「病気を診る」のではなく、「全体を診る」といわれている漢方医学は、「冷え性」など西洋医学では病気に分類されない症状の改善を得意としています。
でも、漢方薬で冷え性対策をしているという人はあまり多くないのではないでしょうか。「冷えは万病のもと」です。今冬の温活には、漢方薬を取り入れてみませんか。
漢方医学の観点からみた冷え性のタイプと、よく用いられる漢方薬をご紹介します。
漢方医学では、冷え性のタイプを「末梢循環不全タイプ」「自律神経タイプ」「新陳代謝低下タイプ」の3つに分けています。まずはそれぞれの特徴をみていきましょう。
若い女性に最も多くみられるのがこのタイプ。漢方でいう「血虚(けっきょ)」で、血液が不足した状態であることが多いため、血行を促進する処方を行います。
ほてりが先に出る“隠れ冷え性”です。更年期に起こる冷え・のぼせもこのタイプです。「気逆(きぎゃく)」といって気の流れが逆転している状態が関連していることが多いので、気の流れを正常に戻す必要があります。
高齢者に多いタイプですが、急激なダイエットをした若い女性にも多くみられます。漢方でいう「気虚(ききょ)」、すなわちエネルギーが不足している状態になっているので、新陳代謝を活発にする処方がなされます。
ひとくちに冷えに効くといっても、さまざまな漢方があります。冷えのタイプ別に、よく用いられている漢方をご紹介します。
婦人の妙薬として知られる有名な漢方薬。冷えや貧血のあるケースで処方されます。月経異常、不妊症、更年期障害、自律神経失調症、慢性頭痛、腰痛などにも用いられます。
冷えの処方で最も有名であり、手足が冷えるタイプによく用いられます。冷えによる坐骨神経痛や腹痛、腰痛、頭痛にも効果的です。
症状が日によって変化(=逍遥)する人に用いられます。更年期障害の治療薬として有名です。月経困難症や、中絶後の神経症、口内炎、肝疾患にも。
冷えとのぼせの両方がある人に用いられます。口唇乾燥や下腹部の膨満感、不妊症、月経困難症、無月経の場合にも。
腰からお尻にかけての冷えや、下腹部の痛み、頭痛や関節痛などを伴う冷えに処方されます。月経困難症、神経痛、更年期障害の方にも。
貧血傾向で胃腸が弱く、皮膚の乾燥を伴う冷えの人に用いられます。疲労感、貧血症、外科手術後の体力低下などの場合にも使われます。
身体が弱っているときや、全身の倦怠感によく用いられます。食欲不振や病気・手術後の不調、虚弱体質、多汗症にも有効です。
新陳代謝の低下による冷えがある人に処方されます。めまい、ふらつき、動悸(どうき)などがあるときにも用いられます。慢性腸炎や慢性腎炎、むくみ、じんましんなどにも。
漢方薬は一般に副作用が少ないといわれていますが、あくまでも薬ですから、むくみや下痢などの副作用を起こすこともあります。
自己診断をせずに、まずは専門家に相談して、自分の症状や体質に合った漢方薬を探していってくださいね。
文:erica
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