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音と脳の研究者&Dr.DJ宮崎敦子「脳と音楽に関する研究」を始めたワケ

音と脳の研究者&Dr.DJ宮崎敦子「脳と音楽に関する研究」を始めたワケ

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音と脳の研究者&Dr.DJ宮崎敦子「脳と音楽に関する研究」を始めたワケ

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「脳と音楽の関係に関する研究」と聞くと、いろいろな研究があるように思いがちだが、実は世界的に見ても、この分野の研究者は少ないのだという。

そんな中、気鋭の学者として、今後の研究に注目が集まっているのが、宮崎敦子さん。

宮崎さんは、なんとDJとしても活躍するかたわら、脳と音や音楽との関係について研究を続け、この4月から、あの理化学研究所で研究することになったバリバリのリケジョだ。

現在、進行中あるいは構想中だという、脳と音楽や音、またはリズムと身体の関係などについて、さまざまな観点から、おもしろい話を分かりやすくお伺いした。

第1回は、宮崎さんが脳と音楽の関係について研究を行うことになった、その理由です。

脳と音楽の研究者は世界でも数えるほどしかいない

──脳と音楽や音のいい関係について研究している人って、世界的に見ても少ないと聞きましたが。

そうなんですよね。やっぱり、人間が普段、得ている情報というのは、圧倒的に視覚によるものが多い。だから視覚と脳の研究をしている人はすごく多いんです。

でも、聴覚と脳の研究をしている人というのはかなり少ないですね。ましてや、音楽がなくても人間は生きていけるものなので、脳と音楽のいい関係に関する研究となると、さらに少ないのです。

音楽って、人の暮らしの中に溢れていて、特に私などは研究者でもありながら、DJをやったりレコード屋をやったりもしてきたので、音楽がこの世からなくなってしまうと、本当に困ってしまう一人なんです。

人と音楽は、古くから密接な関係にあるといえます。にもかかわらず、脳と音楽ということに絞って論文や研究を探してみると、その数は非常に少なくなってしまう。確かに研究者として有名な人はいらっしゃいますが、脳と音楽ということになるとかなり限定されてしまって、研究者の数も世界でも数えるくらいになってしまいます。

──研究の分野としてはマイナーなのに、なぜ、脳と音楽に関する研究の道に進むことになったのですか?

もともと私の祖父母は、明治時代から続く社会事業を行っていて、児童養護施設のほかに保育園を経営していたんです。その流れで、高齢者の方たちのためのデイサービスであるとか、特別養護老人ホームなども作って、子どもと一緒に生活できる複合施設を始めたかったのです。

そこで、私は東北大学の大学院在学中から、体が思うように動かなくなる高齢者のために、肢体不自由学を勉強しながら、リハビリテーション分野の講師をしたりしていました。その一方で、DJ活動のかたわら、レコード屋も始めていましたけどね(笑)。

その頃、運動障害は脳に関係していることが多かったので、次第に脳に興味を持つようになりました。

私自身、その頃に脳髄膜炎というけっこう重い病気になってしまい、博士号を取得する夢は諦めていました。しかも、自分が一生懸命に勉強していた学問も、10年以上経つと、ものすごく古いモノになってしまった。

当時、私は肢体不自由学という学問では「脳が原因で身体が動かなくなる」と習っていて、「脳の細胞は一度死んでしまったら二度と元に戻らない」と教えられていたものです。

ところが、ここ5年ほど前から、脳の細胞は一度死んでも生き返ると言われるようになって、それまでの学説が覆ったんですよ。

医学や科学の進歩によって、学問も大きく変わってきている。そこで、「今まで私が習ったり、勉強してきたことは何だったの?」っていう疑問が湧き上がってきました。

──医学や科学の進歩というと、例えば?

ちょうどそんな疑問が沸き起こってきた頃に、脳の活動を可視化できるfMRIという手法が登場しました。みなさんもよく知るMRIは、脳の断面をスライスしたように見ることができるものですが、fMRIは、脳の活動がどうなっているかを知ることができます。

脳の細胞が活動するときは、血液を集めないといけない。つまり、脳の活動が活発になっているところには、血液が集まるんですよね。その血液の移動が分かるようになったことで、脳の活動がどの部分で活発になっているのかが、判明してきたわけです。

これまでできなかった研究が可能になった

──脳のどこが活発になっていて、どこが休んでいるのかが一目瞭然になったことで、やりたい研究ができるようになったということですか?

そういうことですね。音楽的にはちょっとマニアックな話になってしまうかもしれませんが、私はクラブなんかでよくかかるハウスミュージックが大好きなんですよ。

ハウスミュージックって、メロディーとか歌よりも、バスドラムのドン、ドン、ドン、ドンという低音が延々と鳴り続けるような、リズムやベースが強調された音楽です。

そういう機械的な音が嫌いな人もいますけど、私はハウスミュージックのあの低音のリズムを聴くだけで、キュンとなるんですよね(笑)。クラシック好きの人が、好きなクラシック音楽を聴くだけで鳥肌が立つのとまったく一緒。

あの低音のリズムに鳥肌が立つようなハウスミュージックのリズムと、脳の関係というのは、いったい何だろうっていうのが、私が今やっているいくつかの研究の原点なんですよ。

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──好きな音楽と脳の関係について、研究したいと思うようになったというわけですね?

