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整骨院を経営する傍ら「からだリフォームマイスター」として治療を含めたコンサルティングやセルフケアについて指導する講演活動なども行っている萩原健史さん。身体のバランスが崩れてしまうのは、その扱い方が正しくないからだと言う萩原さんに、健康な身体を取り戻すためのアドバイスを伺っていきましたが、今回からは、実践編として具体的に身体を整えるために効果的なストレッチ方法をご紹介いただきます。
(からだリフォームマイスター・萩原健史 〜身体を整えるセルフケア〜 Vol.5【実践編2】『効率よく身体を動かすための動的ストレッチ』より続く)
実践編最終回となる今回は、オフィスで座ったままの状態でできるストレッチを紹介したいと思います。ついつい姿勢が悪くなりやすく、身体が歪んでしまう原因として主なものを挙げるとすれば、長時間の座ったままのデスクワークでしょう。長時間座りっぱなしという人は、仕事の合間、合間にリセットすることがとても大事。気づいたときに気軽にストレッチする習慣を付けるようにするといいと思います。
これから紹介する3つのストレッチは、オフィスワークの合間にやるようにしてください。短い時間でかまいませんので、こまめにストレッチをするようにすると、回数が多ければ多いほど、身体をリセットできます。回数が多いほど、身体を正しい位置に戻しやすくなるので、そこを意識して実践してみるといいでしょう。
また、今回紹介するストレッチでは、背骨と横隔膜の2つが大きなポイントになります。長時間のオフィスワークをする人は身体が丸まった状態になりがちで、呼吸がかなり浅くなってしまいます。深い呼吸を意識することによって、自律神経を整えたり、身体全体のバランスを整えます。シッカリと身体をストレッチで伸ばし、横隔膜を開くように意識してみてください。
誰もが呼吸は大事だということは何となく知っていると思いますが、姿勢が悪い状態でいると、どうしても呼吸が浅くなってしまいます。無意識のうちに満足な呼吸ができない、あるいはしにくい状態になってしまっている人がほとんどだと思います。呼吸がしやすい状態を意識しながらゆっくりストレッチするようにしましょう。
もうひとつ、背骨に関してですが、猫背になっていると背骨に悪影響があります。背骨には脳から繋がっている神経が通っています。脳からの指令を常に送っているのですが、背骨が歪んでいたり詰まっていたりすると、神経伝達の繋がりが悪くなります。その状態を改善するためにも、しっかりストレッチをして整えることも大事なポイントになることを覚えておいてください。
最初に紹介するのは、身体の大黒柱である背骨を全体的に伸ばしていくストレッチ。大黒柱ストレッチです。首から腰までの背骨全体をシッカリ伸ばすイメージで実践してみてください。
1:まずは、両手を頭の後ろに回して、脇を締めてください。ここで重要なのは、3つのステップです。最初に、脇を締めたら、頭を下げるようにします。
2:ここまでできたら、次は斜めの動きでストレッチをします。元の姿勢に戻ってから、今度は斜め45度に上半身を動かします。ここからは先ほどと同じ動きをします。首を倒してから、身体を丸めるようにします。そして、首を押し返す。この3ステップです。
押し返すという感覚を補足しますと、手で軽く押さえている頭と首を押し返す感覚です。頭と首で手を押し返す。そうすると、連動するように押し返している筋肉が繋がり、背骨全体をストレッチできます。連動して身体を整えながら、強く押していくようにするのがコツです。
次に紹介するのは、ヴィーナスストレッチです。脇の筋肉を伸ばすためのストレッチなのですが、そのポーズが何となくヴィーナスのようなイメージなので、名付けました。
無駄な力を使って捻るといよりも、シッカリと肘を天井に向かってまっすく上に向けて、視線を肘に向けてください。それだけで、うまく全体のラインが伸びてくるはずです。2つのストレッチが連動して、より効果的なものになります。
