あなたにちょうどいい、リズム|Rhythm

元ラグビー日本代表メンタルコーチ・荒木香織「自信をつけるためのスキル」

元ラグビー日本代表メンタルコーチ・荒木香織「自信をつけるためのスキル」

  • Column

<COLUMN>
元ラグビー日本代表メンタルコーチ・荒木香織「自信をつけるためのスキル」

更新日:

| コミュニケーション | トレーニング | パフォーマンス |

イングランドで2015年に開催されたラグビーW杯の初戦で、強豪・南アフリカを相手に逆転トライを決め、“世紀の番狂わせ”と絶賛されたラグビー日本代表。その陰の立役者として注目を浴びることになったのが、日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織さん。

選手ひとりひとりと話し合いながら、個々のメンタルを鍛えていった経験を元にまとめた『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』(講談社+α新書)の著者でもある荒木さんに、アスリートではない一般の人でも、普段の生活リズムを整えるためのヒントになるメンタルスキルの話をお伺いしてきました。

今回は、「自信をつけるためのメンタルスキル」についてです。

自分に言い聞かせないと自信はつかない

——自分に対して、自信を持っている人とそうでない人では、生き方においても大きく違ってくるものだと思います。自信があまりないという人はどうすればいいのでしょうか?

自信というものは、誰でも生きていく上でつけていかないといけないものです。しかも、それは、自分でつけていくしか道はありません。そういう意味では、小さな目標を立てて、ちょっとずつでもいいのでそれを達成していく。そうしていくうちに自信がつくようになる。それが一番の近道だと思います。

「私、自信がないんです」と言ってばかりの人は、自分で言ってしまっているのだから、本当に自信がないのでしょう。でも、自分で自分に言い聞かせるようにして頭に入れていかないと、自信はいつまで経ってもつかないものだと思います。

そのために必要なことは、なるべく自分自身を肯定すること。そして、できるだけ、前向きに取り組むことです。目標に到達しないようなことはなるべく言わないようにして、自分がどうしたいのかといったことを考える。その上で、常に何を成し遂げたいのかを言うようにしたほうがいいでしょう。

——前向きに取り組めるようになるには、どうすればいいのでしょうか?

例えば、会社で、日本語ではなく英語でプレゼンすることになったとします。そこで、「英語でプレゼンなんて、ぜんぜん自信がない」などと周囲に漏らしてばかりでは、どうしようもありません。

周囲に不安を打ち明けて相談するというのも、場合によってはいいのかもしれませんが、そういった時間があるなら、「今日は一枚目のスライドだけでも、ちゃんとできるように練習しよう!」とやってみる。そのほうが、少しだけでも自信をつけることができるので有意義だと思います。

前向きに取り組むことで、思考も変わる

自信というのは、ちょっとした言葉の使い方や振る舞いに気をつけていれば、少しずつついてくるようになるものです。『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』でも紹介していますが、いつも下を向いてしまっている人というのは、どうしても自信があるようには見えないですよね。

ですから、プレゼンに入る前から、「今日のテーマに関しては、社内の誰よりも、私が一番、理解しているんだ」といった自信を持って本番に臨むようにする。「みなさん、聞いてください!」といった雰囲気でプレゼンをすれば、それなりに聞こえるものです。

ところが、「今日はどうだろう?たぶん、ダメかもな……」といった感じで入ってしまうと、その雰囲気は伝わってしまいます。聞いているほうは、「この人、ダメだな」と思ってしまう。

このように、周りに自分自身をどう見せるのかは、自分でコントロールできることです。心理学用語では、このメンタルスキルを「自己呈示力」といいます。ですから、プレゼンのように、人前で何かを発表する時には、「どういうふうに見せるのか」とか、「どう提示するのか」といったことを意識しながら練習する。そうすれば、少しずつ変わっていくことができます。

ラグビー日本代表の選手たちも、最初はそうでした。スクラムを組む時などは、「受けてたつよ」といった感じだったのですが、W杯が始まる頃になると、「まだ押せます!」といったコメントが出るまでになりました。それくらい、前向きに生活をしていると、思考は変わってくるものです。

もちろん、勝てなかった日本代表が、急にあれだけ勝てるようになったわけではありません。小さな思考の変化の積み重ねのなかで変わっていけたからこそ、なのです。

結果を出すための過程に集中することが大事

——最初は自信のなかった日本代表が、どうやってあそこまで変わったのでしょうか?

