プライベートでは、モデルの畑野ひろ子さんと結婚し、今では6歳と1歳の2人の娘を持つパパでもある鈴木啓太さん。家族を大事にしていて、オフのときは2人の娘と接する時間を何よりも大切にしているそう。
連載6回目は、子供たちとの関わりについてお話しいただきました。
—— 前回は、試合での緊張感を解き、リラックスするためにオフにサーフィンをするといったお話をうかがいましたが、他にも何かリラックスできることってありますか?
ボクはもともと、花がすごく好きなんですよ。やっぱり、花って家にあるのとないのとでは、自分の心の持ちようがぜんぜん違いますね。
カミさんが最近、本格的にフラワーアレンジメントにハマって頑張っているというのもあるのですが、もともとボクの母親も花が好きで、子どもの頃からいつも家には花が飾られていたんですね。
それが母親の楽しみだったし、父親も庭で花をいろいろと育てていましたね。「カサブランカが咲いたよ」とか、よく言っていました。
家のなかにも、庭にも、常に花があるのが当たり前という環境だったことが影響しているのかもしれないですね。
—— ちなみに、どんな花が好きですか?
そうですねえ……、あじさいは好きですね。あとはバラ。もうひとつ、これはカミさんの影響なんですけれど、カラーという花も好きですね。
少し前ですけど、知りあいがやっているバラ園が沼津にあるので、家族みんなで行ってきました。花というのは、見ているだけで楽しいし、リラックスできますよね。
—— スポーツ選手と花というのは、ちょっと意外な組み合わせですね。
リラックスするための方法って人それぞれで、いろんなチョイスがあっていいと思うんですよね。花もそのなかのひとつとしてあってもいいだろうし、ボクは本を読むのもすごく好きだし。人それぞれですよね。
—— お話を聞いていると、とても繊細で感受性豊かな部分をお持ちで、あまりスポーツ選手っぽくない一面もある気がしますが。
確かにそうかもしれない(笑)。どちらかというと、たぶん、ボクはサッカー選手向きではないんじゃないかと思うこともありますから。
——サッカー選手に向いている性格、向いていない性格ってあるんですか?
うーん……、自分で言っておきながら、そう聞かれるとハッキリ答えられないんですけど(笑)。ただ、ボクはあまり人と争うというか競争するっていうのが好きじゃないというのはありますよね。ガツガツしていないというか。
よく言えば穏やかなんでしょうけど、まあ、欲がないっていう感じでしょうか? 負けず嫌いなんですけど、他人と競うことがあまり好きじゃないんだと思います。
他人と比べてどうかではなく、自分のなかで、これは負けたくないとか、自分としてはよくやったなとか。あくまでも自分のなかに判断基準や価値基準があって、自分を自分で評価したいタイプなんだと思いますね。
試合だと、他人に評価されて、それがライブ感覚で伝わってきます。そういうのが実はあまり好きじゃないのかもしれません。
——あくまでも自分に勝てるかどうかという、そこに軸を置いて物事を考え、行動していくタイプであると。
そうかもしれないですね。だから、サッカーに関しても、他人と競うことが大切なのではなく、自分自身にいろんな基準や目標があって、そこに近づくためにはどうすればいいのかを考えることで、前進したり後退したりしてきたというか。
そのなかで、例えば全国優勝したいだとか、プロサッカー選手になりたいといった目標を持って、そのために自分は何ができるのかを考える。常に自分で自分の目標を決めて、自分自身を評価する、その繰り返しで今日まで来ているんじゃないかと思いますね。
——お子さんが2人いらっしゃるので、やはり子どもと触れ合うのもリラックスになるかと思うんですが、いかがですか?
もちろん娘2人の父親として、当然それはあります。最近は、自分の子どもだけじゃなくて、長女の友だちを呼んで一緒にサッカーしたりしています。
——現役Jリーガーとサッカーして遊んでもらえるなんて、お友だちはラッキーですね!