最後に紹介するのは、デコルテストレッチです。特に女性にとって、首から胸元にかけての部分であるデコルテは、胸元が開いた服を着こなすために美しく保ちたい部分だと思います。この部分は心臓から腕に繋がる血管と、脳から繋がる血管があるので、血液の流れを良くするためには、このあたりの血管を開くようにすることで血液の流れを良くし、脳も活性化する効果があるストレッチです。
1:イスに深めに座って、背もたれに寄りかかるようにします。腕を後ろに回して組んでから、後ろにグーッと倒れるようにして背中を反らします。これだけです。
ポイントは、腕の重みと頭の重みで後ろに反らして、胸周りの筋肉を伸ばしていくようにすること。腕の力でグッと伸ばす必要はありません。ジワーッと腕と頭の重みで筋肉を伸ばしていくイメージです。ジワっと伸ばすと、デコルテラインの筋肉全体が伸びていきます。
心肺蘇生のときに気道確保するために顎を上に向けます。なぜそうするのかというと、最も無意識に呼吸が入りやすい状態になるからです。オフィスワークをしていると、どうしても背中が丸まって呼吸が入りにくい状態になってしまいがち。このストレッチでデコルテの部分をしっかり反らすことで呼吸が自然と入りやすい状態になります。呼吸が入りやすくなるイメージを大切にしましょう。
オフィスのチェアは後ろに反らすことができる場合が多いことでしょう。自然と重みでしなるので無理なくできると思います。倒れれば倒れるほど、肺に呼吸が入っていくので、実践してみてください。
以上の3つが、オフィスで気軽にできるストレッチです。ちょっと疲れたとか、ストレスが溜まったなあというときにやる感じでもかまいません。オススメしたいのは、30分に1回、ひとつのストレッチを1セットという感じでローテーションしていく感じです。
大事なのは、こまめにやることです。まとめてやるより、どれかひとつでもいいのでやってみる。生活の合間、合間にサンドウィッチみたいに実践して、無理なくセルフケアをしていって欲しいと思います。私がよく言うのは、“いい加減”なストレッチ。いい加減を知ることが大事なんです。極端であったり、ストイックになってやるのではなく、常に中庸な感じ。身体はいつも基本姿勢であるセンターポジションに置いて、常に“いい加減”にしておく。いい加減で身体の中心を動かすイメージでストレッチをすれば、ブレない身体になっていきます。
すべてのストレッチに言えることですが、大事なのは、身体を動かしたり使った後に“元に戻す”ということです。元に戻すことが、次の一歩に繋がるのです。身体を使ったら元に戻すということを定期的に行うことで、身体の整理整頓を常にしていくようにするといいでしょう。
また、ストレッチの基本は身体のバランスを意識することです。身体のバランスが崩れてしまうと体調も崩れ、自律神経も崩れてさらに悪化してしまいます。いかにバランスを崩さないようにするかを意識すれば、ボディラインが崩れることも自然となくなります。
正しいバランスを保った状態に身体を整えてからストレッチをすれば、横隔膜などがポンプの働きをして血液が流れやすくなります。その好循環が生まれるようにするには、やはり、バランスと順番が大事です。そこを意識していくことができれば、きっと健康な身体が今よりカンタンに手に入るようになることでしょう。
最後になりますが、ストレッチを通した身体のセルフケアは、自分で自分の身体をチェックすることです。その感覚を掴んで、感じて欲しいと思います。それは、「ストレッチをしなきゃ!」などと一生懸命になって身体の筋肉を伸ばしたり、身体を整えようと必死になることではありません。自然体で、ただ、“身体が伸びている”ことを感じるだけで十分です。繰り返しているうちに、感覚が研ぎ澄まされて、だんだん身体の中心を感じることができるようになります。そして、今以上に健康な身体を取り戻し、今以上に楽な生活ができるようになります。
これまでに紹介したストレッチを生活のなかに取り入れていくことで身体を整え、より健康な身体を手に入れてください。健康な身体になれば、生活リズムも整い、きっと今より充実した毎日を送れるようになるはずです。
取材・文:國尾一樹
撮影:たつろう
対談:平井康翔×守谷雅之 トップスイマーと指導者、それぞれが語る「自然を泳ぐこと」【特集:自然の中を泳ぐ。オープンウォータースイミングを始めよう】