世界有数のダイビング天国・パラオの海を極めたダイビングガイド・遠藤学さん。大学卒業後、一度は就職するも、海中世界への憧れを捨てきれず、脱サラしてパラオへ移住。その後、パラオの実力派ダイビングサービス「DayDream」のトップダイビングガイドとして、15年にわたり活躍。
様々なダイビングエリアの開拓に貢献し、多くのダイバーから信頼される人気ガイドとして、ダイビング専門雑誌の人気ガイド投票では常にトップ10入りするほど。そんな遠藤さんに、ダイビングの魅力やパラオの魅力などを伺いました。
遠藤学(えんどうまなぶ)
中央大学卒業後、いったん就職するも、ダイビングの世界が忘れられず、世界有数のダイビングパラダイス、パラオに移住。その後、15年に渡ってパラオの実力派ダイビングサービスとして知られる「DayDream」のトップガイドとして活躍する。現在は第一線を退き、同サービスの日本事務所にて、後進の育成にあたっている。
第3回は、パラオの魅力についてです。
──パラオは世界屈指のダイビングポイント、といわれているようですが、世界中のダイバーを惹きつける、その魅力は何でしょうか?
パラオ共和国というのは、ちょうどフィリピンとグアムの中間くらいに位置する、小さな島国です。島の数は200程度あるのですが、実際に人が住んでいるのは10島くらい。総面積で日本と比較すると、淡路島くらいの大きさしかありません。
そんな狭い国土なのに、魚種数は1400種類とかなり豊富なんです。もちろん、パラオより広い国土を持ち、亜熱帯から亜寒帯まで豊富な環境が揃っている日本のほうが、魚種は4200種類と圧倒的に多いのですが、他のミクロネシアの島だと、だいたい800種類程度と、パラオの半数くらいです。
パラオのように、太平洋のまっただ中にポツンとある島のことを「海洋島」といいますが、その海洋島で魚種が1400種類というのは、他に例がないと言ってもいいほど、魚種が豊富だということです。
なぜかというと、内湾の環境です。世界遺産に登録されている「ロックアイランド」と呼ばれるあたりは、ポコポコとマッシュルーム型の小さい島がたくさんあって、その島と島の間は内海になっています。内海は潮の流れが穏やかなので、稚魚が育つのに絶好の環境となっているわけです。
写真:上空から見たロックアイランド
さらに、アマモという海藻が生い茂っていて、河川から流れる淡水と海水が混じり合う汽水エリアがあり、水辺にはマングローブもたくさんあります。マングローブは“魚のゆりかご”と呼ばれるほど、小さい魚にとって暮らしやすい環境を整えてくれる樹木なので、繁殖にも好都合です。
写真:マングローブ域は、小さな魚たちの隠れ家
写真:島の隆起で外海と隔離された湖で、独自の進化を遂げたタコクラゲの仲間
魚たちが成長した後は、潮通しの良い外洋があるので、魚の子どもたちがうまく育つ環境が揃っている。だからこそ、魚種が豊富なだけでなく、魚の数自体がものすごく多い。魚の大きな群れにあちこちで出会えることも、ダイビング人気ポイントになっている理由のひとつでしょう。
写真:ナカモトイロワケハゼ。外洋と内湾の中間に住む。2cmほどの小魚で、ダイバーに人気
写真:発光器のあるウキエソの仲間。日中は深海、夜は水面近くに。周辺がすぐ深海のパラオだからこそ見られる魚
──パラオに多くのダイバーが訪れる時期というのはいつですか?
実は、パラオでのダイビングの一番のハイシーズンというのは、日本の真冬なんですよ。パラオは乾期と雨期に分かれていて、だいたい乾期が10月半ばから6月半ばくらいまで。6月後半から10月前半くらいまでの夏を挟んだ時期は、雨期ということになります。
体験ダイビングをしてみたいというツアー観光客の方たちというのは、夏場に多くやって来ますが、本格的にダイビングを楽しんでいる人たちは、乾期を目指してやって来ます。
冬場でも水温はほとんど変わらず、28℃~30℃あります。気温も年間を通してほぼ変わらず、平均気温は27℃くらい。常夏の島ですが、夏は日本より涼しくて過ごしやすいといっていいでしょう。
──さすが常夏の島。パラオでのダイビングは、日本の冬がハイシーズンだというのは驚きでした。次回<<世界一のダイビングスポット・パラオの魅力Vol.4>>はでは、さらにパラオの魅力についてお話を伺います。
写真・資料提供:遠藤学・越智隆治・DayDream
取材・文:國尾一樹