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守谷雅之さん、オープンウォータースイミングについて教えてください【特集:自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう】

守谷雅之さん、オープンウォータースイミングについて教えてください【特集:自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう】

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守谷雅之さん、オープンウォータースイミングについて教えてください【特集:自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう】

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海や湖、川を舞台に長距離を泳ぐスポーツ、それがオープンウォータースイミングです。時に厳しい大自然のなかをひたすら泳ぐ過酷なレースですが、それゆえの自由で開放的が多くのスイマーを魅了しており、日本でのシーズンである5月から10月にかけては全国各地でさまざまな競技大会が開催されます。2008年の北京五輪よりオリンピックの正式種目となり、2012年のロンドン五輪では平井康翔と貴田裕美選手が初めて日本代表に選出されました。来たるべき東京五輪に向けてさらに注目が集まることでしょう。

そんなオープンウォータースイミングを全5回の記事で特集します。第1回は、日本でこのスポーツの普及活動に勤しみ続けるオーシャンナビ代表、守谷雅之さんによるオープンウォータースイミングの基本講義をお届けします。

■特集「自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう」全5回
1. 守谷雅之さん、オープンウォータースイミングについて教えてください
2. 対談:浅井弘樹×本間素子 海峡を泳いで渡る理由
3. 宮杉理紗さんのスイミング再履修 水泳の基礎&海で泳ぐコツ
4. 対談:平井康翔×守谷雅之 トップスイマーと指導者、それぞれが語る「自然を泳ぐこと」
5. 自然の水に入るときに気をつけるべきこととは

――オープンウォータースイミング(以下OWS)を馴染みのない人に対して、どのように説明されますか?

守谷 まず、いわゆる「遠泳」とは違うものです。日本で昔から行われている遠泳は隊列を組んで、全体でペースに合わせて進むものなのに対して、OWSはレースなんです。海、湖、川で行う競技で、一般的な競泳と違うのはコースロープがないところ。水上で目印になるものはブイしかありません。
ランニングに例えると、マラソンよりはトレイルランに近いものですね。自分が進むラインを自分で決めなくてはいけないから駆け引きが生まれますし、戦略を立てて考えながら泳ぐところが魅力でもあります。

――泳ぎながら戦略を立てるのは難しそうですね。

守谷 OWSはルートを確認するために顔を上げて泳ぐ必要があります。その顔の上げ方や頻度が疲労に大きく関わってくる。やはり顔を上げる回数が少ない方がいいんです。

――どれくらいの距離を泳ぐのでしょうか。

守谷 OWSはいろいろな大会を運営する団体があって、基本的にはそれぞれがローカルルールでやっています。泳ぐ距離は、種目としては5㎞や10kmが一般的ですが、500mの大会もありますし、海外なら25㎞以上になるレースもあります。幅がすごいし、大会によって楽しみ方も変わってくる。あそこの団体の大会はレースの後にパーティーがあるとか、あの大会に出場して終わった後にちょっと旅行しようとか、そういう部分も楽しいですね。

――競技とは言え、自由な要素がいろいろあるんですね。

写真提供:守谷雅之

守谷 僕がOWSの存在を知って初めてレースに出場した時、それまでやってきた競泳にはない解放的な空気を感じて、それがすごくおもしろかったんですよね。競技ではあってもコンマ単位でストイックに競うわけではないですし、みんなで一斉にスタートする時やゴールした時の和気あいあいとした雰囲気も味わったことのないものでした。自分が知っている水泳とは全然違ったんです。

OWSってもとを辿ると、誰がいちばん早く泳いで帰って来れるか競うというだけのことですよね。おそらく「あそこの島まで泳いでみようよ」みたいなところから始まっていると思うんです(笑)。実際のところ、昔は草レースみたいなものも多かった。それが競技として認知されていくなかで、安全に運営するためのルールが整備されてきました。

――どんな装備が必要でしょうか。

守谷 水着とスイムキャップ、ゴーグル。最近はウェットスーツを着ていいレースが増えています。ウェットスーツは浮力がありますから、着ていれば何かあっても浮いていることはできるので安全性が高まります。それを過信してはいけないのですが。
キャップはレースで配布されることも多いですね。ゴーグルは、レンズが柔らかくて視野が広いものをお勧めしています。レース中に他の人とぶつかったりした時、固いゴーグルだとケガをするんです。それから、視界を確保するためのゴーグルの曇り止め。あとは擦れを防止するためのワセリン。海で泳ぐと、ヘッドアップした時に髪の毛がうなじに引っかかって擦れたり、わきの下が擦れたりするんです。

写真提供:守谷雅之

――長距離を泳ぐ際、途中で補給はするんですか?

