仕事やプライベートで、毎日やり取りされるEメールの数々。つい読み流してしまう文章のなかにも、隠れた美しい表現があると目を引くものです。
メールの文章や言葉の表現が美しい人は、それだけで印象もよくなります。ありふれた季節の言葉を並べるだけでなく、忘れかけた美しい日本語の響きをメールや会話に入れることで、やわらかく知的な印象が加わり、あなたの評価も上がるはず。
そこで、知っておきたい美しい日本語表現についてご紹介します。
日本語の音節は、ほとんどが母音で終わるため、他の言語に比べて語尾がやさしく広がり、心地よい響きに聞こえるのだそうです。
そのルーツには、縄文時代に自然と共生していた日本人が、他人を思いやり助け合って暮らしていた、平和で穏やかな気候や風土があるといわれています。
そんな平和で穏やかな気候や風土から生まれた、季節や天候を表す美しい日本語表現を、チェックしてみましょう。それぞれの意味と文例をご紹介します。
花冷え(はなびえ)
桜の花が咲くころの一時的な冷え込み。「花冷えの折、皆さまお元気ですか?」
花曇り(はなぐもり)
桜の花が咲くころの、薄曇りの天気。「今日はあいにくの花曇りですね」
朧月(おぼろづき)
春の夜の、ぼんやりかすんだ月。「今夜は、朧月夜ですね」
梅雨寒(つゆざむ)
梅雨の時期、不意に訪れる季節外れの寒さ。「梅雨寒の時節柄、お身体にお気をつけください」
蝉しぐれ
たくさんの蝉が一斉に鳴くことを、しぐれの降る音にたとえた言葉。「私の田舎は、夏に毎日蝉しぐれが聞こえる自然豊かな場所です」
涼風(すずかぜ)
夏の終わりに吹くさわやかな風。「涼風が心地よい季節になりましたね」
天高く馬肥ゆる(こゆる)秋
空は澄み切って晴れ、馬が食欲を増して肥えてたくましくなる秋。「天高く馬肥ゆる秋といわれるように、すがすがしい季節になりましたね」
灯火(とうか)親しむ
涼しく夜の長い秋は、灯火の下で読書をするのに適していること。「秋の夜長、まさに灯火親しむべしですね」
空っ風(からっかぜ)
冬に雨雪をともなわずに吹く、強い北風。「空っ風が吹きすさぶ、寒い毎日ですね」
寒の入り
小寒(1月初旬ごろ)の季節になり、寒さが次第に厳しくなってくること。「寒の入りを迎えたせいか、寒さが厳しくなりましたね」
はんなりと
上品で明るく華やかな様子。「はんなりとしたお召し物」
つつがなく
病気・災難などがない平穏無事な様子。「毎日つつがなく暮らしております」
たおやかな
しなやかで、折れそうで折れない姿、雰囲気のこと。「あの選手は、たおやかな身の動きですね」
ご紹介した表現以外にも、美しい日本語表現は数多く、さまざまな場所で使われています。その美しい響きは、ぜひ後世にも受け継ぎたいもの。
普段のメールや会話に、ぜひ取り入れてみましょう。
文:山下希代