あなたにちょうどいい、リズム|Rhythm

音と脳の研究者&DJ・宮崎敦子 「いいコミュニケーションをすると脳活動が同期する」

音と脳の研究者&DJ・宮崎敦子 「いいコミュニケーションをすると脳活動が同期する」

  • Column
  • Relaxation

<COLUMN>
音と脳の研究者&DJ・宮崎敦子 「いいコミュニケーションをすると脳活動が同期する」

更新日:

| コミュニケーション | パフォーマンス | 音楽 |

音と脳の関係に関する研究という、世界的にも珍しい研究を続けている宮崎敦子さん。現在、進行中だったり構想中だという、脳と音楽や音の研究、あるいはリズムと身体の関係の研究などについて、興味深い話を、さまざまな観点から分かりやすくうかがいました。第4回目は、言語理解力を高める音楽と、コミュニケーションと音楽についてのお話です。

──前回、速いテンポの音楽を聴くと脳が活性化するという話をうかがいましたが、やはり、テンポの速い音楽の方が脳にイイということなのですね?

基本的にはそう考えていいかと思います。一般的に、音楽として成立するテンポというのは、60〜150BPMといわれています。

BPMというのは「ビート・パー・ミニット」の略で、1分間に刻むビート(拍子)の数を示す単位のことです。前回の認知課題においては、速いテンポのほうが、私たちの行動や脳活動に影響を与えることが分かりました。

ただ、言語理解力に関しては、テンポが速ければいい、というものでもないんですよね。

裏ノリを意識すると、言語理解力がアップする!

──言語理解力ですか!?

音楽を聴くときに、トントン、トントンと表ノリ(オン・ビート)ではなく、ウンタウンタ、ウンタウンタという裏ノリ(オフ・ビート)でリズムを取る方が、脳にいいのではないかということで、研究を進めています。

image001

image003※写真上/裏ノリした場合では反応速度が早くなることが分かった
●画像出典「研究所連携プロジェクトH25年度成果報告会プログラム」

リズムを表で取るのと、裏で取るのとでは、脳活動がだいぶ違います。

最も脳活動の差が出るテンポというのが、実は75BPM。1分間に75拍のテンポの速さということで、ミディアムスローといわれる速さです。

表ノリは誰でも簡単にできますが、裏ノリは音楽に集中しないとできません。そこで脳活動に大きな違いが出るということは、行動にも差が起きているのではないかということで、探ってみたのです。

そうしたら、言語理解力のパフォーマンスがよくなるということが分かりました。

裏ノリで聴くと、速読力もアップ!?

──それについては、ぜひ、伺いたいです。

実験では、30秒ほど音楽を聴いて、裏ノリでリズムを取ってもらうんですよ。

その後、文章を読んでもらって言語理解力のテストを行ったところ、正しく理解できていて、しかも反応は確実に速くなっていました。

裏ノリでリズムを取るということは、脳に何らかの負荷をかけて、脳活動に変化を与えていること。その変化が、言語に関係している脳のエリアに働き、それによって言語理解力がアップしたということです。

まだ予備実験の段階ですが、この結果からも、新聞や本が速く読めるようになるといった、いわゆる速読などにも効果があると考えていいのではないかと思います。

何か言語理解力を必要とする作業を行うときに、ミディアムスローな音楽を聴いて、裏ノリのリズムを取るようにしてから行うと、作業がはかどるかもよ、ということですね。

コミュニケーション時に脳の活動はシンクロする

──脳と音の関係って、実はけっこう奥深いのですね。他にも何か、おもしろい研究がありますか?

コミュニケーションをしているとき、脳の活動というのはシンクロするんですよ。

そのときの脳活動を可聴化して聴いてみると、きれいなハーモニーを奏でたときには、いいコミュニケーションがとれているということになります。

コミュニケーションがうまくできているかどうか、すぐに分かる装置もあります。

──それは興味深いですね! どんな装置なのですか?

