紅茶に整腸作用があるというイメージ、多くの人は意外に思うのではないでしょうか。実は、紅茶はお通じでお悩みの方にもとてもおすすめな飲料。ぜひ、毎日の中で口にしていただきたい飲み物なんです。ここでは、紅茶の歴史にも触れながら、腸活になる紅茶の取り入れ方について触れて行きたいと思います。
磯淵猛(いそぶち たけし)
1979年、スリランカ紅茶を中心に扱う紅茶専門店「ディンブラ」を開業。「キリン 午後の紅茶」のアドバイザーを20年以上務め、自身が生み出した“ティー&フーズ ベストペアリング”の言葉とともに、紅茶と食べ物の相性について監修。食べ合わせや文化、歴史にも精通しており、全国でセミナーを開催し、執筆活動等、幅広い分野で活躍している。
――便秘解消や腸活にいいというイメージが紅茶にはありませんでした。とても意外でピンとこなかったのですが。
1660年頃、中国から初めてイギリスに紅茶が持ち込まれます。そのとき、「整腸作用がある」というのが、紅茶の薬効のトップに掲げられていました。整腸作用があるというのが、一番の売りだったわけです。
この整腸作用をもたらすのはカテキンで、渋みの成分です。紅茶を飲むと渋みや苦みを感じますが、それはカテキンがもたらす味ですね。昔はタンニンとも呼びましたが、カテキンのことを指していいます。
この渋み成分は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を刺激して腸の活動を活発にしてくれる効果があるんです。便秘や下痢などの腸の調子が悪い時には、この繊毛運動が滞っているケースが多いんですが、そこへ紅茶のカテキンが作用して腸の活動を正常化してくれます。
カテキンは腸を刺激して、繊毛運動するきっかけとなってくれるんです。
――紅茶に整腸作用があるといのは、古くから当然のこととして認められている事実なんですね。まるで薬みたいです。
そうですね。整腸作用に効く漢方薬などを思い浮かべてもらうとわかりやすいですが、苦いものが多くありませんか?実際、整腸作用のある薬には、甘いものはほとんどないんです。
その点からも、紅茶に含まれるカテキンのような渋み成分が整腸作用をもたらすことをご理解いただけると思います。
紅茶はお茶の中でも、この渋み成分がとても多く含まれているんです。砂糖を入れて中和して飲みたくなるくらいですから。だから、腸活にはどのお茶よりも紅茶がいいというわけなんですね。
――紅茶はどんな時に飲むといいのでしょうか。
整腸作用のためならいつ飲んでも構いません。時を選ばず、水を飲むように飲んでください。
さきほど、漢方薬の渋みや苦味の話をしましたが、紅茶を苦く、濃く入れる必要もないですよ。ペットボトルの紅茶でも整腸作用があるので利用してみてください。水の代わりに飲むようにすれば、それだけで便秘や下痢などの不調にいい影響があります。
もし、お酒を飲まれる方なら、お酒を飲んだ後に1杯、紅茶を飲んでほしいですね。アルコールはさまざまな機能麻痺を引き起こすので、内臓が弱ってしまうんですが、そこへ、紅茶がいい影響を及ぼしてくれます。
アルコールを摂取した後は水分を溜め込んで身体も冷えやすいので、紅茶の利尿作用で、まずは体内の余分な水分を排出する必要があります。身体が冷えると身体の機能が落ちますから、まずは身体の機能を戻すようにするんです。
――お酒を飲んだ後に下痢になるという方も多いですが、紅茶を飲めば整腸作用も得られるので、一石二鳥ですね。やはり、腸活のためには温かい紅茶がいいのでしょうか。
基本的に氷が入ったものは身体にいい影響はありませんね。氷の入ったものを飲む文化は、ごく最近なものですから。なので、健康のためにはできれば常温か温かい紅茶を飲んで欲しいと思います。
ただ、夏などの暑い時期には温かいものが飲みづらいこともあります。最近の日本の夏は熱いですから、その時には冷たい紅茶を飲んでもいいでしょう。
腸活のためには、アイスティーでも紅茶を飲まないよりは飲んだほうがいいと言っていいと思います。
「紅茶に整腸作用がある」というのは、実は紅茶の歴史から見れば当然の薬効なんですね。最近は腸活のために食物繊維を取ったり、運動をする習慣を身につけている人も多いですが、紅茶を飲む習慣を身につけてもその効果を実感できるのかも。紅茶は知れば知るほど、身体に嬉しい効果ばかりです。
文:杉浦優子
写真:たつろう
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