だって、脳の活動を視覚化して見られる時代になったんですからね! コレしかないと思っていたところに、私が在籍していた東北大学には、あの「脳トレ」で有名な川島教授こと、川島隆太先生の研究室があって、そこにfMRIがあると知ったんです。

脳の活動量と活動が活発な場所を見ることができる

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※上写真/fMRIの画像

川島教授の脳トレというのは、そのfMRI研究によって開発されたものです。

脳トレをすると、脳のある部分に血液が集まって、その部分の活動が活発になります。また、作業記憶トレーニングをすると、脳の皮質の訓練した部分が鍛えられて、マッチョにもなります。

つまり、やっているときの脳の活動が分かり、またトレーニングを続けることで、その効果がさらに発揮されたかどうかを調査します。そして、脳に影響があったと認められるモノをピックアップしながら作られていったプログラムが、脳トレや学習療法です。

せっかく脳の活動が見えるようになったのだから、脳トレの研究のように、音楽を聴いたときに脳の活動がどう変化するのかを、知りたいじゃないですか。

音楽を聴いて脳の活動が変わらないわけがないですし、身体の反応も変わるし、何よりもダンスミュージックを聴けば踊りたくなりますよね。

踊りたくなるということは、脳の中で何かの反応が起きているということなんです。脳がどう変化しているのかが分かるようになったのだから、それをどうしても見てみたかった。

それで、音楽と脳の関係や、脳の活動に関する研究をしたいということで、他の研究室の所属だったにもかかわらず、川島教授に直談判をすることにしたんです。今、考えたらけっこう無謀でしたね。よく入れたものだと思います(笑)。

リズムに特化した研究をしたい!と、脳トレで有名な川島教授に直談判

──どうやって川島研究室に入ることができたのですか?

ある講義で川島教授が、額にセットするだけで、人と人とのコミュニケーションの度合いが測れるマシンを発明したと話していたんです。それを実験で、サッカーをしている選手に取り付けると、選手同士でうまくコミュニケーションが取れているかどうかが分かるというんですね。

それを聞いたときに、対戦するスポーツで研究するよりも、音楽で研究するほうが絶対に脳活動の変化が顕著に出るに違いないと、ひらめいたんです。それで、居ても立ってもいられなくなって、意見書を出しました。

もちろん、研究室に入れてもらえるとは思っていなかったのですが、どうしても音楽で研究をしてみたい、と(笑)。

そのとき書いたのは、人が持っているリズムはどこから来るのか、とか、リズムを聴いたり何かを叩いてリズムを刻むことで、人の行動が変化するのは確かだから、そのときに脳の中で何か活動の変化があるんじゃないか、とか。

そういうリズムに特化した研究をしたいんです、と無我夢中で訴えました。

──熱意が伝わったというわけですね?

とにかくメールしてみたら、「ちょっと研究室に来なさい」ということになって。それで行ってみたら「音楽と脳についての研究している人がいないんだよね」と。

しかも、「太古の昔から、人間は太鼓を叩いてきたのだから、リズムっていうのは絶対に人間の脳との関わりにおいて何かあると思うけれど、誰もその研究をしていないんだよ」って。

すぐに「ウチの研究室においで」ということになって、トントン拍子で川島研究室に入ることが決まったんです。それが3年前のことでした。

実は、5年前には「井出 音 研究所」の所長である井出祐昭先生にも出会いました。井出先生は、渋谷駅や新宿駅の電車の発車時の音を作ったことでも有名なサウンド・スペース・コンポーザーなのですが、自分が研究していることを形にしてくださる方は、この先生しかいない、と。

川島教授、井出先生という 、2人の〝お師匠〟との運命的な出会いが続いたことが、私にとっては大きかったですね。

また、理化学研究所のイノベーション推進センターにある、中村特別研究室の中村振一郎先生にも出会いました。中村先生は、分子の活動を計算する「分子動力学」のスペシャリストです。

その計算式を使えば、人間の脳も分子でできているから、新しい手法で脳の活動を計算することができるかもしれません。

この3人の先生との出会いがつながって、私の脳と音楽の関係に関する研究が進むことになっていきました。これらの出会いがなければ、今の私の研究はなかったかもしれませんね。

──なるほど、音楽好きだった宮崎さんがずっとやりたかった音楽と脳の研究が、ここ数年の科学の進歩でやりやすくなったところに、3人の先生との出会いが重なって今日に至るんですね! 運命に導かれているという感じがします。

次回は、実際にどんな研究を行っているのか、「人は身体の中にリズムを持っている!?」について伺っていきます。

写真提供・宮崎敦子
取材・文 國尾一樹

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