あなたにちょうどいい、リズム|Rhythm

元ラグビー代表メンタルコーチ・荒木香織「世界で闘える心の鍛え方」Vol.1

元ラグビー代表メンタルコーチ・荒木香織「世界で闘える心の鍛え方」Vol.1

  • Column

<COLUMN>
元ラグビー代表メンタルコーチ・荒木香織「世界で闘える心の鍛え方」Vol.1

更新日:

| コミュニケーション | トレーニング | パフォーマンス |

リオデジャネイロ五輪で初採用された7人制ラグビーの男子日本代表が、1次リーグ初戦で、優勝候補のニュージーランドに大金星。またしても、日本ラグビー界が、世界の大舞台で「世紀の番狂わせ」を演じている。その後、ラグビー日本代表は破竹の勢いで厳しい1次リーグを勝ち進み、準決勝に進出、悲願のメダル獲得とはならなかったが、4位の好成績を収めた。

ラグビー日本代表の世紀の番狂わせといえば、昨年のW杯初戦、南ア戦での大金星が記憶に新しい。実は、今回の7人制ラグビーの五輪代表選手たちは、合宿中に、この試合を観戦。「結果を残せば変わる。彼らに続こう」と誓い、その想いが、今回の活躍に繋がっていったのだという。スター選手不在の雑草軍団と言われた7人制ラグビー日本代表にも、その魂は引き継がれていたのかもしれない。

昨年9月20日のこと。過去24年間、W杯で勝ち星がなかった15人制のラグビー日本代表が、過去2度のW杯優勝を誇る世界ランキング3位の南アフリカを34対32のスコアで、最後の最後に逆転トライを決めて大金星。日本のみならず、世界を震撼させた───。

第2戦のスコットランド戦を落としてしまったことで、サモア戦と米国戦と合計3勝を挙げながらも決勝トーナメントに進むことができなかったのは残念だったが、世界からは「世紀の番狂わせ」と絶賛されたラグビー日本代表。

その裏の立役者として、一躍、注目を浴びることになったのが、代表を“世界で闘える”集団にしようと心を鍛えていった、メンタルコーチの荒木香織さんだ。『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』(講談社+α新書)の著者でもある荒木さんに、ラグビー日本代表への想いや、一般の人でも応用できるメンタルスキルなどについてお話を伺いました。

荒木香織(あらきかおり)
学生時代は短距離陸上選手として、インターハイや国体などに出場後、スポーツ心理学を学び、米ノーザン・アイオワ大学にて修士課程、ノースカロライナ大グリーンズボロー大学で博士課程修了。現在は園田学園女子大学・短期大学教授。エディ−・ジョーンズHCに請われ、ラグビー日本代表のメンタルコーチを務める。著書に、『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』(講談社+α新書)。

日本から応援するつもりだったW杯

──荒木さんと言えば、あのW杯初戦となる南ア戦で、大金星を挙げたラグビー日本代表の世界で闘える心を創り上げたメンタルコーチとして一躍、注目されるようになりました。当時はまだ生後11か月のお子さんがいて、同行する予定ではなかったところ、選手たちからの強い要請があって、急遽、W杯本番に帯同することになったとお聞きしていますが、本当なんですか?

そうみたいですね(笑)。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は、1回、決めたことはほとんど覆さない人なんですよ。エディーさんの計画では、国内の最終合宿がW杯直前の昨年8月末にあったのですが、それまで3年半でしっかりとメンタル面での準備をさせてあげるというのが私にとっての最終目標だったので、そのつもりで仕事をしていました。

その結果、うまく準備ができたので、「心配しないで、存分にプレーしてきてください!」ということで、ミーティングを終了したんですね。それで、「私は家で一生懸命応援しているから!」と言ったところ、選手全員が「え!?」って顔をして(笑)。

選手たちは、私がW杯本番に帯同しないということを知らなかったんです。「来ないんですか?」と一同、声を揃えて言うので、「いや、いかないというか、そもそもエディーさんに呼ばれてませんから」って(笑)。

選手たちが「僕らはW杯に行ってる間、何してるんですか?」と。その時は生後10か月くらいの子どもがいて、育児休暇だったので、別に予定はありません。「ちゃんと試合はチェックして応援しておくから、何かあったら連絡して」と伝えると、「わかりました。覚悟しておいてください」って選手たちに言われてしまいました。それで、私と選手との最後のミーティングは終了したんです。

選手の強い要望と、エディーHCの説得

——最後のミーティングが終わったときは、まったく現地に行く予定ではなかったんですね?