やはり、エディーさんの力が大きいでしょう。フィジカルの力をつけるトレーニングもそうですが、コンディション面でも、栄養の管理やリカバリーまで考えた、緻密なトレーニングメニューが充実していました。

そこに、私の仕事であるメンタル面も加わっているのですが、とにかく、いろんな角度から多面的に選手としての力を高めることをした結果、自信をつけさせてあげることができたのだと思います。

それが、成果として現れるようになって、W杯では花開いたという感じです。余すところなくやりきって、選手たちは不安材料を残すことがなかった。そして、自信を持ってW杯に向かうことができたということでしょう。

——エディーHCの力だけでなく、荒木さんのメンタル面でのサポートの力というのも大きかったのでしょうね?

そう言っていただけるとうれしいのですが、当初はもう、とにかく自信をつけてあげるしかなかったという状況でしたから。自信がないのはしょうがない。だったら、ないものを選手たちと共に考えて、作っていくしかなかったということですね。

wcupphoto_rainbow_2_3_kaoriaraki
W杯初戦の南ア戦直前の練習時、歴史的勝利を予感させるような虹が現れた(写真提供:荒木香織)

——日本代表が強くなるための取り組みとして、他にもありましたか?

日本代表の話をすると、どうして勝てないのかということを選手たちと話し合って、そこから「勝つ文化」を自分たちで作ろうという話になりました。

これは、自信をつけるための取り組みというよりも、ラグビー以外の場面でも規律を守り、その姿勢をラグビーに反映させる目的で始めた取り組みです。やはり、試合中は規律を守ることが大切ですから。

特に、最初の2年間は、勝つ文化を作るために「勝つチームって、どういうチームだろう?」とか、「勝つっていうことは、どういう経験なのか?」「どうすれば勝てるのか?」といったことをみんなで考えていきました。

続けているうちに、選手たちの思考も、勝つ文化を作ることに集中していくようになります。すると、細かいことまで考えるようになるのです。

「勝つチームの控え室のゴミ箱ってこんなに汚くないよね」とか、「勝つチームって、いいかげんにシューズを放っておかないよね」とか。そういった、細かいところから正していくようにしていく。

さらに、「やっぱり、勝つチームって、もっとカッコイイよね」とか、「移動する時でもカッコいいし、グダグダとゲームなんかしていないよね」などと言うようになって、見かけの面でもいろいろと考えていったのです。

さらに、オールブラックス(ニュージーランド代表)の選手なんかだと、いつもビシッとしたスーツでキメている。「ああいうのが、勝つチームっていう感じがするよね」などと、勝つチームをイメージしながら、思考をどんどん変えていくようにしたのです。

見た目を意識すると、印象も変わる

——そういった話は、一般のビジネスパーソンにも共通していることなのでしょうか?

共通していると言っていいでしょうね。やはり、ヨレヨレのスーツを着て仕事をしているよりは、安くてもいいから、クリーニングされているスーツを着ていったほうが清潔感もあり、気分は良くなります。

その日は大事な商談があって、勝負の日だということであれば、勝負服と決めているスーツを着ていく。それだけでも、気の持ちようは大きく変わってくるものだと思います。

日本代表の選手たちは、試合前になると、よく散髪をしていました。お互いにバリカン入れて髪をカットしたりして、それで気合いを入れる。選手同士で髪を切ることで、お互いを鼓舞する意味もあったのでしょう。

0024_2-3_kaoriaraki

——見た目から入るということは、思った以上に重要なことなのかもしれないですね。

欧米だと、そのあたりはシビアかもしれません。面接などでその人の実力を評価する時に、どこどこの大学出身ですと言うと、日本ではその評価が変わりますが、欧米ではまったく意味がありません。

それよりも、「仕事で何をしてきたのですか?」といった質問にちゃんと答えることができて、初めて評価をしてもえらえる。その時に、身体に合った、手入れの行き届いたスーツを着ているほうが、さらに印象は良くなりますし、しっかりアピールできます。

