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「うつ病ではなく単に起きれないだけ!やる気があるのに起きれない睡眠障害とは (後編)」

「うつ病ではなく単に起きれないだけ!やる気があるのに起きれない睡眠障害とは (後編)」

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「うつ病ではなく単に起きれないだけ!やる気があるのに起きれない睡眠障害とは (後編)」

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こんにちは。精神科医の松井健太郎です。

前編では、夜はなかなか寝付けないし、朝はなかなか起きられないという、「睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)」という睡眠障害について、中編では、通常就寝する時間の2~4時間前に出現する、1日のなかでも一番寝付きづらい時間帯「睡眠禁止ゾーン」について、それぞれ解説しました。

睡眠相後退症候群の人では、睡眠禁止ゾーンのせいで、望ましい睡眠時間に寝付けないため、自力での症状改善がしばしば難しくなってしまう、という話でしたね。今回はこの睡眠相後退症候群の対処法について解説します。

睡眠相後退症候群とメラトニン分泌

ヒトの体内時計をメラトニンが司っている、という話は前編の記事にも書きました。睡眠相後退症候群の人では、以下の図のようにメラトニンの分泌時間も後退しているものと考えられています。


図1:健常者と睡眠相後退症候群の人の就寝・覚醒時刻と血中メラトニン分泌の日内変動(イメージ)(文献(1)を参考に筆者作成)

繰り返しになりますが、通常就寝する時間の2~4時間前が睡眠禁止ゾーンという、1日の中でも一番眠気が出にくい時間帯です。図1で示した睡眠相後退症候群の人では、0時ころに寝付こうとしてもどうやっても寝付けず、なかなか自力で生活リズムを修正できないわけなんです。

残念ながら簡便かつ劇的に症状を改善させる方法はありません。地道なやりかたではありますが、「大変だけど、なんとかしてメラトニン分泌リズムを前倒しさせる」というのが対処法の原則です。

メラトニン分泌リズムを前倒しさせるには

メラトニンは、高照度光に曝露すること(日光のような強い明るさの光が目に入ること)により、その分泌が抑制される、という特徴があります。朝起きて日光を浴びると生活リズムがリセットされるなんて言いますよね。まさにあれです。

反対に、夕方から夜間、本来なら日が沈んでいるであろう時間帯に高照度光に曝露すると、メラトニン分泌の立ち上がりを妨げてしまいます。例えば夜遅くまで集中してパソコン作業をすると、比較的明るい光に曝露していることになります。実際IT関連の会社勤めで、夜遅くまで仕事を、とくにパソコン作業を頑張っている方に睡眠相後退症候群が多いように見受けられます。

逆に起床直後に高照度光を目に入れることで、メラトニン分泌リズムの前進が期待できます。


図2:光曝露によるメラトニン分泌リズムの位相変動

以上から、
① なるべく夜に目に光を入れるのをやめる
② できるだけ午前中に日光を浴びるようにする
ということが重要です。

① なるべく夜に目に光を入れるのをやめる

これが一番大切です。寝る前にパソコンを使用するのはできるだけ控えましょう。ベッドの中でスマホいじってる方、これもダメですよ!とくに目とディスプレイの距離が近いので、影響がより大きいでしょう。

「どうしても仕事が山積みで、夜中遅くまで仕事しないと片付かないんです」、という方もいるかもしれません。その場合、厳しいようですが、正直治りません。残業を諦めるか、早寝早起きを諦めるか、妥協点を見つけるしかないです。覚えておいてください。

② できるだけ午前中に日光を浴びるようにする

以前の記事「朝のウォーキング、”向いている人”と”向いていない人”」(前編)(後編)では、早朝のウォーキングをすると、高齢者を中心に不眠の原因になることがある、という話を書きました。

これは早朝にウォーキングをすることで、睡眠・覚醒のリズムが前進してしまい、早寝したくなってしまう点が問題なんです(詳しくは以前の記事を読んでみてください)。

睡眠相後退症候群では逆の状態ですので、早寝早起きのためにぜひ早朝のウォーキングをして欲しい!ところが、そもそも朝起きられないのが睡眠相後退症候群の人。早朝ウォーキングが出来た人は見たことがないです。

そこで、朝自然な日光を浴びるために、東向きの部屋で、カーテンを空けて寝ましょう!「日当たりが悪くて、朝はまったく日光が差さないんです」という人も少なからずいると思います。その場合、高照度照明を使うのも手です。


図3:高照度照明の使用例(写真は筆者の私物)。睡眠相後退症候群の治療で使う場合はタイマー設定をして、決まった時間に高照度光を浴びるのがお勧め。

ちなみに太陽の光は高照度照明よりもずっと明るいです。これは曇りの日でも同様です。なので、早朝でなくても午前中に外に出て光曝露するのはとても大切ですので覚えておいてください。

③ その他

その他の項目として、寝る前の不適切な行動(激しい運動、カフェイン摂取、喫煙)を避けることも、とても大事です。ぜひ普段の生活を振り返ってみましょう。

前回記事で挙げたAさんのケースのその後について

Aさんのケースについてはこちらをご参照ください(中編)

さて治療介入前に自宅の寝床の環境について聞いたところ、北側の、全く日が差さない部屋で就寝されていることがわかりました。メラトニン分泌が光によって抑制されるという話をし、夕食後はなるべくパソコンでの仕事をしないように指導しました。さらに、高照度照明を購入してもらい、タイマー設定で早朝6時から高照度光を浴びるようにしてもらいました。

その後、転職なども経て、すっきり良くなるのに数ヶ月以上かかりましたが、最終的に1時ころ就寝し、8時頃起きる、という生活が送れるようになりました。

Aさんのケースもそうですが、職業病みたいなケースが少なくありません。ときには診断書を書いて、残業制限をお願いすることもあります。本当に難しい問題です。

最後に、「メラトニン受容体作動薬」と呼ばれる薬剤を使用する方法があります。この薬を使用する場合も、しっかり生活を見直さない限り、十分な効果は期待できません。とはいえ、通常の生活指導では全く効果がなく、睡眠薬も効かなかった睡眠相後退症候群の方が、メラトニン受容体作動薬の適切な使用によって大変うまく行ったケース、というのが少なからずあります。

これは医療機関で処方してもらわないといけない薬です。自力でなかなかうまく治せない場合には、ぜひ、睡眠障害専門の医療機関に相談してみてくださいね。

1.Tozawa T, Mishima K, Satoh K, Echizenya M, Shimizu T, Hishikawa Y. Stability of sleep timing against the melatonin secretion rhythm with advancing age: clinical implications. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2003;88(10):4689-95.

文・資料提供:リズムアンバサダー 松井健太郎

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