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対談:松尾憲二郎 x 芳沢淳 山で楽しむスキー、最新事情【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

対談:松尾憲二郎 x 芳沢淳 山で楽しむスキー、最新事情【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

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対談:松尾憲二郎 x 芳沢淳 山で楽しむスキー、最新事情【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

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全5回に渡ってお届けする特集企画「スキー再発見」。第3回は、スポーツ・フォトグラファーの松尾憲二郎さんと、スキー・ショップ「BLACKDIAMOND」店主の芳沢淳さんが、エクストリームなスキーの現在について語り合います。

バブル時代には「国民的娯楽」でもあったスキー。バブル崩壊と共にブームも終息し、もう何年もスキー板を履いていないという方も多いのでは?
ともあれ、確かに人口は減ったものの、近年、ゲレンデを飛び出して野山を滑るバックカントリー・スキーを始め、新しいスタイルのスキーが次々と登場していることをご存知だろうか?
そんな新しくてディープなスキーの世界を、スキー・ショップの店長として長年最前線で見守ってきたブラックダイヤモンドの芳沢淳さんと、元ビッグマウンテンスキーヤーとして世界を転戦し、現在はスポーツカメラマンとして活躍する松尾憲二郎さんに伺った。

はじまりはホットドッグ・スキー

――スキーって、ひと昔以上前のスキーブームの時代は、「ゲレンデで滑るもの」というイメージしかなかったと思うのですが、いま、その時代からスキー人口は減ったものの、そのぶん、バックカントリー・スキーに代表されるような新しいスタイルのスキーが次々と登場して、かつてとは比べ物にならないほど多様な楽しみ方があるように感じるのですが。

芳沢 そうですね。いまも昔も変わらず基礎スキーはスキー業界でもいちばん数が多いカテゴリーになんですけど、そんな中で、30年以上前にアメリカからホットドッグ・スキーというものが現れました。コブをいかに激しく格好よく滑ってジャンプするかという、いかにもアメリカ的で刺激的なスキーで、それがモーグルという名前に変わり、現在ではオリンピック種目になるほど競技として成熟しているんですけど、その競技化の流れに抗うような形で、今度はニュースクールというスキーが登場してきた。コンペティション志向じゃなくて、いかにキッカー(ジャンプ台)を格好よく飛ぶかっていう感じのスキーだよね。

松尾 一般の人にわかりやすく説明するとしたら、スケボーやBMXみたいな、いわゆるストリート系ですよね。

芳沢 そういう新しいスタイルのものが出てくるときって、人間って心躍るじゃないですか? それでモーグルやってた人たちも、ニュースクールと呼ばれる方にちょっとづつシフトしていった。うちの店もそれを盛り上げる意味もあって、当時、トランポリンを買って、みんなで集まって近所の公園でジャンプの練習していたんですよ。そこに来たのが松尾君だった。

松尾 僕のスキーの原点は間違いなくここで淳さんに出会ったことなんです。学生時代からスキーをやってたんですけど、東京在住なんで、なかなか仲間ができなかった。でも、ここに来たらスキーを自分と同じくらいのレベルでやっている仲間ができて、いろいろ情報交換もできて。それが海外で修行したり、大会を転戦したりってことに繋がっていったんです。

芳沢 だいたい土曜日とかにみんなで集まって飛んでたんですよ。で、終わったら飲みに行くんだけど、そこからが僕の出番(笑)。当時は基礎スキーやアルペンスキーにフリースタイルっていう要素が入ってきて、スキーの幅が広がった時代だよね。

松尾 バックカントリーでパウダー滑るのが流行り始めた頃ですね。

芳沢 新雪のパウダースノーを滑るのは気持ちがいいから、ゲレンデ以外の場所を自分で登って滑るバックカントリー・スキーはだいぶ広がってきたよね。もちろん、自然の山だから危険もいっぱい潜んでますけど、日が当たりにくい北側の斜面とかは雪もすごく軽くて、気持ちよく滑れるんです。サーフィンも一緒だと思いますけど、同じ山でもいつも違うし、すごく幅がある。

――バックカントリー・スキーにもいろいろなスタイルがあるんですか?


