水を大量に飲むデトックス、ジュースクレンズ、低糖質ダイエット、スーパーフード、グルテン抜き、アルカリ性ダイエット、水素水、パレオ、酵素、ローフード……次から次へと各種ダイエットが流行しては消えていくのはこちら英語圏でも同じです。
科学的に評価の安定していないダイエットが一過性のブームになるのは今に始まったことではありませんが、インスタグラムなどのSNSの効果で最近はブームが広まるスピードが加速、若い人の栄養失調など健康被害が目立つようになり、こういった「インチキ・ダイエット(Fad Diets)」に気をつけようという声も上がり始めています。
今とくにやり玉に挙がっているのが、「クリーン・イーティング」と呼ばれるダイエットの潮流。インスタグラムの#eatcleanタグは、4500万ポストにも達しています。
もともとの考え方は、ファーストフードや加工食品が氾濫している現代人の食生活を見直して、素材からきちんと調理されているものを食べよう、もっと野菜を、できればオーガニックの食材をというものでした。
でも、それがデトックス志向(※)や、本来かなり極端な減量法である低糖質ダイエットなどとあいまいに合流して、白砂糖や穀物は身体を冷やし肌をくすませる、肉は血液を酸性にする、乳製品には発がん性物質が…といった具合になってきています。(※デトックスというコンセプトも科学的には根拠がないとされています。)
写真:インターネット上に氾濫する、あなたの体調不良は○✕のせいかも?という情報に過敏になるのは禁物。Rawpixel / PIXTA
身体にいい食事をしたくてSNSなどで情報やレシピを集めているうちに、普通の食事をしていると身体が毒素で満たされてしまう、血液が酸性になってしまう、なかなか痩せられないのも、体調不良やセルライトも毒素がたまっているからだ、きれいなものだけを食べなければ!と信じ込んでしまい、拒食症に陥るティーンや二十代が増えているのです。
正しい食事をしなければという強迫観念からの拒食症や栄養失調に至る摂食障害には、「オーソレクシア」という名前もついていて、専門医も増えてきています。
「あれは食べてはダメ」「これも口にしないほうがいい」というダイエットが増えているのは、過激な物言いやシンプルなわかりやすさがキャッチーで注目され、レシピ本やアイテムが売れるというのが大きな理由でしょう。恐怖を植えつければ物を売るのが簡単になるからです。
元モデルなどのカリスマ女性やムキムキのイケメンがキッチンで微笑む本やブログの裏には、売上を勘定しているプロデューサーや編集者、食品業者がいるわけです。アメリカでは、アルカリ性ダイエットを提唱してきた有名な「ドクター」が、医師免許を持っていなかったことも話題になりました。
写真:できるだけ多様な食材を食べることが、腸内細菌のバラエティを増やし、健康につながると考えられています。Rawpixel / PIXTA
とはいえ、健康や美しさのために食事を見直そうという基本的な方向は間違いなくいい方向です。玉石混交な情報が氾濫する中、どう見極めて実践していけばいいのでしょうか。以下6点にまとめてみました。
外食でもそれに近いものを食べる。加工食品は減らす。加工食品を選ぶときは原材料欄が短いものを。
遠くから来る食材は保存のための農薬やエネルギーコストも増えるので少なめに。
殻や皮の残ったものは食物繊維やビタミンの摂取も増えて◎。穀物の外側には農薬などが残りやすいので、オーガニックがこの意味でも吉。
たまにいただくときは、成長ホルモンや抗生物質の残留が少ないと期待できるオーガニックやフリーレンジのものを。温暖化防止など環境にも◎。
スーパーフードなども過信しない範囲で楽しむ分にはまったく問題なし。食べる野菜や穀物の種類が多いほど腸内環境もよい状態になるといわれています。
現代人が糖分をとりすぎているのは事実。GI値の低いメニューを心がけ、急激な血糖値の上下を避ける。甘いものは食べるなら食後に。
とくに、特定の食材や食品グループを食べてはいけないと強く薦める食事法には要注意。
日本の古くからの健康のための言い伝えが科学的にも正しいことがわかってきています。
どうでしょうか、どれも常識的なことかもしれません。けれど、アレルギーや既往症などがない人であれば、特定の食材をむやみに忌避するよりは、多くの食材をまんべんなく食べるほうが健康によいということは医師や科学者の間でもほぼ定説になってきています。
食事とそれに対する身体の反応は、太りやすさも含めて個人差が非常に大きいということもわかってきた昨今。誰かの言うことを鵜呑みにするのではなく、バランスよい食事をしていきたいですね!
文・写真:青木陽子
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