脳の表面の血流量の変化を測定できる、超小型頭部近赤外光計測装置です。センサーを、ちょうど額の真ん中あたりに装着するマシンです。

DSC_9709

うまくシンクロすると、きれいなハーモニーを奏でる

脳の背内側前頭前野という部分なんですが、人がコミュニケーションをしているときに活発になる部分なので、うまくコミュニケーションがとれているほど、その部分に血液が集まってきます。

その血流を測っていると、不思議なことに、コミュニケーションの内容に応じて、また高いコミュニケーションが必要とされる課題になればなるほど、同じタイミング、同じ揺らぎで脳活動が同期していって、同じ動きになるんです。

その動きを可聴化し、音に変換して聴くと、うまく同期しているときには、なんと、キレイなハーモニーを奏でるんですよ。

<脳活動によるトリオ演奏と音楽性>
image005※写真上/3人によるコミュニケーション課題と、脳活動を可聴化した音のスペクトログラム
●画像出典「日本音響学会2013年」

今のところ、音が出てコミュニケーションの度合いを測定できる装置としては、世界唯一ですね。

──コミュニケーションというと、会話とか、そういうことですか?

それもありますが、もっと顕著に同期するのが、実は音楽なんです。

二胡という弦楽器の奏者として有名なチェンミンさんと、パーカッション(打楽器)のプロフェッショナルな奏者の堀越彰さんの2人にお願いして、実験してみたところ、楽器の種類はまったく違うのに、同期しました。

どちらかがソロのパート部分になると、もう一方の脳活動が控えめになって、自分のパートになると、また脳活動が上がって同期していくのです。

センサーを装着する「背内側前頭前野」という部分は、言いたいことや伝えたいことがある時に活発になる部分。コミュニケーションがうまくいっていたり、伝わっている時には、さらに活発になります。

──よく、ヨガなどで「第3の目」だとか、「チャクラ」とかいわれる部分でしょうか?

そうなんですよ。だから、昔の人っていうのは、スゴいと思います。

こんな測定器なんてなかった時代なのに、ずっと昔から知っていたんじゃないかと考えると、本当に不思議ですよね。

image007
※写真上/赤い部分が背内側前頭前野のコミュニケーション領域。まさにチャクラと呼ばれる額の部分だ

そういう意味でも、とてもおもしろい測定器だと思うので、スマホやゲーム機などでも測定できるような簡易版のソフトを商品開発していきたいと考えています。

引退したら、またレコード屋をやりたい

──測定器を応用して、何かに役立てることもできそうですね。

高齢者の食事介助に役立つようになるといいなと、考えているんですよ。食事介助では、意思表示できない高齢者に対して、スプーンを口まで運ぶタイミングが分からなくて難しい。

介助する人は、高齢者の喉仏を触って、飲み込んだことを確認しながら食べさせるのですが、この測定器でタイミングよく食事介護できるようになるといいなあ、と考えています。

人に何かを伝えたいときに、脳活動が上がるわけですから、食事のときに装着してもらって、さわやかな音でピローンとか鳴ったらスプーンを口に運んであげる、といったことができるようになるといいなあ、と考えたりもしているんですよ。

──興味深いお話をたくさんお聞かせてくださいまして、ありがとうございました。最後に、今後の研究課題とか、夢などを伺わせてください。

研究したいことは、山ほどあるんですけどね……。最終的には、研究者を引退した後に、またレコード屋をやりたいですね(笑)。

研究者を引退して80歳になっても、自分のお店でDJしながら、お客さんが来るのを待つ。

そして、お客さんがやって来たら、「コレは脳のココに効くんだよ!」って、おすすめのレコードをすっと渡すんです。そんな老後が、私の理想ですね(笑)。

──今回のお話を踏まえて、言語理解力を高めてくれそうな音楽を、宮崎さんにおすすめいただきましたので、ご紹介します。

今回のインタビューは4回目ですが、1〜3回目の宮崎さんのインタビュー記事でも、脳を活性化する音楽をおすすめいただいています。みなさんもぜひ聴いて、脳にいい刺激を与えてあげてください。

言語理解力を高める効果あり!?

