こんにちは。精神科医の松井健太郎です。
朝が寒いですね!お布団がとっても気持ちよくて、なかなか抜け出せません。あとちょっとだけ、のはずの二度寝が気付けば大遅刻、なんて経験をされた方もきっと少なくないでしょう。
それだったらまだ納得が行くのですが、こんな経験ありませんか?
「えっ!なんでこんな時間なんだろう?目覚まし時計、鳴らなかったのかな!」「昨日はちゃんとアラームセットしたはずなのになあ…おかしいな…」
でも「目覚ましが鳴らなかったんです」なんて言い訳は、なかなかできないのが実際のところ。
今回は、この「目覚ましが鳴らなかったんです」という現象を、レム睡眠とノンレム睡眠の働きから解説します(長いので、前・後編に分けてお話しします)。
レム睡眠とノンレム睡眠という言葉を、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
ヒトの睡眠では、このレム睡眠とノンレム睡眠が、合わせて90~120分の周期で繰り返し出現することが知られています。レム睡眠の「レム」はRapid Eye Movementから来ています。睡眠中に急速眼球運動が観察されたことが命名の由来です。
レム睡眠中、人はしばしば夢を見ているといわれています。レム睡眠の間、脳は活発に活動しているのですが、一方でレム睡眠中には全身の筋肉は完全に弛緩した状態、言いかえれば金縛り状態にあります。そのため夢に合わせて声を出したり動いたりすることはないわけです。客観的に見ると熟睡しているように見えます。
ノンレム睡眠はレム睡眠でない睡眠全般を指します。ノンレム睡眠中は脳活動が低下しますので、言いかえれば脳が休んでいる睡眠、と言えそうです。
睡眠中の脳波を取ることで、浅いレム睡眠と深いノンレム睡眠を判定することができます。N1~N3に分類しますが、この中ではN3の睡眠が最も深い睡眠です。
N3ステージでの脳波はとてもゆっくりとした波になっているので、この深いノンレム睡眠は「徐波睡眠」とも呼ばれます。この徐波睡眠中、ヒトは起こされてもなかなか起きられません。起きたとしても非常にもうろうとした状態です。また非常に不機嫌になったりします。
図:睡眠中の脳波から見た睡眠構築
・レム睡眠とノンレム睡眠は、合わせて1.5〜2時間ほどの周期で繰り返し出現する
・レム睡眠中は脳が活発に活動。従って夢を見ていることが多い
・ノンレム睡眠中は脳活動が低下。とくに深いノンレム睡眠(徐波睡眠)中には、ちょっとやそっとじゃ起きられない
深いノンレム睡眠である徐波睡眠が「目覚ましが鳴らなかったんです」という現象の原因なのでしょう、と鋭いみなさんはすぐ気づかれたかもしれません。
次回はこの徐波睡眠について、詳しく解説します!
文:リズムアンバサダー 松井健太郎