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対談:西薗良太 × 矢野大介 自転車を通じて見えてくるもの【前編】

対談:西薗良太 × 矢野大介 自転車を通じて見えてくるもの【前編】

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対談:西薗良太 × 矢野大介 自転車を通じて見えてくるもの【前編】

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2017年をもってプロのロードレーサーを引退した西薗良太さんが、現役時代から折りに触れて訪ねていたのが、ロードサイクルのウェアブランド「ラファ」の拠点である八ヶ岳バイシクルスタジオ。雄大な野辺山高原が広がるこの場所で、ラファ・ジャパン代表の矢野大介さんと共にライドを楽しみ、意見を交換し合い、お互いにインスピレーションを得てきたのだそう。そんな野辺山の地に再び集ったお二人によるトーク・セッションが実現。それぞれの自転車ヒストリーや、自転車とサイエンス、ビジネスの関係などさまざまなお話が繰り広げられました。

【後編】はこちら

自転車は体にやさしい

――お二人が、スポーツとしての自転車と出会ったのはいつごろですか?

矢野大介(以下、矢野) 僕は、アメリカのジョージア州、アトランタにあるジョージア工科大学に通っていた1996年です。その年にアトランタオリンピックがあって、キャンパスが選手村になったんですね。僕ら学生はパスを貰って出入りできたんですが、自動車での通学が禁止になって、自転車で通学するしかなくなった。そうしたら、友人がMTB(マウンテンバイク)を買えと勧めてくるんです。

西薗良太(以下、西薗) 思わぬ経済効果でしたね(笑)

矢野 それで僕は、トレックのMTB(マウンテンバイク)を買いました。(同じアメリカンブランドの)スペシャライズドやキャノンデールより安かったんですよ。

西薗 僕が乗りはじめたのは中学生の時なので、矢野さんがアメリカでMTBを買った少し後ですね。陸上の長距離をやっていたんですが、膝をケガしちゃったんです。でも、通学で自転車に乗っても膝は痛くない。医者にそのことを話したら、自転車は陸上ほど膝や腰に負担をかけずに心肺能力を鍛えられるから乗っておいたほうがいいと言われて、ロードバイクに乗りはじめました。

矢野 そのケースは多いよね。陸上やスキーで怪我をして自転車に来るっていう。

プロとアマの区分があいまいな自転車競技

――悪路を走るMTB、舗装路を高速で走るためのロードバイクという違いはありますが、お二人はやがて、自転車に熱中するようになります。

矢野 僕はもともとスポーツ好きだったんです。幼稚園の頃にブラジルにいたこともあり、大学2年まではサッカーをやって、アメリカでは少しバスケットボールもやりました。さすがに身長170㎝では話にならなかったのでやめましたが(笑)。

西薗 僕は長時間耐久系の競技が好きで、陸上でも、距離が長いほど成績がよかった。だから、自転車との相性はよかったですね。地元の鹿児島県に「サイクルジャンボリー」というヒルクライムレースがあって、プロや(強豪で知られる)鹿屋体育大学の選手たちが出場者の先頭を走るんですが、僕はそこで彼らに食らいつこうとがんばっていました(笑)。中高生のころですね。プロと接することができたので、速くなっても天狗になることはなかったです。

矢野 自転車って、日本だけじゃなく海外でも、プロとアマが一緒に走ることがあるじゃない。他のスポーツじゃありえないよね。そういう意味では、自分の強さがわかりやすいスポーツではある。

西薗 力に差があっても、平坦では(遅い選手も、強い選手のスリップストリームに入れば)自分より速い人にもついていけますからね。だから、強い選手とそうでない人が一緒に走ることもできるスポーツです。

自分の脚で遠くまで行ける

矢野 僕はアトランタオリンピックが終わっても自転車通学を続けていたんですが、あるとき、友達に「山に行こう」と誘われたんです。MTBで山のトレイルを走るからって。

西薗 いい友達だ(笑)。

矢野 衝撃でしたね。こんなに楽しい遊びがあるのかって。スピード感と、テクニカルな部分と、難しさと。なによりも、距離を走れることが魅力だったんです。ハイキングなら1日、せいぜい10㎞が限界ですが、MTBなら40㎞、50㎞と走れてしまう。すごく楽しかった。

