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ベトナム無償眼科医師・服部匡志「神の手を持つといわれる医師になるまで」

ベトナム無償眼科医師・服部匡志「神の手を持つといわれる医師になるまで」

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ベトナム無償眼科医師・服部匡志「神の手を持つといわれる医師になるまで」

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こんにちは。リズム編集部です。

「神の手を持つ男」「ベトナムの赤ひげ先生」と呼ばれ、日本各地で手術をして得た報酬を、ベトナムの患者さんに無償で手術を行うために投じている、眼科医・服部先生のインタビュー記事の中編です。

連載1回目では、医師になることを決意したきっかけ、恩師との出会い、名医と呼ばれるようになるまでの経緯などをお話ししていただきました。今回は、そんなようやく手にした恵まれた境遇を捨てて、ベトナムでの医療活動に従事する姿に迫ってみたいと思います。

最初は3ヶ月だけのつもりだったが…

わたしは既に14年間もずっとこの活動を続けているのですが、まさかこんなに継続的に関わるとは思ってもみませんでした。最初は3ヶ月だけのつもりだったんです。人生の中で3ヶ月くらいなら、社会奉仕に捧げたって構わないだろうという気持ちでした。もともと自分のキャリアは4浪から始まってますし、3ヶ月くらい脇道にそれたって、なんてことないと。

—— 人よりも遠回りをしたからこそ、周りを見渡せる余裕があったのかもしれませんね。

そういうことかもしれませんね。まぁそれで、思い切って仕事を辞めてベトナムに渡ってみたのですが、日本とのあまりの違いに本当にショックを受けてしまいました。こんなところでやっているのかと。

片目は失明しているのが当たり前

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どれだけ手術をしても患者はたくさん待っていて、しかも多くの患者さんは、片目を失明しているのが普通で、もう片方の目も失明しかけてようやく病院に来るというありさまでした。

—— 既に片目を失明しているのに病院に来ていなかったんですか?

お金がないからという理由で、本当に両目が失明しそうになるまで病院に来ないんです。そもそも当時は網膜の手術ができる眼科病院が国内に2箇所しかなく、先生も2人しかいないという状況でした。日本では治るような症状なのに、ベトナムでは失明している人があまりにも多くて、本当にショックでした。

ある日、わたしの手術の待機リストに入っていた少年が、当日になっても来なくて、その理由をスタッフに聞くと「お金が払えないから帰ってしまった」というんです。それを聞いてとても後悔しました。

今手術を受けないと、少年はその後一生目が見えなくなってしまうのに、お金がないからという理由で帰ってしまうなんて。将来ある身なのに、3万円くらいの手術代ならわたしが肩代わりしてあげたのに、と思ったんです。それからお金が払えない患者さんに対しては、わたしが費用を肩代わりすることにしたんです。

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—— 服部先生が患者の代わりに病院にお金を払うということですか?

そうです。ベトナムの病院は事前にお金を支払わないと、手術が受けられないシステムなんです。でも一刻を争う病気には、お金が払えないからとは言ってられないんですよ。病気は待ってくれないですから。それで一生目が見えなくなったら、ますます貧しい生活の負のスパイラルにはまってしまうわけです。だったら、とりあえずわたしが払ってでも手術してあげたほうがいいじゃないですか。

—— そう思っていても実際に実行できる人はなかなかいないと思うので、本当に凄いことだと思います。

手術には毎回最善を尽くしていたのですが、医療機器が先進国のレベルには到底及ばないので、残念ながら治してあげられない患者さんもいました。そこで私財を投じて日本なみの医療機器を購入することにしたんです。

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断られて涙を流して帰ってきた

—— ご自分で医療機器まで購入したんですか?

そうです。わたしが病院に勤務しているときには、「先生この器具を使っていただけませんか?」とよく営業されたんですよ。それでお願いしてみたら、病院を辞めて肩書のないわたしのことは全く相手にしてもらえなかった。

あんなに熱心に売り込んできたのに、地位がなくなったら手のひらを返すように冷たくあしらわれたんです。政府機関にもお願いしに行ったけれど、個人には支援できないと言われ…悔しくて泣きながら帰ってきたものです。それで自分で購入することにしたんです。

日本に連れてきて手術をすると100万円以上かかりますが、現地でわたしがやれば無償で手術を行えますから、多くの人を助けられます。実際に多くの患者さんの手術をしていったら、3ヶ月では短すぎました。だから再就職先にお断りして、ベトナムで手術を続けることに決めたのです。

常に感謝の気持ちを持つ

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—— 奥様とはそれで大喧嘩を…

それはそうですよね。無職になるのも3ヶ月という約束だったのに、もっと続けたいと言い始めて、さらに一台で何百万円もする医療機器をはじめ、マンション購入のために貯めておいた貯金などを、全てベトナムにつぎ込むと言い出したんですから。

—— 今でこそ、先生は大変有名になられて支援者もいるわけですが、その時点では本当に無謀なことだと思われても仕方がなかったのかもしれませんね。

大喧嘩でしたね(笑)。3日間ご飯を作ってくれず、口もきいてもらえませんでした(笑)。3日後「それで多くの人が助かるのならどうぞ」と許してもらってからは、彼女に対して常に感謝の気持ちを持って接しています。感謝の気持ちがあれば怒られることもありません。

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写真:服部がリーダーとして率いる、現地の治療APBAのチーム

最終回に続く

最終回となる連載3回目では、日本とベトナムの往復生活が思うようにうまくいかず、日本で報酬を得ることにも苦労をしたことなど、今後の展望とあわせてご紹介します。

クラウドファンディングサイトREADYFORで、「ベトナム無償治療プロジェクト」を実施。目標金額を大きく上回る支援金額を獲得する。

文:リズム編集部
写真提供:服部匡志・長岡洋幸

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