こんにちは、理学療法士の今井俊太です。
みなさん、ご無沙汰しております。毎日毎日暑い日が続いておりますね。日本はすでに南国の仲間入りでもしたかのような、この夏。寝苦しい毎日を送っている方々も少なくないことだと思います。
さて、みなさんのその寝苦しさは一体どんな問題からくるものでしょうか?夏の暑さでしょうか。その他、睡眠を妨げる問題として理学療法士が相談を受ける割と多い問題が「足のつり」です。別名、こむら返りという、ある意味ではプロレス技のような呼び名がついております。
足がつると“プロレス技”をかけられているような感覚になり、せっかくの睡眠が妨げられるという経験をお持ちの方も多いことだと思います。そこで今回は、こむら返りを予防するためのストレッチ、名付けて“こむら返り返し”をお伝えしていこうと思います。
それでは、ズバリ「なぜ足がつるのか?」という疑問にお答えしたいと思います。
実は、現代の医学を持ってしても未だ原因は“不明”となっております。ですが、いくつかの仮説が現在言われています。
1,電解質(水に溶けると電気を通す物質で、体のあらゆる部分のバランスを保つために必要なもの)の不均衡による問題(Monderer et al 2010)。
2,投薬による問題(Butler et al 2002、Kanaan and Sawaya 、2001、Monderer et al 2010)。
3,不十分なストレッチによる問題(Monderer et al 2010、Sontag and Wanner、1988)が指摘されています。
当然、病気(椎間板ヘルニア、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病)を抱えていると、症状の1つとしてこむら返りが起こることもありますので、あまりにも酷い場合は病院への受診も頭に入れておいて欲しいところです。
この問題の追及は、いくつか研究されています。一番古いもので1979年Daniellらの研究によって、“ストレッチ練習が夜間脚のけいれんの発生を防ぐのに有効である”ことがわかりました。
最近の研究でも、55歳以上の男女80人(投薬なし、週に一回は睡眠中に足のつりを経験した人を選出)に対して、ランダムにももの裏、ふくらはぎのストレッチ(3種類)を6週間してもらって、その後の足のつり状況を、報告してもらったところ、有意な減少がみられたという。 (*1)
一方で、批判的な研究も当然あります。ただし、効果のないという論文は主に、薬が処方されている状況にあったので、病気がある場合には効果が保証されていない様子です。これをご覧の方で、特別病気がない方は試してみる価値はあります。
また、今回ご紹介した研究は6週間毎日ストレッチを行なっていますが、ストレッチの効果としては、一週間の3日30秒を3セット以上行う( *2 )ことで、毎日行ったのと同じくらいの効果があるとされていますので、今回お伝えする2種類のストレッチも毎日ではなく、週3を目安に行ってみると良いでしょう。
では本題です。今回は小難しい話をしてしまったので、ストレッチはシンプルに伝えます。これまでの話が難しかった方向けに、要約すると「足がつる原因は、なんだかよくわかんないけど、色々な問題がある。それに対して、寝る前にストレッチをすると、予防になるよ」という話です。今回ストレッチする筋肉は、ももの裏とふくらはぎを一緒に伸ばすということです。
1,片足を前に伸ばし、つま先を天井に向けます。
2,鳩尾を丸めながら、ゆっくりと体を前に倒します。
3,もも裏、ふくらはぎが気持ちよく伸びるところでストップ。*呼吸は止めないように。
4,これを片足ずつ、ゆっくり行いましょう。
* 30秒伸ばして、戻すを3回繰り返しましょう。両足合わせて、3分で終わります。
1,写真では両足になっていますが、片足からでも大丈夫です。
2,できれば、手で足の裏を触り、つま先も一緒に伸ばしたいのですが、難しければ、足の裏にタオルを引っ掛けます。
3,これも先ほどと一緒で、もも裏、ふくらはぎが気持ちよく伸びるところでストップ。*呼吸は止めないように。
4,これを片足ずつ、ゆっくり行いましょう。
* 30秒伸ばして、戻すを3回繰り返しましょう。両足合わせて、3分で終わります。
一見、2つのストレッチは同じような方法ですが、伸びでいる筋肉の場所が違います。最初の方法では、もも裏でも膝に近いところが、後者ではもも裏でもお尻に近いところがストレッチしやすい方法となります。必ず、両方のストレッチを行うようにしてくださいね。
それでは、睡眠前に2つのストレッチでこむら返りを撲滅しましょう!
参考文献:
* 1https://www.journalofphysiotherapy.com/article/S1836-9553(12)70068-1/fulltext
* 2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19826305
・ Monderer, R.S., Wu, W.P., and Thorpy, M.J.Nocturnal leg cramps.Current Neurology and Neuroscience Reports. 2010; 10: 53–59
・ Kanaan, N. and Sawaya, R.Nocturnal leg cramps: Clinically mysterious and painful–but manageable.Geriatrics. 2001; 56: 39–42
・ Stewart, R.B., Moore, M.T., and Marks, R.G.Nocturnal leg cramps in an ambulatory elderly population: An evaluation of risk factors.Journal of Geriatric Drug Therapy. 1993; 7: 23–46
・ Daniell, H.W.Simple cure for nocturnal leg cramps.New England Journal of Medicine. 1979; 301: 216
・ http://bjgp.org/content/55/512/186.long
・ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14655916
文:リズムアンバサダー 今井俊太
写真提供:今井俊太
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