こんにちは。精神科医の松井健太郎です。
食欲の秋ですね。秋の味覚というと、みなさん何を思い浮かべるでしょうか?
僕はサンマを推したいと思います!脂の乗ったサンマの塩焼きに、炊きたての新米、大根おろしにポン酢で……ハムッ、ハフハフ、ハフッ!……最高なのであります。想像しただけでよだれが!
それにしても食欲ってどこから来るのでしょうか?
今回は食欲調節に関わるホルモンとして、代表的な「レプチン」「グレリン」と睡眠との関係について、ご紹介したいと思います。
食欲を司るコントロールセンターは、大脳と中脳の間(間脳といいます)の視床下部に存在します。レプチンとグレリンはそれぞれこの視床下部に働くホルモンです。あまり馴染みがないかもしれませんね。レプチン、グレリンの発見はそれぞれ1994年、1999年ですから、わりと最近です。
レプチンは脂肪組織から分泌されるホルモンで、視床下部に作用すると食欲が抑制されるだけでなく、交感神経系を活性化し、エネルギー消費を促進します。そのため、レプチンはしばしば「やせホルモン」などと紹介されます。
レプチンの血中レベルはBMI(体格指数:肥満度を示します)に比例します。体重が増え、体内に多くの脂肪が蓄えられるとレプチンの分泌量が増え、適正な体重を維持する方向に働くわけです。
一方のグレリンは、その多くが胃から血中に分泌されるホルモンです。末梢の迷走神経を介して視床下部に働き、摂食を促す作用を持ちます。お腹が空くと胃から分泌されるので、「食欲増進ホルモン」として紹介されるケースが多いです。
これまでも睡眠不足による悪影響をいくつかご紹介してきましたが、今回も指摘しましょう。
睡眠不足は肥満の原因になるのです!
習慣的な短時間睡眠が肥満と関連することは古くから指摘されてきました。これが近年、レプチン、グレリンによって裏付けられてきています。
2日以上の睡眠不足(定義は研究によりますが、4〜5時間に設定されているものが多いです)により、レプチン(やせホルモン)が低下し、グレリン(食欲増進ホルモン)が増加すること。これらの変化により、食欲がアップし、食べものの摂取量が増えることが示されました(ちなみに、なぜこのような変化が起こるのかは、まだ明らかではありません)。
もう一つ覚えておいてください。
睡眠不足で食欲がアップした場合、甘いもの、炭水化物(パンやパスタ、ポテトなど)、塩気の多いもの(スナック、ナッツなど)などを、普段より多く摂取する傾向が見られます。
過食症のような摂食障害の方も、こういう炭水化物系をドカ食いする人が多いです。炭水化物には人を惹きつける魔力のような何かがあるのでしょうか?
実際、炭水化物は脳内の報酬系(欲求が満たされた時に快感を与える神経系)に働きかけることが知られています。
・睡眠不足で、レプチン(やせホルモン)が低下し、グレリン(食欲増進ホルモン)が増加する。
・つまり、睡眠不足だと太りやすくなる!
・睡眠不足で食欲アップした時には炭水化物系の食べものに注意!
仕事が立て込んだりすると、どうしても十分な睡眠時間が取れないことがありますよね。そういう時、これを知っているだけでも、ちょっと違うのではないかと思います。ぜひ炭水化物に注意しましょう!不用意に太らないために。
あんまり季節が関係なくてすみません(笑)。おいしいものを食べて、しっかり寝て、食欲の秋を楽しく過ごしましょうね!
文:リズムアンバサダー 松井健太郎