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インタビュー:川口拓 「サバイバルな野遊び」ブッシュクラフトって? 【特集:キャンプと火と】

インタビュー:川口拓 「サバイバルな野遊び」ブッシュクラフトって? 【特集:キャンプと火と】

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インタビュー:川口拓 「サバイバルな野遊び」ブッシュクラフトって? 【特集:キャンプと火と】

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一過性のブームというよりは、日本の国民文化のひとつになった感のある「キャンプ」。カジュアルに親しまれている一方で、近年は居住性の高いティピーテントに薪ストーブをインストールしたスタイルが広がりを見せるなどさまざまなアプローチが登場し、キャンプの楽しみ方も多様化しつつあります。
Rhythm ULTRAでは、キャンプを構成する要素の中でも「火」「雪」「野生」にフォーカスした特集をお届け。第1回は、野山のものを活用して野営するサバイバル的なアクティビティ=ブッシュクラフトについて。ネイティブアメリカンの教えに基づいたサバイバル術を啓蒙している「WILD AND NATIVE」代表、川口拓さんにご案内いただきます。

■特集:キャンプと火と
1. インタビュー:川口拓 「サバイバルな野遊び」ブッシュクラフトって?
2. 嗜好品としての炎を味わう。「火とアウトドア」の専門店「iLbf」の焚き火ガイド
3. 500g以下限定! 超軽量焚き火台を尾崎”Jacky”光輝さんとレビューしてみた
4. テントを使わない快適な雪中泊。イグルーの作り方とその魅力
5. 焚き火キャンプ場&スノーキャンプ場ガイド

――ブッシュクラフトはいろんなスタイルを孕んだアクティビティで、定義付しづらいものだと思いますが、川口さんはどのように説明されていますか?

川口 ブッシュクラフトはここ最近、日本でも浸透しつつありますが、さまざまな方々がそれぞれ独自の定義でブッシュクラフトを楽しんでいるように思います。我々は、「サバイバル術を使った遊び」みたいに定義付けていますね。サバイバルというと軍隊の訓練のようなハードなものをイメージされるかもしれませんが、例えば焚き火を使って美味しいものを食べるとか、ロープワークを覚えて自分の寝床を作るとか、野山で生きるための術を身につけるうえでは楽しい要素がいっぱいあるわけです。そういうサバイバルの楽しい部分を抽出して遊ぶ――僕たちはブッシュクラフトをそんな風に捉えています。

――まず楽しむものということですね。野営を楽しむという点ではキャンプと重なりますが、一般的なキャンプとの大きな違いはどんなところにあるのでしょう。

川口 いわゆるキャンプはいろんな道具を買って、それで遊ぶ楽しさがありますが、ブッシュクラフトはなるべく道具を少なくして技術と手間でカバーするという遊び方です。道具を自作する必要が出て来るし、野山にある素材を活用して過ごすものなので、おのずと自然と触れ合う機会が増える。もちろん道具をあまり持ち込まないことで不便な面もあるのですが、自分なりの工夫で不便を乗り越えた時の達成感があります。「俺、結構イケるじゃん」みたいな(笑)。その醍醐味を味わうことで、皆さんブッシュクラフトにどんどんハマっていくように感じます。

――道具を使わずに野営するうえで、具体的にはどんな技術が必要になってきますか?

火起こしの実演 写真提供:川口拓

川口 人間が自然のなかで生きていくために必要な5つの要素があって、それは優先順に「空気/シェルター/水/火/食」です。この5つを満たすために求められる技術は、体温が保てる暖かい場所が作れること、水を安全に飲めるよう処理できること、火を着けて確保できること、食べ物を調達して調理できること。これらを身につけることがサバイバル術の基本ですが、ブッシュクラフトの場合は例えば、もっと美味しく調理するための道具を工夫してみたり、座り心地の良い椅子を作ってみたりといった遊び寄りの要素が多くなるのかもしれません。
僕たちはブッシュクラフトにおいてもサバイバル術を覚えることを重視していますが、アプローチの仕方も必要とする技術も人によってまちまち。いろんな楽しみ方があると思います。

――野営のためのさまざまな技術を身につけることで、ブッシュクラフトに限らずアウトドア全般の楽しみが広がっていくように感じます。

川口 普段キャンプを楽しんでいても、例えば冬の山で遊ぶことに拒否反応を示す方も多いと思うんです。でも、焚き火の熱を有効に使って暖かい空間を作る技術を覚えると、やっぱり冬のキャンプをやってみたくなるし、そうやって遊ぶフィールドが広がっていくのは楽しいことですよね。

――ブッシュクラフトに親しんでいる方はナイフひとつでいろんなものを自作するというイメージがあります。ブッシュクラフトを象徴するものとしてナイフが浮かぶと言いますか。

