重度の食物アレルギーであったわたしは、外食することはほとんどありませんでした。
なぜなら、外食時はコンタミの危険性があるからです。
「コンタミ」とは「コンタミネーション」の略語で、「混入」を意味します。
食品を生産する際に、原材料としては使っていないものの、アレルゲンとなり得る特定原材料などが、意図せず混入することを指します。
例えば、飲食店へ行った際、メニューそのものにはアレルゲン物質が入っていなくても、他のメニューにアレルゲン物質が入っていると、細かい過程(調理する過程で同じフライパンを使ったり、隣で調理していたり、また食器を洗う際のスポンジが同じなど)の中で、アレルゲン物資が混入する可能性が非常に高く、それによってアレルギー反応が起きてしまうことがあるのです。
そういう事情があるので、家では母や家族が「真奈ちゃん用」といって、家族とは別のメニューを毎日作ってくれていました。今思えば、「大人用」「真奈ちゃん用」と分けてくれていたことが、とても良い影響を与えてくれたと思っています。
なぜなら、その言葉によって自然と「自分は普通の人と違うメニューなんだ」ということを認識できていたからです。
最近では、アレルゲン物質を使わずにオムライス風や卵焼き風など、視覚的に通常のメニューと似せたものを作る方も多く、「凄いなぁ〜」「どうやって作るんだろう」と感動します。
しかし、食物アレルギーの当事者がまだ幼く、自分でメニューを選ぶことさえできない時に、自分は他の人と同じメニューを食べられないんだ、という認識を持てないまま育ってしまうのは危険ではないかな…と不安に感じることあります。
もしそれで親の目が行き届かない場面で、知らずにアレルゲンが含まれたメニューを食べてしまったら、死に至るケースもあるのだと思うと、とても難しい問題だと思っています。
わたしは公園やアスレチックなどに出かけましたが、当時はどこへ出かけるにも必ず手作りのお弁当を持参していたため、特に気になる出来事は起きませんでした。
そんなある時、わたしが幼稚園に入園する前のことですが、外食の大変さを目の当たりにする出来事が起こりました。
今でこそ、食物アレルギーに対する対応がとても素晴らしく、どこよりも安心して行けるのではないかと思う、とあるテーマパークでのことです。
初めて、そこへ行った際の食事の時間。家族がそれぞれのメニューをオーダーしてから、母が店員さんに「この子は食物アレルギーがあって、お店のメニューが食べられないので、持参してきたお弁当を食べても良いですか?」と聞いたところ、スタッフの方はこう答えたのだそうです。
「持ち込みは困りますので、いったん外へ出て食事していただいてから再入場してください」と…
このことがあってからは、早めの夕食を済ませて夜からの時間帯でしか行かなくなりました。
やはり当時は食物アレルギー自体の認知度が低く、そういったお子さんも少なかったため、あらゆる場所であらゆる人に理解してもらうというのは、なかなか困難だったのかなと思います。
文・写真提供:リズムアンバサダー 細川真奈