日本人ですと、あまり格好のことについては気にしない人が多い印象ですが、やはり、パリッとした格好をしているほうが、自分に自信を持っているように見られますし、印象も良くなります。また、そういうふうに心がけていると、実際に自分もそういう気分になって自信がついてくると思います。

特に女性ですと、仕事をする時に、イマイチな服よりは、新しい気に入った服を着ている日のほうが、うれしくて気分も高揚します。男性も、女性ほどではないにしても同じような感覚があるのではないかと思います。

服装など、わかりやすいところから、まず、変えてみる。そうすると、何となく、その気になれるじゃないですか。自分で自分を“その気”にさせて、自信をつけてあげないと。

自信をつけてくれる人なんて、ほとんどいません。自信がないままの自分を誰も助けてくれないのです。だから、自分でどうしたいのかということを考えていくべきだと思います。

不安材料を消すことが自信につながる

——自分でどうしたいのかを考えるというのは、どういうことでしょうか?

自分をどんどん、前に進めていくようにすることです。そうすると、自信がついてくると思います。そのためには「しようと決めたことは必ずやる」ということが大事です。

それは、勉強でもプレゼンでも、仕事でも同じでしょう。例えば、プレゼンで自信がないということを改善するには、プレゼンする内容をとことん詰めていくしかありません。そうすると、不安は消え去って、自信しか残らなくなっていくわけですから。

少しでも不安があるなら、それが残らないように、プレゼンの練習をしてみるのです。「決められた15分間で終わらないかもしれない」と不安に思うのであれば、15分で収まるように練習していく。

そうやって詰めていけば、本番当日は不安材料がなくなって、自分はできる気になってくる。自信だけが残るわけです。そういうふうに、いかに自分を前向きにできるか、ということを考えて行動していくようにする。不安材料を消していくことが、自信をつけるためには、とても大事なことなのです。

取材・文:國尾一樹
写真:宇野真由子

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • Line
  • Hatena
  • Pocket

関連記事

プロが教える!婚活で”うまく成功をつかめない人”の特徴

  • Beauty
  • Column

プロが教える!婚活で"うまく成功をつかめない人"の特徴

サッカー元日本代表・鈴木啓太「子どもたちからエネルギーをもらう」

  • Column
  • Relaxation

サッカー元日本代表・鈴木啓太「子どもたちからエネルギーをも ...

物語で辿る文脈登山 vol.10 ~絶景 甲州アルプスを歩く#3~

  • Column
  • Relaxation

物語で辿る文脈登山 vol.10 ~絶景 甲州アルプスを歩く#3~

日本の非常識は世界の常識だった!? -ボスニア・ヘルツェゴビナ編-

  • Column
  • Relaxation

日本の非常識は世界の常識だった!? -ボスニア・ヘルツェゴビナ編-

南の島国が親日の理由とは?トンガの取材レポ(前編)

  • Column
  • Relaxation

南の島国が親日の理由とは?トンガの取材レポ(前編)

新着記事

春の体内リズムを整えよう~水ソムリエ&水鑑定士 竹村和花のアクア・セラピーvol.9~

  • Beauty

春の体内リズムを整えよう~水ソムリエ&水鑑定士 竹村和花のアクア・セラピーvol.9~

歯科衛生士が教える歯のホワイトニングと美白ケア

  • Beauty

歯科衛生士が教える歯のホワイトニングと美白ケア

基礎代謝を高める、お引越しトレーニング

  • Exercise

基礎代謝を高める、お引越しトレーニング

桃尻ウォーキングのススメ!日常動作をエクササイズに変える

  • Exercise

桃尻ウォーキングのススメ!日常動作をエクササイズに変える

【特集/眠りの真実】睡眠コンサルタント友野なおさんの快眠生活<後編>

  • Beauty
  • Relaxation

【特集/眠りの真実】睡眠コンサルタント友野なおさんの快眠生活<後編>

おすすめの記事

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

  • Exercise

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

  • Exercise

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

  • Food

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

  • Relaxation

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

  • Column

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

PAGE TOP

PAGE TOP

閉じる