ナイフによるペグ作りの様子 写真提供:川口拓

川口 普通にキャンプをして終わってみると、結局ナイフを使わずに済んでしまうことも珍しくありません。食材を切るくらいならナイフよりも包丁の方が調子はいいですし。そこで例えばテントのペグをナイフで手作りしたりしてみます。「敢えて、わざわざ」を楽しむ感じです。さらに、のこぎりとか斧のような大型刃物を持ち込まずにナイフだけで済ますのも面白い。ただ、ナイフや他の刃物をどう使うかはブッシュクラフトで何を重視するのかによって変わります。だから、初心者には安価なエントリーモデルのナイフをお勧めしています。それを試してみて、もっと長いもの方が扱いやすいな、などと自分に見合ったナイフを考えた方がいいですね。

――食の部分のアプローチも人によってさまざまでしょうか。

川口 そうですね。サバイバル術的に食べられる野草を覚えて、食材の現地調達から楽しむ方もいれば、美味しいお肉を持ち込んで焚き火料理を食べたいという方もいますし、調理器具を一切使わずに、現地にあるもので焼き網を作ったり石焼をしたりすることにこだわる方もいます。
木材で食器を作るクラフトに走る人も多いですし、チャイやマシュマロを焚き火調理でふるまうカフェのような空間を提供している人もいます。ブッシュクラフトの掘り下げるところって本当にいっぱいあるんだなって思いますね。

――もともと川口さんはどのようなところからブッシュクラフトの世界に入ったのでしょう。

川口さんが野営で使う道具。タープ、ロープ(1.5mと3m)、サバイバル・ナイフ。
「この〈モーラナイフ〉ブランドのモデルは、初めて手にするナイフとして丁度いいモデルだと思います」(川口)

川口 新卒で就職する時期が近づいてきた頃、満員電車やスーツを着て働くことへの不安が押し寄せて来まして、そんな時にテレビ番組で、カナダの森の中で生きるサバイバルの達人のことを知って興味を持ったんです。それで後先も考えず、その森の達人に学ぼうと思ってカナダに向かいました。だから最初は大した覚悟もなかったですし、就職から逃げるのに、カナダでのアウトドア修行なら格好もつくかなという不純な動機だったんですけど(笑)。でも、その後もカナダやアメリカを訪れてネイティブアメリカンのサバイバル術を学んでいくうちに、その深みと魅力にすっかりハマってしまったんです。

――サバイバル術のどんなところに魅了されたのでしょうか。

コッヘルとキャンプ用ストーブ。「基本的に焚き火で賄いますが、直火が使えない場所や、焚き火を起こすと後片付けが面倒な朝の出発前などではストーブが便利です」(川口)

川口 アメリカにあるネイティブアメリカン流サバイバルスクールに通う時に、その前に通っていたカナダのアウトドアスクールの経験に即して防水透湿のウェアとかフリースとか装備をばっちり着込んで行ったんですが、その先生はジーンズ、タンクトップで裸足で森に居たんです。その姿にまずガーンと来まして。それで授業では、道具を持てば持つほど自然と切り離されてしまうということを教えるわけです。ナイフを持つと石には用事がなくなってしまうけど、ナイフがなければ石を一生懸命探して石を使って、石というものが自分の命にとって大切な、かけがえのないものになるという。

――そういうネイティブアメリカンの考え方に惹かれたんですね。

川口 それもあって僕が「ブッシュクラフト」という言葉を大々的に使い始める前は、いわゆる原始技術をメインに伝えていました。タープもロープもコッヘルも使わないようなサバイバル術です。しかもネイティブアメリカンの教えに即したもの。そういうスタイルは門戸が狭くなる。より遊び心が感じられるブッシュクラフトというアクティビティの形であればすそ野はぐっと広がります。そこで原始技術のスクールとは別に、主にブッシュクラフトの指導者を養成する「Japan Bushcraft School」も主催しはじめました。ブッシュクラフトに親しんだ方が、その奥にあるネイティブアメリカンの教えや、サバイバル術に興味を持っていく様を見るのも嬉しいです。

――カジュアルなキャンプを楽しんでいるような方がブッシュクラフトを始めるとしたら、どういうところから入るのがいいでしょうか。

川口 どんな入り方でもいいと思いますが、一般的なキャンプとはまったく別ものという意識を持って始めるとやりやすいんじゃないでしょうか。使用する道具も違ってくると思いますし、キャンプ経験の有無によってブッシュクラフトを始めた時の技術に大きな差が出るとも限りません。
実際、キャンプや登山などの経験がまったくなく、ブッシュクラフトを始める方もたくさんいらっしゃいますし、キャンプはキャンプで別に楽しんでいるブッシュクラフターさんも多いです。僕も道具をたくさん持って行って、美味しい料理をたくさん作るようなキャンプに行ってみたらすごく良かったですし(笑)。

川口拓 Profile
1971年生まれ。ネイティブアメリカンの自然の教えをベースにした自然体験プログラムを提供する団体「WILD AND NATIVE」代表、「Japan Bushcraft School」 校長。サバイバル術やブッシュクラフト、薬草&ヒーリングなどを広く伝える活動を行っている。
著書に『ブッシュクラフト 大人の野遊びマニュアル』(誠文堂新光社)がある。
https://wildandnative.com/
https://bushcraft.jp

取材・文/Rhythm Ultra編集部 撮影/後藤秀二(冒頭の写真提供/川口拓)


■特集:キャンプと火と
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