虫歯というと、歯の上部が真っ黒になるイメージがありますよね。確かに、実際、虫歯になると、虫歯菌によって侵された部分が黒くなることがあります。でも、中には白いままの虫歯もあるようです。この白い虫歯と黒い虫歯とは、どのような違いがあるのでしょうか。
虫歯になると、虫歯菌のミュータンス菌などによって歯が削られますが、進行すると削られた部分が黒くなります。しかし、まだ初期の段階の虫歯では、黒くならないのが一般的です。
そこで、虫歯の進行度に応じて、その色の変化について順を追ってみていきましょう!
まだ虫歯ではありませんが、“要観察歯”として扱われる「CO(シー・オー)」。このときは、まだ黒い部分はとくに見当たりません。眼には見えないところで、ミネラルが歯の表面のエナメル質の内部から溶け出している段階です。
この「CO」の段階が進むとエナメル質がどんどん溶けていき、虫歯になってしまいます。
このことから、見た目は白い歯でも、「もうすぐ虫歯になる」歯も存在するということがわかります。「白くてきれいな歯」と思っていても、もしかしたら、「もうじき虫歯になる白い歯」の可能性もあるのです。そう考えると、すべての白い歯を疑いたくなってしまいますね。
「CO」から進行すると、まず歯の表面のエナメル質が侵され始めます。これが初期の虫歯「C1」の状態です。
「C1」になると、歯に黒い斑点がつく場合もあります。虫歯が黒くなるのは、「歯質」と呼ばれる歯を構成するエナメル質や象牙質、セメント質などの部分が崩壊したところに、食べ物や飲み物の色が着色するためです。
このC1時点なら、歯科医院で治療を受ける際にも、ちょっと削るだけで済みます。黒いぽつぽつに気づいたら、早めに受診するようにしましょう。
「C2」になると、歯の冠の上部が黒くなります。「C3」ではさらに深いところまで黒くなることがあります。「C3」になると、もはや歯が欠けてしまい、一部がなくなっている状態です。さらに「C4」になると歯の実体がなくなっていることが多いので、歯が黒いどころではありません。
このように、C0からC4にかけて、虫歯の進行によって黒さが増していきます。しかし、注意しなければならないのは、黒さは虫歯の目安にはならないということです。
黒さは「色素の沈着」によるものです。つまり、「歯が黒い=虫歯が進行している」ということではありません。黒さで判断してしまうと、進行しても黒くならない虫歯もあるため、虫歯の進行を見過ごしてしまいます。よく注意しましょう。
これまで、虫歯で歯が黒くなることがあることをご紹介してきましたが、実は黒くなるのは大人の虫歯だけで、生後6か月頃から生えてくる「乳歯」の虫歯は白いといわれています。その理由は、乳歯は歯がやわらかいため、虫歯の進行が速いからです。
このことは、乳歯が虫歯になっているのを見過ごすリスクがあるということ。
まだ乳歯が生えている子どもの場合、すでに進行している虫歯も白いのです。お子さんがいる方は、「黒くないから虫歯じゃない」と思わずに、子どもが歯を痛がる・しみると言うようであれば、きちんと歯の検査を受けたほうがいいでしょう。
ところで、普段から、歯の色で虫歯を判断しようとしている人には、ぜひ虫歯だけでなく、他にもさまざまな歯の健康リスクをチェックしておくのをおすすめします。
そこで歯のセルフチェックで見ておきたい項目をご紹介します。
・一度治療が済んだ歯の様子はどうか。きちんと磨けていそうか。
・歯が茶色い部分はないか。
・歯にネバネバしたものがついていないか。
・歯と歯の間にかたくて白いものが詰まっていないか
・歯と歯肉の間の溝が広がりすぎているところがないか
・歯肉が赤くはれているところはないか
治療済みのところは、詰め物をするなどして磨き残しができやすいため、虫歯リスクが高いです。ぜひ一度注意してみてみましょう。また、歯に茶色い部分がある場合、虫歯の可能性があります。ネバネバしたものは歯垢です。白くて硬いのであれば、歯石かもしれません。
歯と歯肉の間の溝は、歯周ポケットと呼ばれるものです。深くなっていると歯周病が進行している可能性があります。歯肉が赤くはれているのは、歯肉炎です。これも歯周病が進行している可能性がありますので、よく注意しましょう。
もしこれらの思い当たる数が多い場合には、できるだけ早めに歯科医院へ行ったほうがいいでしょう。
今回は、黒い歯が必ずしも虫歯ではないことが分かりました。そこで、ただ見た目で判断するよりも、日頃のケアを徹底することも肝心です。日頃の予防策をみていきましょう。
あなたは、普段の歯磨きに歯ブラシと電動歯ブラシどちらを使っていますか?どちらも歯垢を取るために必要ですが、どちらがいいとは決めがたいところがあります。
というのも、どちらも磨き方によって歯垢除去の結果が変わってくるからです。最近では、電動歯ブラシのほうが歯垢除去率が高いということも実証されていますが、それはあくまで正しい使い方をした場合です。
正しい使い方をするのはもちろん、日によって磨き残しが出ることもありますので、どちらも併用し、さらにデンタルフロスを使うのがおすすめです。
電動歯ブラシは、意外と正しく使えていない人が多いといわれています。それ自体が振動するため、自分でゴシゴシ磨いてはいけません。歯に数秒間当てて、静止しましょう。そしてそのまま横にスライドさせていきます。
また、最近では、オムロンの電動歯ブラシに奥歯磨きにぴったりの、11度にヘッドが傾斜しているものも登場しました。また、奥歯磨き用に、少しコンパクトになった替えブラシも登場しています。奥の奥まで磨ける、電動歯ブラシ選びも大事だと分かります。
虫歯は必ずしも黒であるとは限らないことが分かりました。白くても、もうすぐ虫歯になる歯もありますし、乳歯の場合、すでに虫歯が進行していることもあります。
色などの見た目だけで判断して安心せず、気になる歯があればできるだけ早く歯科医に診てもらい、虫歯かどうかを正確に診断してもらいましょう。また、歯科医院では歯のクリーニングも行ってくれるので、ぜひ利用してみてください。
そして、日頃からの虫歯予防にも精を出して、いつまでも健康な歯をキープしたいですね。
文:リズム編集部
監修:高島美祐 (神谷町デンタルクリニック)
高島 美祐(たかしま・みゆう)
早く確実に治したい方や、何度も再発してなかなか治らなかった方のために、マイクロスコープとCADを使った短期集中治療に特化した歯科医院「神谷町デンタルクリニック」を東京都港区虎ノ門にて開院。歯の病気が早産や生活習慣病、認知症につながることや、かみ合わせの不良により顔のバランスが乱れてしまうことなどを啓蒙している。超高齢化社会において、自分の歯をできるだけ長く残すための治療を実践しており、国内外からの来院がある。
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