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土屋智哉さん、バックカントリーで何を食べますか?【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

土屋智哉さん、バックカントリーで何を食べますか?【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

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土屋智哉さん、バックカントリーで何を食べますか?【スキー再発見――登って、歩いて、滑るスキーをしよう】

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全5回に渡ってお届けする特集企画「スキー再発見」。今回は、バックカントリーに踏み入ってスキー・ツアーをするなら突き当る「食事の問題」にフォーカスします。無雪期とは勝手の違う冬のバックカントリーでの食料計画を、日本のウルトラライト・ハイキング文化を牽引しつつ、クライミングやパックラフティング、もちろんスキーに至るまで、数多くのアウトドア・アクティビティに造詣の深いハイカーズ・デポ店主の土屋智哉さんに伺いました。

やっぱり頼りになるアルファ米

開口一番、「雪山やバックカントリーだからといって特別な食事を食べることはない」と土屋さん。

「基本的には、ハイキングでもトレイルランニングでもバックカントリーでも、山に行く以上、食事が変わることはないんです。普段からアルファ米の人もいれば、ポテトチップを砕いて持っていくという人もいる。菓子パンが腹持ちもカロリーも高くていいという人もいれば、エナジーバーやジェルのほうが小さくなっていいという人もいる。小屋のお弁当が最高って人いれば、白米炊く人も、パスタの人もいる。どれも真実だし、どれもいい。山の食事ってそれくらい幅があって良いと思うんです」

ただ、バックカントリー・ツアーの場合、無雪期よりも荷物が増えることは避けようがない。バックカントリーに必要不可欠なシャベルやゾンデ棒(雪崩などで雪に埋まってしまった人を探すためのレスキュー器具)などの安全装備のほか、防寒具やビバーク道具などのプロテクション装備、シールなどスキーのための道具も必要だ。

とはいえ、滑ることにフォーカスした場合、荷物は軽ければ軽いほどいい。なので、現状ほとんどのバックカントリー・ツアーの食事は小屋に依存しているし、もしくは毎日下山して、街で食べるのが基本スタンスになっている。

その中でテントやシェルターを持ち、山で泊まるスタイルで行くなら、やはり食料を軽くするしかない。

土屋さんが手にしているのはアルファ米「尾西の白飯」(問い合わせ/尾西食品)と、麦みそ「オーサワの鉄火みそ」(問い合わせ/オーサワジャパン

「そうなってくると、お湯を注ぐだけで食べられるアルファ米は、軽量化の観点から言ったら、やはり山の食事としてはいちばん適してますよね。そもそもアルファ米が日本の登山界で定番化したのも、ヒマラヤ遠征の登山隊が装備を軽量化するなかでクローズアップされたことがきっかけなんです。だからアルファ米をいかに使うかは、今も昔も変わらず食料の軽量化のポイントになります」

ただ、アルファ米は通常のお米に比べれば、味わいが劣ることも事実。軽量化のためとはいえ、山の食事の楽しみが損なわれると思う人もいるかもしれないが。

「その気持ちは僕もわかります。でも、戻したあとにお稲荷さんにしたりチャーハンにしたり、使い方を考えていくと面白くなってくるのかなって。個人的にはアルファ米に乾物やフリーズドライ食品などをミックスしたオリジナルレシピの通称〈袋飯〉を山ではよく食べます。豆鼓を入れて中華風にしたり、乾燥ボルチーニ茸を入れて洋風にしたり、乾燥梅肉を入れて和風にしたりと、和洋中のレシピがあって長い山行でも飽きないようにしています。最近では各社から同じような発想で作られた味付きのアルファ米が種類豊富に出ているので、そういうものを試してみるのも良いかもしれません」

夜は鍋以外は考えられない

バックカントリーでは迷うこともあるし、予期せぬトラブルでビバークを余儀なくさせられることもある。安全を確保する意味でもソロで行くよりも、パーティで行く機会が多いだろう。そうなれば、夜、テントに集まってみんなで食べたいものといえば、日本人ならひとつしかないだろう。

アルファ米は鍋にもぴったり

「平凡だけど、夜はやっぱり鍋以外考えられないですよね。調理も簡単だし、雪山では寒いせいか水分をあまり取らない人もいるけど、食事で水分をとれることもいい。夏ならちょっと凝った料理を作ろうとか思ったりもするけど、パスタなんかを作っても食べてる間にすぐ冷えちゃう。けど、鍋なら冷めにくいし、冷めても暖めやすい。シメでうどんやラーメンやアルファ米なんかを入れれば炭水化物も摂れるし、いまはトマト鍋とかカレー鍋とかチゲ鍋、鶏白湯鍋とか、鍋つゆの種類も和洋中と豊富だし、携帯性に優れた〈つゆの素〉もある。それが一個の鍋で完結するんだから、やっぱり鍋は秀逸ですよね。平凡だけど、雪山での条件面を考えるとアルファ米と鍋は外せないと思います」

