フリーアナウンサーおよびボイス・スピーチデザイナーとして活躍中の魚住りえさんに「コミュニケーション力の高め方」を聞くインタビューの後編。
前回は「聞き方」のコツを伺いましたが、今回は「話し方」のポイントとともに、コミュニケーションにおける心構えをお話しいただきました。美容や健康にも効くとされる簡単なエクササイズもご紹介していますので、ぜひ実践してみてください。
魚住りえ(うおずみ・りえ)
フリーアナウンサー。ボイス・スピーチデザイナー。1995年日本テレビにアナウンサーとして入社。報道・バラエティ・情報番組など幅広いジャンルで活躍。2004年の独立後はフリーアナウンサーとしてだけでなく、25年にわたるアナウンスメント技術を活かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、ボイス・スピーチデザイナーとしても活動。著書に『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』『たった1分で会話が弾み、印象まで良くなる聞く力の教科書』(いずれも東洋経済新報社)など。
——インタビュー前編では「話の聞き方」について伺いましたが、「話し方」でいちばん重要なことというと?
「声」ですね。よく「声とは絵画でいうところの額縁にあたる」といわれますが、私の考えだと額縁ではちょっと物足りない。ファッションやヘアメイクなどと同等に、「ルックス」としてのインパクトがあると思っています。
声美人や声ハンサムはトクですよ。存在感が高まるし、みんなにしっかり話を聞いてもらえる。「声」の良さに周りの人が振り返ることもありますから。
——声が良くないことで、相手に聞く耳をもってもらえず、会話が盛り上がらなかったり、「私は話下手だ」と思い込んでしまったりということもあるのでしょうか?
それはあると思います。声が小さかったり滑舌が悪かったりすると、そもそも相手に言葉が伝わりません。声は口内で響くものなので、しっかり口を大きく開けて話すようにすると、それだけでよく響く聞き取りやすい声になります。
また、「声が小さい」という人は腹式呼吸を意識するといいですね。お腹をたるませたまま、口先を動かすだけの「省エネスタイル」でおしゃべりしていませんか(笑)? 背筋を伸ばしてお腹を引っ込めながら、大きく開けた口から声の玉をボウッと吐き出すようにしながら話せるといいですね。
——「口を大きく開ける」「お腹を引っ込めて腹式呼吸」などを意識すると、声以外の部分でもさまざまな効果が得られそうですね。
小顔やウエストのシェイプアップ、内蔵マッサージなどの効果もあるといわれています。せっかくですので、滑舌を良くするエクササイズなどをいくつかご紹介しますね。
①口を閉じたまま、歯茎の周りを舌で一回り舐め、逆回りでもう1回。これを1セットとし、計3セット行う。
②舌を唇の横に出し、往復10回左右に動かす。
③そのまま上下に往復10回動かす。
①「パパパパパ…」と「パ」の音を20回発声。しっかりと口を動かすこと。
②続いて「マ」「タ」「カ」「ラ」の音もそれぞれ20回ずつ発声。
③唇を軽く閉じ、ブルブルと小刻みに10秒間振動させる。
④巻き舌で10秒間声を出す。
⑤ほほの筋肉を上下にマッサージする。
①「ア」:上下の歯が見えるぐらいに、大きく丸く口を開けながら。
②「イ」:口の両端を思い切り横に引きながら。
③「ウ」:キスをするときより少し緩めた口の形で。
④「エ」:「イ」の形より少しだけ下唇を下げて。
⑤「オ」:「ア」と「ウ」の中間ぐらいの大きさで、口を丸く開けながら。
①ほほをプウッと膨らませた後、ほほの肉を内側から吸う。これを1セットとして計10セット行う。
②唇を突き出したまま、往復10回左右に動かす。
③正しい口の形で「イ」と発声した後、正しい口の形で「ウ」と発声。これを1セットとして計10セット行う。
——僭越な言い方ですが、さすがプロだけに、魚住さんは声がいいだけでなく口角もキレイにキュッと上がりますよね! やはり、毎日エクサイズをされているのですか?
はい、毎朝洗顔の後に。クリームを塗った後は皮膚も柔らかくなるので、口周りが動かしやすいですよ。お酒の飲みすぎなどで顔がむくんでいるときも、エクササイズをすれば数時間後にはスッキリした顔になります(笑)。
私のお友達の65歳のマダムはこのエクササイズを1ヵ月間毎日行ったことで、ほうれい線が薄くなり、口角が上がり、小顔になりました。ご本人も「美容整形に行こうかと思っていたけど、りえちゃんのエクササイズのほうが安上がりだったから。やって良かったわ~!」と喜んでいます(笑)。もちろん、声もすごくよく通るようになりましたね。
——本当ですか! やる気が湧いてきました(笑)。
声が良くなるものだけでなく口角を上げるエクササイズをご紹介したのは、見た目の印象も良くなるからです。会話をしている間、ずっと笑顔でいるのは難しいですよね。でも、口角を上げるだけで、大げさにならずに穏やかで温かい表情を演出できるんです。それによって、お互いリラックスできますしね。
——なるほど。では最後に、魚住さん自身が日常生活のコミュニケーションで気を付けていることを教えてください。
コミュニケーションは「おもてなし」です。相手を気遣い、相手を立てながら会話を進めることが大事。そのために気を付けるべき細かな技術を挙げるとキリがないですが、いちばん大事なことは相手への尊敬の念をもって話を聞くことでしょうか。その人と会って話ができることに感謝しながら、ね。そして、そういった根本的な気持ちや姿勢は、必ず相手にも伝わるものだと思っています。
撮影・ジェニー鈴木
文・細井秀美
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