西薗 たしかに、遠くまで行けるのは自転車の魅力ですよね。僕は中学生だったから、遠くに行くためには親に頼んで車を出してもらう必要があったんですが、ロードバイクに乗れば、車を使わずに遠くまで行ける。「オレは隣の県まで自分の脚で来たぞ!」っていう特別感がありました。そのころは、キャンプ道具を積んでツーリングもしていましたね。

矢野 僕はそのうち、レースにも出るようになったんですが、レースにはレースで、トレイルとは別の楽しみがありましたね。会場に近づくにつれ、どんどん自転車を積んだ車が増えてくるから、まるでお祭りみたいなんです。自転車って、ビジュアル的にわかりやすいよね。

西薗 空港でも一発でサイクリストだとわかりますもんね。

矢野 参加型スポーツだからか、サイクリストは仲間意識も強いね。レースやイベントの雰囲気は、今も大好きです。

――やがて、矢野さんはラファジャパン代表として、西薗選手はプロロードレース選手という形で、自転車を仕事にします。

矢野 僕は日本の半導体メーカーにエンジニアとして勤めた後、自転車部品メーカーであるキャットアイを経て、イギリスのサイクルウェアブランド、ラファの日本代表になりました。ラファは自転車に乗ることを大切にする会社だから、オフィスを東京や大阪のど真ん中においてもレゾネイト(共鳴)しない、響かないわけです。だから、自転車に乗りやすくてアクセスもいい場所をたくさん探しました。奈良、和歌山、淡路島、伊豆……そうそう、六甲山も(笑)。そんな中、前から知っていた八ヶ岳周辺も探していたら、この物件に出会ったんです。野辺山は住人の8割が農家なので、まず物件が出ないんですけどね。

プロのスピードの衝撃

西薗 僕がプロになろうと思ったのは、大学3年生でインカレ(全日本学生選手権)で優勝して「プロになるポテンシャルがある」と言われたときですが、プロをはじめて意識したのは大学2年生の「ツール・ド・北海道」でした。僕はそこではじめてプロと走ったんですが、衝撃でしたね。ものすごく速いんです。いや、トータルの平均速度は学生とそう変わらないんですが、レースが動いてふるいがかかるときのスピードがとんでもない。僕は毎日転びながらなんとか完走しましたけど、そのとき、こういう世界で走れたらいいな、とちょっと思ったんです。

矢野 プロに衝撃を受けたことがモチベーションに繋がったのはいいね。強さを見せつけられたときに「俺はこんなもんだな」って感じるのと「よし、もっと上に行くぞ」と思えるのとでは全然違う。ロードレースって、科学的なトレーニングがこれだけ普及しても、最後は根性のスポーツだから。

【後編】では自転車とサイエンス、ビジネスとの関係などについてお話を伺います。

西薗良太 Profile
1987年生まれ。東京大学工学部に在学中の2009年、全日本学生選手権の個人ロードレースと個人タイムトライアルで優勝し、学生ロード2冠を達成。大学卒業後の2011年、シマノレーシングに加入し、プロのロードレーサーとなる。2013年に一度引退したが、2015年にブリヂストン・アンカー・サイクリングチームにてプロ復帰。2017年末をもって現役引退を表明した。2012年、2016年、2017年に全日本選手権個人タイムトライアル優勝。2018年4月、東京大学大学院に再入学した。

矢野大介 Profile
1972年生まれ。半導体メーカー、自転車部品メーカーの勤務を経て2007年、ロードサイクルウェア・ブランド「ラファ」の日本支社を設立し、代表に就任。シクロクロスのレーサーとしても活躍し、2010年にスタートした国際レースの「ラファ・スーパークロス野辺山」を主催する。
https://www.rapha.cc/jp/ja

取材・文/佐藤喬、撮影/平澤清司

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