こんにちは。リズムアンバサダーの松井健太郎です。わたしは都内の病院で睡眠障害を専門に、臨床・研究に従事している医師です。今後、睡眠に関するコラムを連載していきますので、よろしくお願いいたします。
それにしても、寒い毎日が続きますね。こんな季節は二度寝しがちです。布団が気持ち良くて…。そんな寒い早朝に起きて、ウォーキングに励む人たちへのアドバイスが今回のテーマとなります。
みなさんは「朝のウォーキング」と聞くと、どんなイメージを持たれるでしょうか。
・健康に良さそう
・おじいさん、おばあさんが頑張っていそう
とか、そんな感じでしょうか?
わたしは根性がないので、
・しんどそう
・絶対つづかなそう
などを、つい最初に思いつきますけど(笑)。
とはいえ、一般的には健康に良さそうな朝のウォーキング。
でも実は、睡眠にとって良いケースと良くないケースがあるんです!
さて、良いケースと良くないケースがあると言いましたが、どういうことでしょうか。もちろん、適度な運動という面では身体に良さそうですね。
ポイントは「朝の」という部分にあります。
ここで影響を受けるのは、ヒトの概日リズムです。概日リズムはサーカディアンリズムとも呼ばれ、朝起きて、夜眠る、という睡眠と覚醒のリズムも含まれます。
当たり前ですが、コウモリやフクロウみたいな夜行性の動物とは違い、ヒトは昼行性の動物です。
きっと江戸時代のころは、日が昇ったら起きて、日が沈んだら寝る、というような生活をしていたはず。現代みたいに、夜も明るくて、全然問題なく仕事ができてしまうほうがおかしい!(というふうに外来でよく説明しています)。
さて、概日リズム。繰り返しますが、一定の時刻になると眠くなって、一定の時刻に目覚める体内時計です。時差ボケを経験したことがある人は、そのパワーを実感できるのではないでしょうか。概日リズムはメラトニンという生体内ホルモンが司っているのですが、それに加えて様々な外部の調節因子が働きます。
例えば食事。あるいは日中の寒暖差。それから社会的因子(ずっと二度寝をしていたいのに、きちんと決まった時間に隠岐て仕事に行くわたしが良い例ですね)。
そして、中でもとても重要な調節因子が光です。
光の概日リズムに対する影響は、その暴露(光にあたること)する時間によって異なります。
朝起きてすぐに光暴露すると、概日リズム位相が前進します。つまり、眠たくなる時間が早くなり、早い時間に目が覚めるようになります。やや、おじいさん、おばあさん寄りのリズムになるということですね。
逆に夜間に光暴露すると、概日リズム位相が後退することが知られています。眠たくなる時間が遅くなり、朝起きる時間もより遅くなります。
ですから夜中にPCで根詰め作業をすれば、寝付きが悪くなる原因になります。これを夜中に書いているわたしも、本当はよろしくないです(笑)。
いずれにせよ、朝のウォーキングをすることで、概日リズム位相は前進することになります。
朝のウォーキングがいいかどうかは、「概日リズムの前進が望ましい人であるかどうか」、にかかっている、ということがご理解いただけましたでしょうか。次回コラムでは、どのようなタイプの人にとって、朝のウォーキングが良いのか悪いのかを、もう少し具体的に説明しようと思います。
文・資料提供:リズムアンバサダー 松井健太郎