そうなんです。エディーさんは、1回、決めたことは絶対に変えない人だし、ましてや、私のようなメンタルコーチのようなスタッフのやることはきっちりと決められています。W杯本番までにしっかり準備をさせなさいという指示がありましたから、メンタル面での準備は4シーズン目でしっかりできたし、いい感じで仕上がってきていたので、あまり心配はしていなかった。だから、わざわざ私が帯同しなくても大丈夫だと思っていたところもありました。

ところが、W杯本番前の最後の国内試合、ウルグアイ戦が福岡と秩父宮であって、その後、選手たちはすぐにイングランドに渡る予定でした。その最後のウルグアイ戦の前日、エディーさんからいきなり電話がかかってきて、「香織、選手からの強い要望だから、イングランドに来てください」と(笑)。

「えーっ!? まだ小さい子どもいるから無理です」って言ったんですけど、「とにかく、スケジュールを空けていくように!」とエディーさんは引き下がりません。「そりゃ、エディーさん、私は育児休暇中だから、確かに何か予定があるわけではないですけど、子どもが小さいから無理です」って断ったのですが、3回くらい説得されてしまいました……(笑)。

実はエディーさんは、しっかりとした考えを持つ人に対しては考えを尊重するタイプです。そんなエディーさんが、ここまで食い下がってくるので、これは、よっぽど、選手からの強い要望があったんだろうし、エディーさんも私に帯同して欲しいと考えが変わったんだろうなぁ、と。

ただ、子どもはまだ生後10か月くらい。イングランドまでは飛行機で12時間くらいかかるし、どう考えても子どもを連れていくのは無理だろうと……。

しかも、母親であることと、メンタルコーチの仕事というのは、あまりにも役割が違いすぎる。子連れでイングランドに行って、母親をしながら、メンタルコーチの仕事に打ち込むというのは、個人的にはかなり難しいとも思いました。
——でも、結局は子連れで帯同することになりましたね。

結局、そうなりました(笑)。私自身、仕事上で頼まれたことは、やっぱり断れない。今回だけは「これは無理」って思ったけれど、方法を考えれば何とかなるだろうと思い直して、結局行くことにしました。「南ア戦という、大事な試合に私がいないってどういうこと?何かあったらどうする?」という話に選手同士でなったみたいで、エディーさんに、選手たちが要望を出したようです。エディーさんも、最終的には了承したという形だったみたいですね。

arakikaori1_01
W杯初戦となる南ア戦の前日練習で、ショットの練習をする五郎丸選手
写真提供:荒木香織

集大成を見せてくれた選手たちに感動

——今では、行って良かったという感じですか?

行って良かったというよりも、「本当にありがとう!」って感じでしたね(笑)。だって、あんないい試合を見せてもらったんですから。試合後に選手たちに会ったら、「来て良かったやろ!」って、偉そうに言われちゃいましたけどね(笑)。

でも……、本当に選手たちには感謝しています。本当にスゴい試合を観させてもらったわけですから。私はずっとラグビーが大好きなので、あんなにいい試合を選手たちが見せてくれたのが嬉しかったですね。選手みんなが頑張る姿をずっと見てきていましたし、そのなかで、最後の集大成を見ることができて、感無量でした。

本音を言えば、1試合くらいはこの目で間近に観たいなあと、まだ行くことが決まっていなかった時には思ってはいましたけれど、やはり子どものこともあって無理だろうと諦めていましたからね。だから、今となっては、みんなには、感謝の気持ちしかありません。

——ずっと関わってきたチームの最後の集大成を間近で見れたというのは、確かにそうでしょうね。

ただ、私たちとしては、大会を通してという意味では、残念な気持ちのほうが大きかったですね。ベスト8にコマを進めるのが最終目標でしたから。

日本のみならず、世界中の人々が、大金星にスゴいスゴいと大絶賛の嵐でしたけれども、みんなが南アに勝つぞという強い気持ちでずっと準備をしてきましたから。その過程を見てきたからこそ、南ア戦の勝利に関しては、それほど驚きませんでした。

とは言いつつも、あの試合展開については、もう、感動してしまいましたね。勝ち方に感動してしまいました! ずっと「南アに勝つぞ!」と、準備をしてきたなかでの逆転トライでしたから。

南アに勝つことは“あり得ない話ではない”という雰囲気

——南ア戦の勝利には、多くの日本人がビックリしましたし、世界中が大絶賛しましたよね。

確かに、あの勝利は日本で言われているよりも海外での評価が高かったと思います。特にラグビーの文化が根付いている国々では、これ以上にないくらいの高評価をしてくれましたから。もちろん、日本でも評価はされてはいますが、海外では、ラグビーのみならず、スポーツの歴史が変わる1戦だったと評価されているんですよね。

——あの、スポーツの歴史を変えたとさえ言われた大金星が、勝ち方は別にして、「そんなに驚きではなかった」という話に、みなが驚くのではないでしょうか?

