寒い時期になると気になるのがインフルエンザです。予防法としてはインフルエンザワクチンが主流ですが、実は紅茶でもインフルエンザの予防になるのだとか。紅茶の専門家・磯淵さんだからこそ知る、インフルエンザ予防と紅茶の関係について伺いました。
磯淵猛(いそぶち たけし)
1979年、スリランカ紅茶を中心に扱う紅茶専門店「ディンブラ」を開業。「キリン 午後の紅茶」のアドバイザーを20年以上務め、自身が生み出した“ティー&フーズ ベストペアリング”の言葉とともに、紅茶と食べ物の相性について監修。食べ合わせや文化、歴史にも精通しており、全国でセミナーを開催し、執筆活動等、幅広い分野で活躍している。
ーー冬になると心配なインフルエンザですが、紅茶を飲むと予防になるというのは本当でしょうか。
ずばり、紅茶はインフルエンザ予防に効果的です。このことは、古くは日本カテキン学会で島村忠勝先生が効果を報告しています。
インフルエンザウイルスは中国の雲南省で誕生し、そこから日本にやってきますよね。日本では毎年インフルエンザが流行しますが、なぜかインフルエンザの発生元である雲南省では、インフルエンザの大流行・パンデミックは起こっていません。
このことに気がついた島村先生は、雲南省の暮らしの中にヒントがあるのではないかと調査しました。そこでわかったのがプーアル茶の存在です。先生は雲南省の人たちが飲んでいるお茶に、インフルエンザを予防する効果があるのではないかと目星をつけたんです。
ーー具体的に、紅茶はインフルエンザに対してどんな働きかけをするのでしょうか。
紅茶には4種類のカテキン、EGCg(エピガロカテキンガレート)・EC(エピカテキン)・ECG(エピカテキンガレート)・EGC(エピガロカテキン)が含まれていますが、このカテキン類がインフルエンザ予防にいいんです。
インフルエンザウイルスの表面には、スパイクと呼ばれる突起のようなものがついています。スパイクは、“さすまた”や”フォーク”のような形を想像してもらえばわかりやすいでしょう。
スパイクはイガイガした形なので喉の粘膜にひっかかりやすく、粘膜に付着するとそこから身体の中に侵入し、インフルエンザを発症させます。紅茶には、このスパイクが喉の粘膜につかないように、不活性化する働きがあるんです。
どのように不活性化するかというと、スパイクを覆っている脂分の膜に紅茶のカテキン類が付着し、分解してしまうんですね。カテキンは脂分を分解する働きがあるので、スパイクを保護している脂分を分解して破壊してしまいます。
インフルエンザワクチンは、毎年の流行型に合わせたレリーフを作り、スパイクにはめ込んでインフルエンザウイルスが粘膜に付着しないようにします。でも、それでは、ワクチンに含まれるレリーフ以外のウイルスには対応できません。
紅茶の場合は、どんな型のインフルエンザウイルスにも対応できるので、どんなインフルエンザウイルスが蔓延しても予防ができるんです。
ーーカテキンといえば緑茶やウーロン茶などにも含まれていますが、なぜ紅茶がいいのでしょうか。
確かに、カテキン類は他のお茶にも含まれています。雲南省で飲まれているのもプーアル茶です。ですが、プーアル茶は匂いがキツくて飲みにくいですし、価格も高いので大衆的ではないんです。食べ物とのマッチングもよくありません。
緑茶やウーロン茶でもいいですが、高い殺菌効果と毎日でも飲めるかどうかを考えると、トータルで紅茶が一番優れているといえるでしょう。
紅茶には紅茶ポリフェノールと呼ばれるテアフラビンとテアルビジンという成分も含まれていて、これらは抗菌、抗毒、抗ウイルス作用、免疫力を高める働きに優れています。機能性から見ても、紅茶はインフルエンザ予防にふさわしいことがわかるでしょう。
ーー飲む紅茶はどんな紅茶でもいいのですか?飲み方に注意点はあるのでしょうか。
ただ、インフルエンザ予防として紅茶を飲むなら、ミルクティーだけは避けるようにしてください。牛乳のカゼインや乳脂肪が喉に皮膜を作ってしまうので、カテキンが効果的に付着してくれません。インフルエンザ予防で紅茶を飲むなら、クエン酸が入っているレモンティーが理想的、次にストレートティーですね。
飲み方のコツとしては、20〜30分に20cc程度口にするのがいいです。喉に常にカテキンを付着させておくことで、インフルエンザ予防の効果が出てきます。
密室ではインフルエンザウイルスが充満するので、電車の中、オフィス、学校、病院などでは、水筒に入れたお茶やペットボトルの紅茶を持ち歩くといいでしょう。飲む量のめやすとしては、24時間500mlのペットボトルを1本を飲みきるくらいの量が適当です。
紅茶がインフルエンザウイルスを不活性化するという情報は、2016年12月現在でも最新の情報です。こまめに紅茶を口にするだけでインフルエンザや風邪の菌から身体を守ることができるので、ぜひ、いつも紅茶を持ち歩く習慣を身に着けてみてください。茶葉はおなじみのティーバッグやペットボトルの紅茶でいいので、今すぐにでも始めることができますよ。
文:杉浦優子
写真:たつろう
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