守谷 途中の要所要所にエイドステーションを設けてドリンクやエナジージェルを用意します。キャップや水着のなかにジェルを忍ばせて自分で補給する人もいますね。水泳はかなり汗をかくので、水分補給はとても大切なんです。ただ、のどの渇きを感じた時に飲んでも遅くて、パフォーマンスが下がってしまいます。レース前にこまめに飲んでおかないといけません。

――屋内でのスイミングとはどういうところが違いますか?

守谷 水温の変化や波、潮の流れはプールでは味わえないですし、自然の水の中なので予期しないことが起こります。例えばクラゲに刺されることがあるかもしれません。それから水深があって下が見えない状況もありますから、それで恐怖心が出てしまう人もいます。そういったことに直面して心拍が上がってしまうのがよくない。平常心を保って落ち着いて泳ぐことが大事で、そのためにはそのためにはしっかりとトレーニングを重ねて、自然の水に慣れることが欠かせません。

一方で、プールにはない自由度があって、そこはやはり魅力的です。沖まで泳いで出ていく経験って、あまりないと思うんです。そういうところから感動する人も多いですね。
それから、泳いでいて見える景色がおもしろい。屋久島のレースだと、横をカメや熱帯魚が泳いでいたりします。ワイキキのレースでは、ワイキキの街並みを眺めながら進んでいくんですが、海から見た陸の景色って全然違うんですよね。順位や記録とは別の、そういうちょっとした楽しみがあります。

――ある程度泳げても、海での長距離水泳となると壁を感じる人も多いと思います。

守谷 長距離水泳で重要なのは、省エネで泳げるようにしていくこと。フォームを改善するだけでもだいぶ違います。そして長距離のためのトレーニングを重ねる。水に慣れるためにはトレーニングに通う頻度もとても大事です。そして継続すること。そうすればだんだん泳げるようになるはずです。

水の中だからと特別に考える必要はなくて、距離を長くする過程はランニングのトレーニングと同じようなものだと思います。水泳は呼吸さえ確保できていれば、原理的にはどんな泳ぎ方であってもどこまでもいけるはずなんです。さらにフォームの改善などをしていけば、効率よく泳げるようになります。

200m~300mを泳げるようになれば、そこから距離を伸ばしていくことは難しくないでしょう。300mはまぐれでは泳げない距離で、呼吸の仕方やフォームがある程度、形になっていないと到達できません。そこまで泳げるようになれば、長距離を泳ぐ土台はできたと言えるんじゃないでしょうか。

――これからOWSの大会に出ようと思ったら、どのようにトレーニングを積んでいくのがいいでしょうか。

守谷 それまで競泳をやって来た人がOWSに目を向けたのであれば、まずは距離を泳げるようにする。次に海で必要なテクニックをプールで身につける。そして実際に海に行って、実践できるようにする。そしてレース、と段階を踏むのがいちばんだと思います。
マスターズ水泳などの経験を積んでいたからと、いきなりOWSのレースに臨む人もいますが、そういう場合はやはりトラブルが多い。OWSのための練習は欠かせないと思います。

――自然の水の中で長距離を泳げるようになれば、泳ぐということの意味ががらりと変わりそうですね。

守谷 SUPやカヤックといったアウトドアスポーツが流行ってますよね。そういうものを楽しむには、泳げることが応用できると思うんです。波が来た時にボディサーフィンができた方がサーフィンも上手くなると思いますし、カヤックも転倒した時に泳げないと恐怖心が先に立って楽しめない。泳げれば気持ちに余裕ができるし、どんな形であれ、海で遊ぶうえでの土台になると思いますよ。

守谷雅之 Profile
株式会社オーシャンナビ代表、日本水泳連盟OWS委員。国内最大のOWSレースである〈湘南オープンウォータースイミング〉などでレースディレクターを担当。さまざまな形で、OWSを普及する活動を展開している。
2011年、35kmを11時間55分かけて津軽海峡単独横断泳に成功した。
https://ocean-navi.com/

取材・文/Rhythm Ultra編集部 撮影/津田宏樹 撮影協力/新代田スイミングスクール


■特集「自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう」は全5回の連載企画です。次回は「海峡を泳いで渡る」というエクストリームなチャレンジを成功させたスイマー、浅井弘樹さんと本間素子さんが語り合います。
1. 守谷雅之さん、オープンウォータースイミングについて教えてください
2. 対談:浅井弘樹×本間素子 海峡を泳いで渡る理由
3. 宮杉理紗さんのスイミング再履修 水泳の基礎&海で泳ぐコツ
4. 対談:平井康翔×守谷雅之 トップスイマーと指導者、それぞれが語る「自然を泳ぐこと」
5. 自然の水に入るときに気をつけるべきこととは

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