびりと進んだ。ところどころ白く波が立った急流もあったけれど、そんな場所でもパックラフトは安定しており、怖くはなかった。というより、思わず歓声を上げてしまった。川が広くなり流れが緩やかになると、柴田さんは足をパックラフトの上に投げ出して寝転んだ。

「ここは安全なんで、ぜひ寝っ転がってみてください。気持ち良いですよ」

柴田さんのように寝転がってみると、確かに最高! これぞパックラフトならではの醍醐味かもしれない。暑い夏の午後だったけれど川面は涼しく、穏やかな美しい川の流れに身を任せて漂っていると、思わず陶然とした気分になってくる。ああ、このままどこまでも川を下って行きたい……。なんで川の上を流れていくだけで、こんなに気持ちいいんだろう?

「そうなんですよ!」と柴田さん。「僕のツアーではパックラフトの基本や安全知識を知ってもらうことはもちろんなんですけど、本当は何よりも川を旅することの気持ちよさや楽しさそのものを味わってもらいたいんです。そこにパックラフトはすごく向いているんですよ」

曰く、パックラフトにもパドリングスポーツ全般に共通する危険性は常にあるものの、艇自体の安定性が高く操縦も比較的容易なため、ズブの素人が実際に川へ出れるまでが短い点も大きな特徴だという。

「誰かに引率してもらうこと前提ですが、未経験の方でも1日目から流れのある川で、エディキャッチやフェリーグライドを使いながら、自分で操作してある程度の安全を確保しながらこれほど自由に川下りできる乗り物はあまり見当たらないかもしれません。もしかしたらそこがパックラフトの一番の魅力かもしれませんね」
万水川から犀川へと合流し、数時間のツアーはあっという間に終わった(もっと乗っていたかった……)。柴田さんのご指導の甲斐あってトラブルや危険はなかったけれど、のんびり下っていたかと思うと突然に岩や倒木や枝など危険箇所が現れたり、リバーツーリングにはスキーやマウンテンバイクなどとも違う種類の危険性があることは実感できた。いくらパックラフトが誰にでもできるとはいえ、やはりまず最初は講習を受けることが必須であることは言うまでもない。

今回、実際にパックラフトに乗ってみて、僕がいちばん印象的だったのは川の水面ギリギリから見える景色が、とても新鮮だったことだ。川と半分一体化したような気分で眺める景色は、歩いて見える景色とはまるで違った。たくさんの美しい川が流れる安曇野の人がとても羨ましくもなったけれど、もしかしたら僕の家の近所の川でも、パックラフトに乗ったらまるで違う景色が見れるのかもしれない。

次はぜひキャンプ道具を積んで、オーバーナイトのリバーツーリングもしてみたい。とりあえずパックラフトを2艇持っている友達に連絡してみよう。

取材・文/三田正明 撮影/平澤清司


■特集:パックラフトと川の旅~パドルスポーツの現在
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