写真提供:芳沢淳

松尾 散歩気分で雪の上を歩くだけでも気持ちがいいですし、振り切れている人も急斜面に行けば楽しいし、いろんなレベルの人が楽しめる。同じ山でも斜面ごとにぜんぜん違いますからね。

芳沢 自分のレベルに合わせてハードなラインを攻めてもいいし、のんびりしたラインで降りてきてもいい。それだけ幅があるから、みんなやっているんだと思います。

松尾 滑り終わって楽しかったって感触だけじゃなく、それを自分で選ぶ面白さもありますね。それを自分がメイクしきれたかどうか。それを含めての面白さなのかなって思います。

ビッグマウンテンスキーの世界


写真提供:芳沢淳

――松尾さんの専門分野でもあるビッグマウンテンスキーもバックカントリー・スキーから発展したものだと思うのですが、具体的にはどういうものなんでしょうか?

松尾 ビッグマウンテンスキーの大会があるんですけど、スタートとゴールだけ決まっていて、あとは決められた範囲内なら急斜面を滑り降りても、崖を飛び降りてもいいんです(笑)。

――タイムは勝敗に関係するんですか?

松尾 タイムは関係ないですね。それよりもライン取り。いかにより魅せる、やばいラインを滑れるかどうか。フィギュアスケートみたいにジャッジが点数をつけます。


動画:崖から飛び降り、滑降する松尾憲二郎さん

――ビッグマウンテンスキーって、本当に壁みたいな斜面を滑り降りたり、10m以上あるような崖から飛び降りたり、かなり危険も伴うと思うんですが、なぜあえてそこを目指されたんですか?

松尾 要は最強になりたかったんです(笑)。どこでも滑れるスキーヤーが最強だと思うんですよ。どこでも滑れたら楽しいし。

芳沢 確かにビッグマウンテンのライダーたちは、フリースタイルなスキーのピラミッドの頂点にいる人たちだよね。スピードにも強いし、どんなとこでも滑るし飛べるし。僕はビッグマウンテンを選ぶ人って、よりナチュラルな人だと思うんだ。「ここに飛べるとこがあるから飛んでみたい」ていうね。でも、日本だとビッグマウンテンができるフィールドがあまりないんだよね。ヨーロッパとかアメリカだとゲレンデの隣に、そういう一般の人が行かない危ないエリアとかが隣接している場所が多くて、そこをみんなアドレナリン全開で滑っている(笑)。

写真提供:松尾憲二郎

松尾 確かにフィールドの違いはありますよね。日本だと探さないとそういう場所ないけど、海外だとみんな小さい頃からそういう場所を滑る人を見て育っているんですよ。それで自然とそういうことをやるようになる。

芳沢 僕は初めて行った海外のゲレンデがカナダのウィスラーだったんですけど、スケールの大きさにもびっくりしたし、結構な崖をみんなスタイルとか気にしないで飛んでいるわけですよ。雄叫びあげて(笑)。こんなに日本と海外は違うのかって。遊びの幅が広いというか、海外の人がエクストリームな方向に向かうのって、そういう場所が普通にあるっていうのは大きいよね。日本ではスキーと言えばビシッと整備されたゲレンデを滑るものと思われてるけど、向こうの人はどこでも滑る。

