今回は、滝ガールとして活動中の坂崎絢子さんが登場!滝めぐりは、普段あまり運動をしていない方でも、手軽に身体を動かせてリラックスできる「ツール」としておすすめだと言います。前編では、坂崎さんが滝に”恋に落ちる”までの経緯と、滝ガールになるまで、そして滝ガールとしての今後の展望を伺いました。
坂崎絢子(さかざきあやこ)
滝ガール
東京生まれ、在住。滝めぐり歴は15年以上。47都道府県の滝に1つ以上は訪問しており、これまでに国内外合わせて何百という数の滝をめぐってきた。2013年からは自身の活動記録を掲載したウェブサイト“Takigirl.net”を運営。滝から地球の平和を考える“Waterfall & Peace”をテーマに、自治体主催のイベントに滝の専門家として登壇する等、滝の案内役としても活動している。現在は会社員として働きながら滝ガールの活動を続けている。http://takigirl.net/
■まず、坂崎さんと滝との出会いには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
私はもともと東京出身で、それほど自然が豊かとはいえない場所で育ちました。でも、大学に入って車の免許を取ったらドライブが楽しくなって、日本全国いろいろと出かけるようになったんです。
どちらかと言えば海より山派で、とくに川が好きだったんですが、それを知った知人から、青森県にある奥入瀬(おいらせ)渓流をすすめられて。当時二十歳の私はバイトしてお金を貯めて、満を持して奥入瀬へ行くわけです。
■青森県まで車で?
青森までは飛行機で行って、そこからレンタカーを借りて現地に向かいました。奥入瀬渓流沿いを歩いてみると、その道中でいくつも滝を見ることができました。確か7〜8箇所くらいはあったと思います。お目当ての渓流の風景は素晴らしいものでしたが、複数の滝を一度に見比べたことで、滝にはそれぞれいろんな形があって、激しい、やさしいなど雰囲気にも個性があることを知りました。
■一度に、そんなにたくさんの滝を見ることってないですよね?
そうなんです。それまでは観光地のひとつとして滝に行き、展望台から「おーっ」と声をあげて帰ってくる程度の経験しかなかったので。奥入瀬渓流を歩いたことで、川はもちろん気持ちいいけれど、滝はもっと気持ちいいなと感じたんです。それからドライブの途中に滝があればとりあえず立ち寄るようになりました。
そして決定的だったのは、その後、長崎にある「龍頭泉(りゅうとうせん)」という滝を見に行った時のこと。前日降った雨の影響で水量が増加していて、豪快に流れ落ちていました。
たまたま人がいなくて貸切状態で滝と1対1になったのですが、興奮してもっと近づこうと岩場を登ろうとしたら、足を滑らせて滝つぼに落ちて腰までびしょ濡れになってしまって。ハプニングではあったのですが「あぁ、なんて気持ちいいんだろう。これまでは滝とのふれあいが足りなかったな」と感じて。
人にはよく言っているんですが、その時がまさに、滝に「恋に落ちた」瞬間でした。
■編集者時代は自然関係の本だったんですか?
いえ。滝とは全然関係なくて、経済系の雑誌でした。それはそれで面白くて、入社して5年くらいは仕事に夢中だったので、その間、あまり滝には行けていませんでした。ただ、就職時のエントリーシートにも書くくらい滝のことは好きだったので、会社の人にも滝好きなのは知られていたんですけど(笑)。
その後、ちょうど30歳になる年に、ライフスタイル系の雑誌に異動が決まりました。休みも取りやすくなったので、滝のための一人旅にもちょくちょく出かけるようになりました。さらに、異動してすぐの取材が、プロのカメラマンさんと一緒に「写真の撮り方を教わりながらスイスを旅する」という夢のような企画で…。
■スイスを旅しながら。すごくうらやましいです。
本当に、ラッキーでした。そのカメラ合宿のような企画のおかげで、シャッタースピードと絞りなど一眼レフカメラの使い方の基本を身につけることができました。
今まで滝をめぐっていても写真を上手に撮れなかったので大した記録も残してこなかったのですが、素人なりに自分ではそこそこ「綺麗だな」と思える写真が撮れるようになってきたのが嬉しくて。
それで、せっかくなら滝の魅力をまとめて記録しておきたいと思って、2013年に Takigirlのサイトを立ち上げることに。
■なるほど。写真がきっかけだったんですね。ウェブサイトを立ち上げてなにか変化はありましたか?
初めて滝仲間なるものができました。滝仲間のみなさんから情報をいただけるようになり、世界が広がりましたし、周囲の友人もウェブサイトを見て滝に興味を持ってくれるようになりました。滝がなければ行かなかったであろう土地にも行く機会に恵まれ、そこで改めて日本って良いなと感じるようになったんです。
そのうち段々と、滝の周辺にある日本古来の文化にも興味が湧いてきました。例えば日本の信仰は、滝と密接につながっているといわれています。また、滝をモチーフにしたアート作品なども多いですし、そういった滝にちなんだ文化や芸術も個人的に追いかけたいなと思うようになりました。
元々編集者だったので、まだ編集されてないけれど何かポテンシャルがありそうなものごとが気になるんですよね。だから滝についても、あらゆる角度から魅力をあぶり出したい、みたいな(笑)。私、いつか滝雑誌を作るのが夢なんです。
■すごいですね。滝の雑誌ってないんですか?
どんなニッチなジャンルにも雑誌ってあるのであってもいいと思うんですが、まだないんです(笑)。各分野、地域で滝を研究している方はいるんですが、それを横断する横軸がないのかもしれないです。でもたぶん、そこが、私が滝に惹かれるポイントなのかなと思っていて。
あらゆる角度から滝を見て、人にとっての滝とは?とか、滝が教えてくれることってなんだろう?とか、多角的、網羅的なテーマで滝の雑誌を作ってみたいなというのが次の目標です。
現在は滝めぐりだけに留まらず、滝のある周辺地域に伝わる伝説や風習を調べるなど、滝にまつわるさまざまなことを研究している坂崎さん。その情熱はとどまるところを知りません。
後編では、実際に滝へ行ってみたい方のために、初心者でも行ける滝スポットや滝を満喫するコツなどをご紹介いただきます。お楽しみに。
文:杉浦優子
写真:坂崎絢子