近所の公園に集まって、「じゃあやるか」っていう感じなんですけどね。こういうことは、ボクが現役のうちにやることに意味があると思うんです。ボクは静岡県の清水市というサッカーが盛んな地域で育ちましたから、子どもの頃から年に1〜2回くらい、現役のプロサッカー選手が遊びに来てくれました。
特に毎年行うイベントとして、正月になると「初蹴り」という行事があるんです。元日にサッカーをするんですけど、ある年に、今はガンバ大阪の監督である長谷川健太さんが来てくれたんです。
当時は清水エスパルスのバリバリ現役スターでした。当時、セレッソ大阪にいて、日本代表でも活躍中だった西澤明訓さんも来てくれましたね。
今でもその行事は続いていて、ボクも毎年参加させてもらっています。そういった行事を、自分が今住んでいる町では、まだできていないんですよ。
——子どもだった頃の体験を、ご自身の暮らす地域の子どもたちにもさせてあげたいと。
そうなんです。子どもたちにとって、現役のプロサッカー選手にサッカーを見てもらったり、一緒にボールを蹴って遊ぶというのは、ものすごくいい経験になりますよね。
ボクが子どもだった頃を思い返してみても、引退した選手と触れ合うのも楽しいですけれど、やっぱり現役バリバリのJリーガーと触れ合うほうがワクワクするし、強烈な体験として記憶に残るわけですよ。
だから、現役であるボクが今できることというのは、まさにそこだと思うんですね。サッカースクールを定期的に開いたりまではできないですけれど、今、できることといえば、娘の友だちに公園に集まってもらって一緒にサッカーをして遊ぶということなんです。
ただ、日曜日の朝7時集合とか、すごく朝早い(笑)。お父さん、お母さんたちはやめてくれって思っているかもしれないけど、楽しみにして来てくれる子どもたちがいますからね。今のところ、これ以上多くなるとボクひとりで子どもたちを見られないので、10人前後で抑えています(笑)。
最初は長女も来ていたんですけど、最近は来なくなりました(笑)。「別にパパとボール蹴りたくないし」とか言って、嫌がってます。よその子は来てくれるのにウチの娘だけ家にいて寝てる、みたいな(笑)。
——ご自身のお子さんだけでなく、他の家の子どもと接するというのも、リラックスのひとつになるんですか?
そうですね。というより、リラックスという言葉を超えているかもしれません。逆に、子どもたちからエネルギーをもらえますよね。
自分が子どもだった頃を思い起こさせてもくれるし、この子どもたちが将来、どんなふうに成長していくんだろうと想像するのが楽しいんですよね(笑)。
毎週、朝早くからやって来る子どもたちが、ひとつだけでもいいから、何かを感じてつかんでくれたらいいなという想いもありますし。子どもたちと一緒にひとつのボールを追いかけていると、エネルギーがチャージされていく感じです。
——最近、お会いした他のサッカー選手のかたも、サッカーを通して子どもたちに夢を与えたい、子どものために役立つことをしたいとおっしゃっていました。
やはりボクと一緒で、自分が子どもだった時に同じような経験をしたからじゃないですか? そういう経験をした自分と、今の子どもたちを重ね合わせて見ることで、何かひとつでもいいから、自分にできることがあれば役に立ちたいという想いがあるんだと思います。
きっとプロの選手たちには、“誰かに育ててもらった”という感覚があると思うんです。でなければ、日本のサッカー界のトップリーグでプロとして活躍するなんてできなかったでしょうし、いろんな人たちに支えられてきたからこそ、今の自分があることを理解している。
だからこそ、今度は自分が子どもたちに与えていかなければいけないんだという想いが、どこかにあるんじゃないかなあと思います。
今後も子を持つ父親のひとりとして、自分ができることを子どもたちに還元していきたいですね。
取材・文:國尾一樹
プライベートカット提供:鈴木啓太
写真:たつろう