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現在女流浮世絵師として活躍するツバキアンナさん。アラフィフになってから、お酒を美味しく飲みたいがためにランニングを始めたところ、あれよあれよという間に東京マラソン2回目の挑戦でサブ4を達成したといういきさつをお話いただいたのが、今年の夏のこと。
そのインタビューがキッカケとなって、アンナさんは京都マラソンに初挑戦することに。
リズムアンバサダーでもあるランニングコーチ、青山剛さんの京都マラソンに向けた連載『For 京都マラソン12週間プログラム』に合わせ、時には青山さんの直接指導を受けながらアンナさんが京都マラソンを目指すプロジェクトがスタートします。(Vol2前編・後編より続く)
そこで、今回は、プロジェクトの旗揚げということで、お2人に対談していただきました。
——青山さんが提唱する「フォーエバー・サブ4」を目指すために、アンナさんはどのようなトレーニングを続けていくのがいいのでしょうか?
青山剛さん(以下敬称略)モチベーションが上がりやすくするためには、3時間56分だったタイムを次の目標として3時間50分にする。その結果、52分でしたっていう形のほうが、ストレスも少なくなるでしょう。
練習時間を週3回くらい取れるのであれば、目標を3時間45分くらいにするのが適性です。例えば、目標を1㎞5分20秒とか、5分15秒に設定する。時間が確保できないのであれば、無理して目標を上げないほうがいいですし、週3回、練習できるんだったら、アンナさんのタイムなら次は3時間45分。結果、40分台に収まるという形が理想ですね。
ツバキアンナさん(以下敬称略)今は週末だけ、週2でトレーニングしています。1回12〜13㎞走ればいいのかなと思っていて、平日の朝だと通学、通勤の人と被ると走りにくいので、週末に走っています。
青山 アンナさんの話を聞いていると、走ることしか練習メニューに入っていないんですよ。
アンナ そうですね。おっしゃる通りです(笑)。
青山 走らないトレーニングも覚えて欲しい。走らないランニングトレーニングを週5回やっても、そんなに身体に負担がかからないですから。例えば、ストレッチや腹筋などは、毎日のようにやってもらって、走るのは週2〜3回で十分こなせます。
アンナ 家のなかで器具とか使わずにできるトレーニングですか?
青山 もちろん。何もいりません。そういうのをコツコツとやっていく。アンナさんは身体が丈夫そうなので、突然、ケガしてしまうのが怖いんですよ。ちょっと言い方悪いかもしれないけれど、“ムダに丈夫”が一番危ない。大きなケガを50歳を過ぎてからやってしまうことが多いんです。
青山 だから、今のうちに“走れる身体作り”をする。そのために“走らない”トレーニングに取り組まないといけない。走ると、負荷だけでなく、負担も増えるわけです。自分で足がちょっと太くなったというのは、明らかに体幹をまだうまく使い切れていないということなんです。
アンナ 体幹という言葉をよく聞きますが、よくわからないんですよね。
青山 腕と足と首を除いた胴体部分の話です。カンタンに言うと、肩甲骨、腹筋、お尻、骨盤。こんな感じです。「そこを使って走りなさい」と言われても、最初はうまく走れないんですよ。頭を使って走ろうとしても、手と足両方が一緒に出ちゃったり(笑)。
まずは、オートマチックに体幹で走れるような下ごしらえをすることが大事。例えばバッターボックスにプロ野球選手が入って、肩甲骨とか腹筋がどうでとかいちいちやらない。いちにのさん、で打つ。ただ、そのために練習するわけです。そういうことが、一般の人は欠落しています。
だから、走る前に、いい意味でお腹とか肩甲骨周りに少し筋肉痛を作るようにすると、走ったときに不思議と勝手にその部分が動くようになる。つまり、軽い筋肉痛が必要な部位のスイッチになるんですね。難しく考えるのではなく、それさえやっておけば、どんどん走りの質が良くなっていきます。
アンナ そういう意味では、ちょうど始めるのにいい時期なのかなって思います。それくらいやらないと、もうたぶん、あちこちにガタが出てきそうなので(笑)。
青山 社会人なので、毎日走るのは難しいと思うので、だいたい週3くらいで、トレーニングは距離よりも時間でやるといいですよね。何㎞走るというのは、もっと先の話で、何分ジョグとかっていうのがいいです。
アンナ それは、どこを走ってもいいのですか?
青山 ジョギングレベルならどこを走ってもいいでしょうし、できればストップ&ゴーがないところ。信号があまりない多摩川沿いなどを走るのがいいですね。止まる、走るってやると、フォームが崩れやすいんですよ。
青山 信号などでストップするということは、急ブレーキになります。ブレーキをかけるクセが身体に染みこむと良くない。ブレーキをかける時は前腿を使うのですが、前腿にスイッチが入ると、鍛えられてしまいます。走るのに鍛えておきたい筋肉は、モモの裏側なんです。アンナさんは、足が太くなったとおっしゃってましたが、どこが太くなったんですか?
アンナ 太くなったのは、明らかにふくらはぎと前の腿です。
青山 前腿が疲れると、ふくらはぎも張るんですよ。前腿が疲れると、ふくらはぎが張る。だから、この2つが太くなる。裏側は締まってあげる性質があるので、太くならない。腿の裏側は締まって上がる。逆に前腿は太くなる。前はブレーキで、後ろはアクセルなんです。
アンナ じゃあ、私はブレーキばかり使っているということですか?
青山 後ろももちろん使っていますが、前の筋肉は疲れやすく、早くダメージが出てくる。逆に後ろの筋肉は長持ちする。マラソンに必要なのは瞬発力がある前モモではなく、後ろの長持ちする筋肉なんですね。そういうことが、これからのトレーニングでだんだんわかってくると思います。
(「現代女流浮世絵師、京都マラソンを走る 青山剛×ツバキアンナ対談 Vol.3」 〜どんな運動でも、大切なのはリズム(後編)〜へ続く)
構成・文:國尾一樹