【DJ ATSUKOのおすすめ曲 】MORNING CHILD

image008

4hero『Play With The Changes』
https://itunes.apple.com/jp/album/play-with-the-changes/id211084369

言語理解力を高めるには、裏ノリでリズムを取らないとダメなので、ダウンテンポで裏ノリしやすい曲ということで、このアルバムの1曲目を選びました。

4heroはDrum&Bass(ドラムンベース)という音楽ジャンルを代表する人気アーティストで、私も大好き。この曲は、裏ノリしやすく、かつジャズやファンクなテイストが盛りだくさん。

オシャレでかわいい感じで、タイトル通り、さわやかな朝にピッタリ。何か資料を読み込むといったようなときに、このようなちょっとゆっくりめの曲で、裏ノリを意識して聴いてから作業を始めると、はかどるかもしれません。

写真提供 宮崎敦子
取材・文 國尾一樹

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • Line
  • Hatena
  • Pocket

関連記事

「磨き残しに徹底アプローチ!」オムロン新音波式電動歯ブラシ発表会の密着レポート

  • Column

「磨き残しに徹底アプローチ!」オムロン新音波式電動歯ブラシ ...

オーガニック農家・吉岡龍一「おいしい野菜は菌からつくる」

  • Column
  • Food

オーガニック農家・吉岡龍一「おいしい野菜は菌からつくる」

細胞の記憶を呼び覚ます?体質改善・ダイエットも【磯淵猛さんインタビューVol.5】

  • Column

細胞の記憶を呼び覚ます?体質改善・ダイエットも【磯淵猛さん ...

歯磨きは歯磨き粉によって効果が変わる?【歯科医監修】

  • Column

歯磨きは歯磨き粉によって効果が変わる?【歯科医監修】

世界遺産第1号のガラパゴス諸島は、想像を絶する大自然だった〜Healthy Trip vol.5〜

  • Column
  • Relaxation

世界遺産第1号のガラパゴス諸島は、想像を絶する大自然だった〜 ...

新着記事

室温・明るさ・パジャマまで!見直したいぐっすり睡眠環境6つ

  • Relaxation

室温・明るさ・パジャマまで!見直したいぐっすり睡眠環境6つ

歯茎&くちびるマッサージで魅惑の口元を!

  • Column
  • Relaxation

歯茎&くちびるマッサージで魅惑の口元を!

『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』 日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.1(前編)

  • Column
  • INTERVIEW
  • Special

『いくつになっても、心地良く生きていなければ意味がない』 日本語ラップ界のレジェンド、「RHYMESTER」宇多丸さんインタビュー Vol.1(前編)

起業家、浜田寿人「日本人に必要なグローバル編集力」

  • Food

起業家、浜田寿人「日本人に必要なグローバル編集力」

【美容家 吉川千明先生 × オムロン式美人】風邪の引き始めはバスタイムでからだケア 自家製アロマバスソルト

  • Beauty
  • Relaxation

【美容家 吉川千明先生 × オムロン式美人】風邪の引き始めはバスタイムでからだケア 自家製アロマバスソルト

おすすめの記事

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

  • Relaxation

その吐き気の原因は…?冷え性と吐き気の意外な関係

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

  • Food

温活飲み物!体温を上げる飲み物11選、下げる飲み物5選

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

  • Exercise

意外と知らない?体幹トレーニングの効果・メリット

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

  • Exercise

お風呂で出来る!基礎代謝アップに役立つ”筋トレ運動”

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

  • Column

電動歯ブラシに向いた歯磨き粉のおすすめをチェック!【歯科医監修】

PAGE TOP

PAGE TOP

閉じる