あなたは普段、歯磨きをするとき、どんな歯磨きグッズを使用していますか?歯ブラシや電動歯ブラシのほか、糸ようじやデンタルフロス、歯間ブラシなどたくさんありますよね。
気になる口臭発生や、生活習慣に由来する細菌感染症である歯周病や虫歯、徹底的に予防するためには、やっぱり歯垢をしっかりとってケアしたいものです。
中でも、今回は、糸ようじの使い方をご紹介します。
そもそも、糸ようじって何?という人のために、まずは基本的なことをご説明しましょう。糸ようじと混同されるモノの一つが「デンタルフロス」ですが、実は、糸ようじもデンタルフロスの一種です。デンタルフロスには、P型、Y型などのホルダー付きタイプと、糸のみのタイプがあります。そして、「糸ようじ」とは、このうち、P型のことを指すのが一般的です。
糸ようじは、ちょうどアルファベットのPの形をしており、取っ手に糸がついています。糸のみのデンタルフロスの場合、糸を指に巻いて、歯と歯の間にある歯垢を除去しますが、なかなか取り扱いがむずかしいこともあります。その点、糸ようじは、取っ手がついているため、使いやすくなっています。
参考までに、それぞれの形のデンタルフロスの形状別の特徴をご紹介します。
糸ようじのようなP型、もしくはF型といわれるタイプは、基本的に前歯の歯と歯の間にある歯垢が取りやすくなっています。
こちらもP型と同じくホルダータイプですが、形が異なります。ちょうどYの字のようになっており、奥歯の歯と歯の間にも糸が入りやすくなっています。P型だけでは掃除しにくいという場合に便利です。
糸を指に巻き付けて使用するタイプです。ホルダータイプと同じく、歯と歯の間に入れて動かすことで歯垢や汚れを除去するものです。中には、ワックスがついていて、滑りが良くなっているものがあります。
また、エクスバンドタイプと呼ばれる、唾液による水分や摩擦によって糸が膨らむことで、歯垢をより除去しやすいタイプもあります。こうしたさまざまな加工がされているものを選ぶことができるのは、糸タイプの特徴といえます。
ところで、この糸ようじをはじめとしたデンタルフロスで、「歯石」が取れると勘違いしている人がいるようです。しかし、デンタルフロスで取れるのは、歯石ではなく「歯垢」です。歯垢と歯石の違いはきちんと理解しておきましょう。
歯垢とは、細菌のかたまりのことで、虫歯菌や歯周病菌がたくさん含まれています。1mg中、なんと1億個以上もの細菌が存在するといわれています。放置すると、酸を作り出し、歯を溶かしはじめ、歯周病菌が感染すれば、歯を支える骨が溶けていきます。
歯垢は、食後8時間ほどでつくられるといわれているため、食後に歯磨きをしてとってしまいましょう。また、早いと2日でプラークの石灰化が始まります。完全に硬い歯石となるわけではありませんが、旅行中などでブラッシングができない場合にはよく注意しましょう。
歯石とは、歯垢が唾液などに含まれるカルシウムとリン酸が混ざって沈着し、リン酸カルシウムとなって硬くなったものです。歯石を放置すると、歯石の中にいる細菌の中でも、歯周病菌は毒素を出し、歯肉を炎症させたり、歯の骨までむしばんだりして、最終的に歯を支えるものが失われてしまう原因菌が含まれています。
これを歯周病と呼びますが、進行すれば最後には歯が抜け落ちてしまい、歯を失ってしまいます。歯石になる前の歯垢の吸着除去がとても大切です。
歯石は歯ブラシ、電動歯ブラシ、デンタルフロスなどのアイテムでは除去できません。歯石は、歯科医院で、専用の器具や機械などを使って除去してもらうしか今のところ術がありません。
定期的に歯科医院に通うのが、一番確実な方法ではありますが、定期的に歯科医院に通うことが、労力面でも費用面でも難しい方は、歯垢の段階で毎日のお口の中のセルフケアを徹底しましょう。
歯周病予防のためにも、歯垢除去はとても大事です。毎日の歯ブラシでのブラッシングと共に、糸ようじを使いこなしてみましょう。
糸ようじはどうやって使うと歯垢が取れるのでしょうか。
歯と歯の間にゆっくりと挿入し(無理に押し込むと、歯肉が傷ついてしまいます。)、まず手前の歯に引きつけて何度か上下に何度かこすり、そのあともう一度ゆっくりと挿入し、次は奥の歯に押し付けるようにして上下に何度かこすります。
糸ようじを歯と歯の隙間に入れたときに、ひっかかりがあったり、糸がほぐれてしまったりするのなら、虫歯になりかけている可能性が高いといわれています。また、血がついてきたら、歯周病になっている可能性があるといわれているため、毎日、定期的に糸ようじを使い、歯垢の除去率を高めると同時に、歯周病のリスクを軽減させましょう。
糸ようじは、毎日最低一回は行い、歯ブラシでは取り切れなかった歯垢を取り除くのをおすすめします。
糸ようじと共に、歯ブラシや電動歯ブラシによっても歯垢を取ることが大切です。でも、毎日の歯磨きで本当に歯垢が取れているのか不安になりますよね。そこで歯ブラシや電動歯ブラシではどうすれば歯垢が取りやすくなるのか、その除去方法をご紹介します。
はじめに注意したいのは、歯ブラシや電動歯ブラシは、あくまで歯の表面の歯垢を取るものだととらえるべきということです。実際、歯ブラシだけでは歯垢を完璧に除去することはできません。そこで、今回ご紹介した糸ようじのようなデンタルフロスや、歯と歯肉のすき間にたまっている歯垢をかき出すためも歯間ブラシを併用することで、歯垢をより多く除去することができます。歯ブラシや電動歯ブラシだけで満足しないことがポイントです。
歯みがきの基本は、歯ブラシの種類にもよりますが歯ブラシの毛先を、歯と歯肉、歯と歯の境目にきちんとまっすぐに当てること。そして軽い150~200gくらいの力で押し、約5~10mm幅で小刻みに横に動かしながら磨いていきます。一度に磨く歯は1~2本。丁寧に磨いていくようにしましょう。
電動歯ブラシを使う場合は、歯に押し当てるというよりも、軽く当てる程度でOKです。すでに歯ブラシが振動しているため、自分でゴシゴシ動かす必要もありません。歯と歯肉の間あたりに毛を当てたら1~2秒静止。次の歯に移動していきます。当てる角度はまっすぐに当てるだけでなく、斜め45度というのも行ってみましょう。
糸ようじは、歯ブラシでは取ることのできない歯と歯の隙間にある歯垢をとるための道具です。ぜひ歯ブラシの毎日習慣にプラスして、口内ケアに活用してみましょう。
文:リズム編集部
監修:高島美祐 (神谷町デンタルクリニック)
高島 美祐(たかしま・みゆう)
早く確実に治したい方や、何度も再発してなかなか治らなかった方のために、マイクロスコープとCADを使った短期集中治療に特化した歯科医院「神谷町デンタルクリニック」を東京都港区虎ノ門にて開院。歯の病気が早産や生活習慣病、認知症につながることや、かみ合わせの不良により顔のバランスが乱れてしまうことなどを啓蒙している。超高齢化社会において、自分の歯をできるだけ長く残すための治療を実践しており、国内外からの来院がある。
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