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でいご並木に見る幼い頃の視界 〜島の、リズムvol.4〜

でいご並木に見る幼い頃の視界 〜島の、リズムvol.4〜

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でいご並木に見る幼い頃の視界 〜島の、リズムvol.4〜

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こんにちは。作家の三谷晶子です。

今回は加計呂麻島(かけろまじま)の夏の日常についてお話ししたいと思います。

私の住む諸鈍(しょどん)集落は、加計呂麻島内で一番人口が多いところ。校区内の小中学校の生徒数と保育所の子ども達の数を合わせると、子ども達だけでも数十人はいます。

私の家の目の前のビーチは、学校の水泳の授業でも使われる場所。夕方になると犬の散歩をする近所の人々、夕涼みをするお年寄り、そして、夕飯前に海に入る子ども達が、砂浜や堤防や海の中でそれぞれビーチを楽しみます。

先日は、散歩に出かけたら近所の子ども達がサーフィンの練習をしているのに遭遇。「あきこちゃん」と声をかけられてそのまま一緒に遊び、サーフィンのレクチャーを受けました。

島の子ども達は10歳に満たなくても、魚を突いたり、サーフィンをしたり、SUP(スタンドアップパドルボード)をしたりといつも海に親しんでいる印象です。

photo2
(写真:小学3年生にして自分の背丈より大きな魚をとってこられる子)

でいご並木と子ども達

諸鈍集落には寅さんシリーズの渥美清さんの遺作となった『男はつらいよ 寅次郎 紅の花』のロケ地である、でいごという赤い花が咲く木が連なる並木があります。先日、その近辺を散歩していると遊んでいる子ども達に声をかけられました。

photo3
(写真:浜に沿うようにして続くでいご並木)

「あきこちゃん、あのでいごはね、島のシンボルなんだよ」

その子が言う“あのでいご”とは並木の一番奥にあり、最も大きな木のこと。

私は、その言葉に驚きました。

加計呂麻島には、国指定重要無形民俗文化財である諸鈍シバヤというお祭りがあります。諸鈍シバヤは仮面をつけた男性たちが歌舞伎のようなストーリー仕立ての演目を、ユーモラスな語り口調や動きで演じるもの。その諸鈍シバヤに使われている仮面と似た模様が、一番奥のでいごに浮き出ているのを先日発見したばかりだったからです。

「ねえ、そのでいごにシバヤの仮面が浮かんでたの、この前発見したの。見に行く?」

私がそう言うと、子ども達は「行く行く!」「待ってて、バッグ置いてくる」「置いてかないで」と口々に言いながら、ついてきてくれました。

photo4
(写真:集落の中にある橋にもでいごのモチーフが)

一番奥のでいごに着くと、子ども達は木登りをし始めました。

「あきこちゃんも一緒に登ろうよ」

「このでっぱりに足をかければいいから」

木の上から手招きをしながらそう言うので、私も一緒に登りました。

その時、木にツタが絡まっているのを見つけた子が、こう言ったのです。

「あ、でいごにツタが絡まってるよ。苦しそうだからとらないと」

一人の子の言葉にほかの子ども達も続きます。

「本当だ、こんなのシンボルじゃない!」

「可哀想だからとらないと」

複雑に絡み合ったツタをばりばりとはがしていく子ども達の後ろ姿は、小さいけれどもとても立派に見え、頼れる存在感を醸し出していました。

photo5
(写真:一番奥にあるでいごの木。横にある船と比べると大きさがよくわかります)

「子ども達のほうが、そういう、大切なことをわかっているのかもしれないな」

後日、同じ集落に住む方にその話をしたところ、そうおっしゃっていました。

当たり前に残る自然信仰のかたち

奄美群島内でも特に加計呂麻島は、昔ながらの祭祀や神事の名残があるところで、どの集落にも海から山へと続く神様の通り道、カミミチがあり、ミャーと呼ばれる神事を行う広場、アシャゲという神事が行われる場所、トネヤという祭祀を行う人の住居などが残っています。水の神や山の神、海の神に豊年と豊作を願う自然信仰が今もごく普通に根付いている場所です。

諸鈍のでいご並木は海に面した場所にあり、実際に台風で荒れた波や風から集落を守っています。去年の台風で人が入れるほどの洞があったでいごが折れてしまった時は、住民がみな悲しみ、けれど、それでも「でいごが守ってくれた」と言っていました。

「でいごの木がこの場所を守ってくれている。自分達のいる場所はでいごの木と共にある」

子ども達のみならず、島の住人の方々の中には、そのことがごく自然に根付いているのです。

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(写真:入り江の景色)

映画『魔女の宅急便』の主題歌『やさしさに包まれたなら』に、「小さい頃は神さまがいて」「目にうつる全てのことはメッセージ」というフレーズがあります。目にうつる全てのものごとが、神秘ときらめきに満ちている。子どもの頃に見ていた視界を、私はこの島で取り戻したような気がしています。

文・写真提供:三谷晶子(みたにあきこ)

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