予選を勝ち抜いて、ベスト8まで行くというのが最終目標でしたから、悔しさが先に立ってしまって、ついつい、そう言ってしまうのかもしれません。正直に言えば、やっぱり、南ア戦に勝ったというのは、やっぱり、驚いたと言っておいたほうがいいのかもしれないですね(笑)。

やはり、相手は、世界のトップの実力を誇るチームですから。サッカー日本代表で言えば、W杯でブラジルに勝つようなものですよね。もしかしたら、それ以上のことだったのかもしれませんし。

そういう意味では、私自身、最後の最後で逆転トライを決めて勝利したというのは、ビックリしましたし、エディーさんなんか、私以上にビックリしていましたから(笑)。

もちろん、スタッフだけでなく選手たち自身もビックリしていたというのが本当のところでしょう。ただ、いい準備をしてきただけに、ラグビー日本代表に関わってきたスタッフも選手たちも、初戦の南アに勝つということは、“あり得ない話ではない”という雰囲気がありました。それが、結果となって出たという感覚があったんですよね。

arakikaori1_02

3勝しながらもベスト8に辿り着けなかった悔しさ

——いろいろと複雑な想いが交錯していそうですが、やっぱり、初戦の大金星というのは、キッチリ結果を出してくれたということでビックリしつつも、感動したと……。

うーん……、でもやっぱり、ベスト8に行くことができなかったので。それが今でもとても悔しいです。確か、予選を突破してベスト8に行っていたとしたら、1戦目はオーストラリア戦だったハズなんですよね。

しかも、試合をするスタジアムは、ラグビーの母国であるイングランドの代表的なスタジアム。ラグビーの聖地、トゥイッケンナム・スタジアムですからね。すべてのラグビー選手が憧れるスタジアムです。

そこまで辿りついて、試合をする自分というのをシッカリとイメージできていた選手がとても多かったんです。それだけに、3勝を挙げながらも辿り着けなかったというのは、やっぱり、残念で仕方ありません。

今思えば、もしかしたら、初戦で南アに負けて、後の3戦を勝っていたほうがベスト8まで行けたのかもしれないというのもありますし……。

いろいろと思い出してくると、やっぱり、すっごい悔しい! ものすごく頑張ったけれども、悔しさのほうが上に来てしまいます。

「なんで、第2戦のスコットランド戦で勝たせてあげられなかったのか?」って、今でも時々、思い出したように考えることがあるんですよ。この悔しさは、私以上に選手たちが抱いているんだろうなあと思います。

(Vol.2に続く)

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • Line
  • Hatena
  • Pocket

関連記事

耳ツボジュエリーで赤ちゃんみたいな柔らかい耳を目指す

  • Beauty
  • Column

耳ツボジュエリーで赤ちゃんみたいな柔らかい耳を目指す

現代人向け!快適な目覚めと睡眠のための「食事法」

  • Column
  • Food

現代人向け!快適な目覚めと睡眠のための「食事法」

スターバックスから卵・乳製品不使用のドーナツが登場!!

  • Column
  • Food

スターバックスから卵・乳製品不使用のドーナツが登場!!

オーガニック農家・吉岡龍一「チーズの勉強会」

  • Column
  • Food

オーガニック農家・吉岡龍一「チーズの勉強会」

虫歯治療後に歯が痛い…原因と対策は?【歯科医監修】

  • Column

虫歯治療後に歯が痛い…原因と対策は?【歯科医監修】

新着記事

冷え性解消に!睡眠時の靴下、オススメ素材と履き方は

  • Relaxation

冷え性解消に!睡眠時の靴下、オススメ素材と履き方は

首・手首・足首!3つの首を温める温活グッズ7選

  • Beauty

首・手首・足首!3つの首を温める温活グッズ7選

【W杯初出場ゴールを決めた伝説の男】野人・岡野雅行 Vol.6 〜雑草として育った、野人・岡野の原点〜



  • Column

【W杯初出場ゴールを決めた伝説の男】野人・岡野雅行 Vol.6 〜雑草として育った、野人・岡野の原点〜



心理的ストレスによるネガティブな感情を取り除くためには

  • Relaxation

心理的ストレスによるネガティブな感情を取り除くためには

夏なのに冷えていませんか?お尻作りが冷え改善につながる訳

  • Beauty
  • Exercise

夏なのに冷えていませんか?お尻作りが冷え改善につながる訳

おすすめの記事

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

  • Relaxation

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

  • Food

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

  • Exercise

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

  • Exercise

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

  • Column

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

PAGE TOP

PAGE TOP

閉じる