世界有数のダイビング天国・パラオの海を極めたダイビングガイド・遠藤学さん。大学卒業後、一度は就職するも、海中世界への憧れを捨てきれず、脱サラしてパラオへ移住。その後、パラオの実力派ダイビングサービス「DayDream」のトップダイビングガイドとして、15年にわたり活躍。
様々なダイビングエリアの開拓に貢献し、多くのダイバーから信頼される人気ガイドとして、ダイビング専門雑誌の人気ガイド投票では、常にトップ10入りするほど。そんな遠藤さんに、ダイビングの魅力やパラオの魅力などを伺いました。
遠藤学(えんどうまなぶ)
中央大学卒業後、いったん就職するも、ダイビングの世界が忘れられず、世界有数のダイビングパラダイス、パラオに移住。その後、15年に渡ってパラオの実力派ダイビングサービスとして知られる「DayDream」のトップガイドとして活躍する。現在は第一線を退き、同サービスの日本事務所にて、後進の育成にあたっている。
第4回は、パラオの魅力のひとつでもある、様々なダイビングスタイルについての話です。
──パラオの海は、やはり透明度も素晴らしいのですか?
日本近海のように川が多い地域というのは、海の透明度はそんなに高くないのですが、パラオの海は川の水の流入が少ないので、もちろん、透明度は高くなります。サイパンやグアムのように、ほとんど川のない島の場合は、透明度が50mくらい。さすがにそれには及びませんが、パラオの海の透明度は30m程度あります。
魚種の豊富さでいえば、インドネシアやフィリピンのほうが多いのですが、透明度に関してはパラオのほうが上です。そういう意味では、パラオは充分に水がキレイで、魚がものすごくいっぱいいる。
島の周りに居着いているハシナガイルカ(写真下)などもよく見られ、船での移動中に遊んでくれます。
海の透明度と魚の数のバランスの良さというのが、世界有数のダイビングスポットといわれる所以でしょうね。
それに加えて、内湾の環境と外洋の環境も充実しているので、それぞれの希望に合ったいろんなスタイルのダイビングが楽しめます。内湾で珍しい小さな魚を楽しむダイビングもできますし、外洋で大きな魚の大群を楽しむダイビングもできるのが特徴です。
外洋では、大物を見ることもできます。マンタはもちろんのこと、バラクーダやギンガメアジ、ロウニンアジなどもダイバーには人気なのですが、そういった大型の魚たちもひと通り揃っています。
バショウカジキ(写真下)は、めったに会えない魚。出会った時は、ものすごく感動します!
色鮮やかなハナゴンベ(写真下)の幼魚は、金魚みたいでかわいらしいでしょう?こんなに美しい魚も間近で見ることができるんですね。
このシマ柄の魚たちはスダレチョウチョウウオ(写真下)。産卵の時だけ、群れを成して泳ぐのが特徴です。
──他にもパラオの魅力として挙げられる特徴というのは、どういうところでしょうか?
やっぱり南の島ですから、珊瑚がキレイですよね。当たり前のことですが、潜らないと、その美しさを体感することはできません。ぜひ、潜ってその目で確かめていただきたいと思います。
浅瀬で発達するハードコーラルと呼ばれる珊瑚(写真上)から、水深の深いところに生息するソフトコーラル(写真下)という珊瑚まで、様々なサンゴを見ることができます。その景観は本当に見事です。
魚がいなくても、浅瀬の砂地を眺めているだけでも飽きません。波の動きに合わせて、太陽の光が砂地に映って、ゆらゆらと動いているんですよ。
海水の透明度が高くて、しかも白い砂地でないと、この美しさは見られないでしょう。珊瑚のある島の砂はとても白いので、さらに映えます。日本で見られるのは、沖縄くらいでしょうね。
他にも、水中から見上げる太陽というのも美しいですね。太陽がキラキラと青く光って見えるのは、何とも言えません。気泡が上がっていく光景なども、また美しい。
このように、魚だけでなく、海の中の景色を視覚的に楽しむというのも、ダイビングの大きな楽しみのひとつですよね。ただ眺めているだけでも充分な癒やしになりますし、リラックス効果があると思います。
──海の中の景色を眺めるという意味で、人気のダイビングスポットはどういうところですか?
もともと、パラオの島というのは石灰岩が積み重なってできた地層から成っています。島の隆起にともなって、島の周りに珊瑚ができる。その珊瑚が死んで石灰化した部分が、再び隆起して島になっている。
石灰岩というのは酸性の水に溶けやすく、雨水などの浸食を受けやすいので、自然が創り出した面白い地形のポイントがいくつもあります。
独特の地形を楽しめる人気スポットとして真っ先に挙げられるのは、ゲメリスエリアと呼ばれる、パラオの南西部にある「ブルーホール」というスポットでしょう。直訳すれば青い穴と、そのまんまですが(笑)、浅いところにあって潮の流れも緩やかなので、ダイビング初心者でも潜ることができます。
下の写真が、青い光が差し込んで神秘的な世界が広がるブルーホールです。自然にできた地形で、浅い棚があって、横が浸食されてえぐれた部分で海中がホールのようになっています。
そのホールの天井部分に4つの大きな穴があいているのですが、そこから差し込む日の光がとてもキレイなんです。ここまで海の青い美しさを堪能できる場所は、他にはないでしょう。
イタリアの青の洞窟は世界的に有名ですが、ああいう洞窟が完全に水中に没している状態といえばイメージしやすいかもしれないですね。海水の透明度が高く、日の光がたくさん注ぐ快晴の日に潜るのがオススメです。条件が良ければ、青い光に包まれたような感覚で、神々しささえ感じることができます。
ブルーホールには滅多に現れない“珍客”ナポレオンフィッシュの姿も、運が良ければ見られるでしょう。
パラオに行く機会があれば、ぜひ、このブルーホールで、どこまでも青い世界を体験してみて欲しいと思います。
──ブルーホール、いつか行ってみたくなりました。次回は、パラオの他の人気ダイビングスポットをご紹介いただきます。
写真・資料提供:遠藤学・越智隆治・DayDream
取材・写真:國尾一樹