松尾 僕がずっと海外で修行してたのも、量を滑り込むだけなら国内でもできるけど、もっと険しい場所とか、ジャンプできる場所って考えると、国内にはほとんどないんですよ。だったら海外行っちゃった方が手っ取り早いし、もっとクレイジーな連中がいる。
あと、大会に出てみたかった。自分が今どのくらいの実力なのか、大会に出れば順位っていう数字でわかるじゃないですか。最初に出たのはコロラドの大会だったんですけど、とりあえずやばそうなとこに突っ込むっていう作戦で(笑)、たまたまうまいこと勝ち進んで、決勝まで行っちゃったんです。若いから調子に乗りましたね(笑)。でも、そこで同世代の仲間がたくさんできて、そいつらと一緒に滑るようになって、滑れる斜面もどんどん増えたし、自分の引き出しも増えたし。夏の間はひたすらバイトして、12月~1月も北海道で住み込みでバイトして、その金握りしめて2月から4月はアメリカへ行くっていう感じで、5年くらい転戦していました。

写真提供:松尾憲二郎

――まさにスノーバムですね。

松尾 完全にバムですね。いまでもその頃の仲間とは付き合いありますし、写真を撮らせてもらうこともあります。

――崖から飛び降りるのは、やっぱり気持ちいいんですか?

松尾 気持ちいいですね。怖いは怖いけど、それよりも大きい気持ちよさがある。その怖さを超えないと気持ちよさもないんです。当時はその一瞬のためだけに生きていたと言っても過言ではないですね。

スタイルと道具の進化

写真提供:芳沢淳

――スタイルの進化と共に、道具も進化しているんでしょうか?

松尾 この5年くらいの道具の進化はすごいですね。滑る道具はもちろんだけど、とくにシールとか、登攀道具の進化は凄まじいものがあります。
※登攀(とうはん):ロープ、クライミングギア、ピッケル、アイゼンなどを積極的に使用して岩稜や岩壁を登ること。

芳沢 パウダーを滑りたいっていうニーズがすごく高まってきて、エクストリームなことをやるライダーも増えてきて、そういう人たちのための道具がいろいろ開発されて、一般的にも広まってきているという流れですね。

写真提供:芳沢淳

松尾 過激なことをやりやすくなりましたね。前までだったら無理なコンディションも、この板なら行けるってこともあります。

――ともあれ、やはりゲレンデから踏み出すバックカントリー・スキーには危険なイメージがまだまだあります。

芳沢 ニュースになるのが遭難事故だから、それ見てやっぱり怖いんだ、危ないんだってとこで終わっちゃう。

松尾 でも、(遭難事故の)ニュースで事故のときの天気とか見ると、そりゃそんな日に行ったら帰ってこれないよっていうことばっかりですよ。もちろん、怪我する危険性はいつだってあるけど、基本的には天気やコンディションをちゃんと観察して手順を踏んでいけば、遭難することはまずないと思いますけどね。

芳沢 最近はバックカントリーのガイドもすごく増えたんで、最初はまずそういったツアーに参加するのがおすすめです。知識がない人でもとりあえず安全に連れて行ってくれますから。道具の進化もあるけど、その変化もすごく大きい。

松尾 視野を広げて、ちょっと山の方を見てみたりすると面白い場所がいっぱいあるんで、ぜひ行ってみてほしいですよね。でも、それで人が増えちゃうのも困るけど。自分たちの首を絞めることにもなるんで、正直、人には教えたくないんです(笑)。

松尾憲二郎 Profile
スポーツ・フォトグラファー。学生時代よりエクストリーム・スキーヤーとしてワールドワイドに活躍。選手引退後、バックカントリー・スキーなどを撮る写真家としても活動を始め、2014年からフォトグラファー・チーム「アフロスポーツ」に所属。さまざまなスポーツを撮影している。
http://sport.aflo.com/

芳沢淳 Profile
フリースキー・プロショップ 「BLACKDIAMOND」の下北沢本店、苗場店、かぐらパウダーステーションを切り盛りする店長。とりわけフリースタイルスキー、パウダースキーに造詣が深い。
http://blackdiamond.co.jp/

取材・文/三田正明 撮影/平澤清司


■特集「スキー再発見」は全5回の連載企画です。次回は、「ハイカーズ・デポ」店主の土屋智哉さんに、雪山での食料計画を指南いただきます。

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