確かに、雪山の夜は冷える。防寒具を着込んだテントの中は狭いし、手袋をしたままでは作業も捗らない。水も食事もうっかりするとどんどん凍ってしまうから、食事にもなるべく手間はかけたくない。そうなれば、日本人に生まれた幸せを噛みしめつつ、仲間と鍋をすするのは当然の成り行きだろう。

食料計画に調理しないで食べられるものを

かように過酷な雪山の環境下では、行動食も重要だ。実際、休憩しているとすぐに体が冷えきってしまうので、悠長にお湯を沸かして調理をする余裕はほぼないと言ってもいい。

エナジーフード「トレイルバター」シリーズ(問い合わせ/トレイルバター・ジャパン)と、「オーサワのひとくちようかん」シリーズ(問い合わせ/オーサワジャパン

「寒さや気象条件が想定と違うことは往々にしてあるので、調理をしないで食べられるものを食料計画に組み込んでおくことはとても重要です。昼食はお湯を沸かすことを前提に考えないほうが良いでしょう。山の携行食としてはパンやおにぎりが一般的ですが、おにぎりは凍ると風味が一気に落ちるので、雪山ではお勧めできません。最近の注目株は〈トレイルバター〉というナッツオイルをベースにしたエナジーフード。グラムあたりのカロリーが高くて、128gで750キロカロリーも取れるのは魅力ですね。ペースト状だから冬場も食べやすいし、単品で食べても、パンなどに塗って食べてもいい。個人的にはこの手のエナジーフードの中で唯一おいしいと感じます(笑)。あとは、ようかんや黒砂糖、かりんとうなど、日本に昔からあるお菓子もハイカロリーな行動食として非常に優れています。でも、結局は〈好きなもの、食べたいものを食べる〉のが基本ですよね(笑)」

バックカントリー向きのストーブ

前述した通り、雪山では調理に対する手間はなるべくかからない方がいい。なので、ストーブ(コンロ)も簡単に扱えるものが助かるし、極寒の状況下で性能が低下する場合もあるので、雪山の状況に強く、信頼性の高いものを選びたい。

クッカーとストーブが一体化した「ジェットボイルミニモ」(メーカー/ジェットボイル、問い合わせ/モンベル

「軽量化を考えるとアルコール・ストーブも考えられますが、着火に手間がかかるし、扱いには慣れも必要です。誰でも簡単に、テント内でもある程度安全にお湯が沸かせることを考えると、やはり〈ジェットボイル〉がお勧めです。ガスストーブは雪面に置いて使うとガス缶が冷えて、どんどんパワーがなくなってしまうのですが、〈ジェットボイル〉はクッカーとストーブが一体になった製品で、手に持ったままでもお湯を沸かせます。これはやはり革命的。そして夜に鍋をするなら、安定の良い分離式で、寒冷時にもガス缶の性能が低下しにくい液出し式があると良いですね」

また、雪山では多大な労力と燃料を使って沸かしたお湯を(雪を溶かして水を作るのもかなりの手間がかかる)冷まさないこと、また冷めて水になったとしてそれを凍らせない(普通の水筒に入れていると凍ってしまう)ことが重要だ。

「先ほども言ったように、休憩時にお湯を沸かすことはあまり現実的ではありません。それでも、冷えた際に温かいものを飲んで身体を暖めることはとても重要なので、保温ボトルは必需品。ですが、通常のものでは雪山ではすぐに冷めてしまうので、サーモスの山専用ボトル(FFX-500)など、保温力の強いものが良いですね」

立ち止まるとすぐに身体が冷え、防寒着に包まれてはなかなか身体の自由も利かず、お湯が沸くにも時間がかかり、湧いてもすぐに冷めて、氷になってしまう……。そんな思いまでして、なぜバックカントリーに行きたいのか? 

それは、それを補っても余りあるほど、雪原の世界は魅力的だからだ。雪を纏った山々の息を飲む美しさ、陽を浴びてキラキラと輝く斜面、きりりと締まった空気、そして純白のパウダースノー。一度それを味わえば、万難を排してもまた訪れたくなる雪山の世界。

土屋さんのアドバイスを参考に、綿密な食料計画を立て、よき旅を!

土屋智哉 Profile
アウトドア・ショップ「ハイカーズデポ」オーナー。シンプルな装備でスルーハイクを楽しむ「ウルトラライト・ハイキング」のムーブメントを日本に広めた第一人者。著書に「ウルトラライトハイキング」(山と渓谷社)がある。
http://hikersdepot.jp/

取材・文/三田正明 撮影/後藤秀二


■特集「スキー再発見」は全5回の連載企画です。次回は、実際にスキーを楽しむにあたって知っておきたいウォーミング・アップ&リカバリー術をご紹介します。

1. 対談:堀田貴之 x 土屋智哉 スキーで旅する、自由な喜び
2. UL Ski Hiker=野上建吾さんのバックパックの中を見に行く
3. 対談:松尾憲二郎 x 芳沢淳 山で楽しむスキー、最新事情
4. 土屋智哉さん、バックカントリーで何を食べますか?
5. スキーを楽しむためのセルフケア とっておきのウォーミング・アップ&リカバリー術

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