こんにちは、理学療法士の今井俊太です。いよいよ寒くなってまいりましたね。個人的にはあまり好きではない、冬の季節がやってまいりました。この季節に気をつけたいのは「風邪(上気道感染症:かぜ症候群)」ですね。
乾燥した季節になると特に「風邪」を引きやすくなると言われています。そういえば、「風邪」を治す薬がまだ開発されていないことはご存知でしょうか?よく、「風邪を治す薬が開発されればノーベル賞ものだ」なんて言われることがありますが、そもそも「風邪」がなんなのかわかっていません。
もっと言えば、よくわからないのに症状が出ている場合に「風邪」という診断がくだることが多いようです。豆知識ですが、ウイルスと細菌は、そもそも別物という理解はできていますでしょうか?
細菌は、生物であって、それ自体が増殖するものを指しています。一方、ウイルスは生物なのかよくわからないものなのです。単体で増殖するのではなく、ウイルス情報、設計図をもった宇宙船が、人間の細胞に着陸して、細胞に設計図を打ち込み、それがウイルスとなるのです。ちなみに風邪はウイルスであると言われています。
だからこそこの時期には、特に運動を通して、免疫力を高めようと多くの方が運動をすることでしょう。しかし、実は運動のせいで免疫力を下げ、逆に風邪を引きやすくなる体になっているかもしれません。
これまで一般的には、あらゆる病気の予防として「運動」がピックアップされてきました。風邪の予防はもちろん、糖尿病やがんなどのリスクを軽減するとまで言われています。しかし、実は運動のしすぎで逆に免疫力が低下することがわかっています。
鈴木教授(参考文献:1)によれば、運動直後には免疫力(NK細胞:ナチュラルキラー細胞)が高まることがわかっています。NK細胞では、短時間・高強度の運動直後から約6倍も増殖するようです。しかし、その後は運動前よりも減少することがわかっています。
2時間半のマラソンでは、直後には微増し、その後は半分以下まで減少するようです。これらはあくまでも、運動の強度によって変動します。
実は研究によって、過度なトレーニングを行うスポーツ選手の方が風邪を引くリスクが3倍高いことがわかっています。
免疫機能を司る免疫グロブリンの値をレスリングの選手で計測した場合、免疫グロブリンの値が低下するとともに、体内ウイルスの増加がみられ、免疫グロブリンとの相関を示したと言われています。
日頃、ウェイトトレーニングを行う一般の方々も、以下の基準を目安に正しい運動量で、風邪を予防しながら健康予防を行いましょう。
健康関連書籍などでは、よく「適度な運動」と表記されていることがあります。一体適度な運動とはなんでしょうか?これまでお話ししました、免疫力の低下を起こす運動強度は主に、長時間の運動と高負荷(ウェイトトレーニング)におけるデータです。
現在わかっている適切な運動強度は、20-60分程度の有酸素運動で、軽く汗を流し息が切れない程度の運動を推奨しています。それよりも、長い時間の運動ではかえって、免疫力が低下し、風邪を引きやすい体を作ってしまっていることでしょう。
ウェイトトレーニングにおいては、週2〜3日程度にとどめ、1回のトレーニングから2,3日は間を置くよう推奨されています。
運動習慣に加え、適度な運動強度を理解し、健康的かつ強い体を作ることを意識していきましょう。
<参考文献>
1) 鈴木克彦.好中球と炎症性サイトカイン.新運動生理学(上巻).真興交易医書出版部.東京.2001:350-363.
2) 鈴木克彦.運動と免疫.日本補完代替医療学会誌.第1巻.第1号.2004年2月:31-40
3) 秋本崇之,扇原淳.疫学からみたエビデンス:特集/運動は免疫能を高めるか? 臨床スポーツ医学.2002;19:1283-1287.
文:リズムアンバサダー 今井俊太
写真提供:今井俊太