マインドフルネス瞑想のエキスパートでRhythmアンバサダーでもある長谷川洋介さん。
前回は、ビジネスパーソンに役立つマインドフルネス瞑想に関する連載『ビジネスパーソンのためのマインドフルネス瞑想』を4回にわたって紹介してきました。今回は、老若男女を問わず、すべての人がマインドフルネスを普段の生活に取り入れながら生活に根ざしたものにすることにより、生活リズムを整えていくために役立つ方法を5回にわたって紹介します。
今回は、朝起きたときのストレッチにもなる、心と身体をチューニングするための動作瞑想の方法についてご紹介いたします。
(マインドフルネスな生活リズムの整え方 Vol.3 〜リラクゼーション&快眠のためのボディスキャン瞑想〜より続く)
忙しさのあまり、運動したくてもできない人も多いと思います。今日は、そんな人のためにオススメしたい、動作瞑想をご紹介したいと思います。大切なのは、運動をするときにいかに身体を意識して動かすことができるかということ。動作瞑想においては、その瞬間、瞬間にすべて気づいて身体を動かすことによって、普段は気づけないような身体の筋肉の動きであるとか、実践する前の感覚と、実践後の感覚を捉えやすくしていくことが目的となります。
最近では、マインドフルネスランニングを実践する人も増えてきました。筋肉の動きを意識して走っていると、自分の身体の状態がわかるようになっていくというものです。これも動作瞑想のひとつと言えます。基本的には運動を取り入れた瞑想になりますが、ポイントとなるのは、やはり、“心の使い方”です。より身体を意識することにより、身体を動かす、あるいは、なるべく身体を動かさないようにするなど、どういうふうに身体を動かすとパフォーマンスが良くなるのかといったことに注意を向けることにより、よりよい身体を作っていくことができます。
動作瞑想を実践していると、身体はもちろん強くなっていきますが、どちらかと言いますと、身体を整えてあげるとか、身体をチューニングしていくというイメージです。まずは、動作瞑想によって、身体を整える。そうすると、自然と心も整い、落ち着いたいい状態になりやすい。それによって、心身共にケアをすることができるようになるというのが大きなメリットと言えます。
動作瞑想は、米国では「マインドフルネス・ムーブメント」と呼びます。基本的には、何気なく自然に行う動作でも、それにちゃんと気づきを向けましょうといった感じです。例えば、腕を上げたり降ろしたり、前屈するなど、どんな動作においても、ひとつひとつマインドフルネスにやっていけば、うまくいきます。しかし、“心ここにあらず”の状態であれば、まったく意味がないものになってしまいます。
そうならないためには、動かす身体の部分に意識を向けていくこと。そうすることで、余計な考え事をしなくなり、身体感覚に意識が向きやすくなります。心が“今この瞬間”に起こっていることに注意を向けず、目の前のこととは関係ないことを考えてしまう状態のことを「マインド・ワンダリング」と言うのですが、そういった状態にいかにならないようにするのかがポイントとなります。
動作瞑想のトレーニングを続けると、心と身体が繋がりやすくなります。心と身体が親しくなると言い替えてもいいかもしれません。それによって、他のマインドフルネス瞑想と同様、自分の状態に気づきやすくなります。自分が今、置かれている状態であるとか、どれだけストレスがかかっているのか、かかっていないのか、疲れているのか元気なのか、といったことに気づくことができます。そこで、自分でケアするにはどうすればいいのかが見えてくる。例えば、今日は疲れているから休もうといった感じで生活リズムを自然と整える力がついてくるでしょう。
さらに、動作瞑想の場合は運動を伴う瞑想ですから、身体自体が強くなります。体力はもちろん、柔軟性も増して、筋肉も付くといった複合的なメリットがあります。瞑想だけれどもいい運動にもなるし、続けるほどに身体が強くなる。そうなると、病気にもかかりにくい状態になるということも見込まれます。やはり、人間にとって運動というのは、日常生活のなかでとても大切な要素です。ぜひ、リフレッシュしたい時に実践してみてください。
1 足は拳1個分くらいに開き、楽な姿勢でシッカリと立つ。くるぶし、膝、腰、耳のラインを揃えるように意識する。さらに、眉間、鼻先、顎先、喉、みぞおち、恥骨と、身体の縦と横のラインが真っ直ぐになるようにして、肩の力を抜く。猫背にならないよう注意。
3 次に、立っている時の呼吸を感じ取る。吸う呼吸と吐く呼吸、どのあたりまで入って、出ていくのかを感じ取る。
4 呼吸の次は、身体がわずかに揺れている感覚を感じ取る。十分に感じ取ることができたら、身体を少しずつ動かす。軽く息を吸いながらゆっくりと両手を上げていきながら、身体の動きを感じ取る。
7 大きく息を吸いながら、再び両手をゆっくりと上に上げ、目一杯伸びきったところで、息を吐きながら前屈。上半身をゆっくり前に倒しながら行けるところまで。
9 ゆっくり上半身を起こしながら、両手を床から離し、弧を描くように両手を上に上げる。
いかがでしたか? 身体をチューニングすることで整えてくれる動作瞑想は、朝に実践してみることをオススメします。朝、起きたばかりだと、まだ身体は動いていません。シッカリとストレッチするように動作瞑想をするといった感じで実践してみるのがいいと思います。
その他にも、同じ姿勢でずっと仕事をしている人などが「リフレッシュしたいなあ」というときにやるのもいいと思います。仕事のちょっとした合間ができたタイミングで身体を動かすことで、血流も改善します。いいリフレッシュになるでしょう。ちなみに、動作瞑想はエコノミークラス症候群の予防にもオススメです。
1日の始まりにチューニングして身体を整えたり、少し仕事で疲れたときにリフレッシュ。そういった感覚でぜひ、生活のなかに動作瞑想を取り入れていくようにしてみてください。
(マインドフルネスな生活リズムの整え方 Vol.5 〜美容にも繋がる!? セルフマッサージ瞑想〜へ続く)
取材・文:國尾一樹
撮影:たつろう
撮影協力:東京マインドフルネスセンター