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バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.4

バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.4

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バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.4

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フードライター&エディターの浅野陽子です。
 
1980年代後半のバブル期に起きた「イタ飯(めし)」ブームから30年あまり。パスタ、ピッツァ、カルパッチョなど、イタリアからやって来た料理であることを忘れるほど浸透し、日本の食卓にイタリア料理は欠かせなくなりました。「パスタは家と外で週2〜3回食べる」という人も少なくないと思います。
 
しかし筆者自身を含め、イタ飯ブームの当時、子供だった世代も中年以上になりました。食べ歩き好きの人も増えたいま、大人はこの30年で目を肥やし、「本物」と呼べるイタリア料理や食材をきちんと食べているでしょうか?
 
この壮大なテーマについて、イタリアの食のプロたちに「本物のイタリアンの選び方・楽しみ方」について取材し、シリーズで紹介します。過去の連載はこちらをご覧ください(第1回第2回第3回

シリーズ第4回目は、昨年秋にオープン、筆者が「2017年で一番おいしかったイタリアン」と感銘を受けた、日本橋のタヴェルナ・マルコポーロさんのピッツァイオーロ(ピッツァ職人)であり、同店の経営にも携わっている馬島寿宜(まじま・ひさよし)さんにお話を伺います。


Taverna Marco Polo(タヴェルナ・マルコポーロ)
東京都中央区日本橋久松町9-8
都営浅草線 日本橋駅・都営日比谷線 人形町駅・都営新宿線 浜町駅(いずれも徒歩3分)
03-3527- 2215
ランチ/11:30〜L.O.14:00
ディナー/17:30〜L.O.21:45
月曜定休
https://taverna-marcopolo.com/


 

大手企業のキャリアを捨て、ナポリピッツァ職人の道へ

−−前回の取材では佐藤シェフにインタビューさせていただきましたが、今日は同店のピッツァイオーロ(=ピッツァ職人)である馬島さんにお話を伺います。ナポリピッツァは日本でおなじみになりましたが、どのようにしてピッツァ職人になられたのでしょうか。

僕は料理の道に入ったのは少し遅くて、大学を出て広告代理店に入ったのですが、3年で辞めてナポリに行きました。いまから20年前くらいです。帰国してイタリアンレストランで働いたり、当時あまりなかった、薪釜で焼くナポリピッツァの店を仲間と立ち上げたりして、いまに至ります。

−−最初の会社は有名企業ですよね!現在のナポリピッツァ人気を見るとまさに先駆けですが、そのキャリアを捨てて、未知の国に渡るのは怖くなかったのでしょうか?

食べることが好きだったのと、僕は父親の転勤で小学校時代から中東のテヘランや、オーストラリアのメルボルンに住んでいて、海外は慣れていたので…中東とヨーロッパは近いので、実は子供の頃にナポリに行ってピッツァも食べているんです。30年以上前の話ですが、当時の体験が忘れられなかったのもありました。


写真:イタリア南部のカンパーニャ州の州都ナポリ。美しい港町で世界遺産にも登録されている。

−−なるほど。ナポリではどんな修行をされたんですか?

創業140年くらいの「マットッツィー」というナポリピッツァの老舗店で2年間、朝から晩まで働いていました。ナポリに本部があり、日本でも2006年に支部ができた「ベッラ・ピッツァ・ナポリターナ(真のナポリピッツァ)協会」の副会長が経営する店です。ナポリピッツァの発祥は約160年前と言われており、同じくらい歴史がある老舗店のうちの一つでした。

ナポリのレシピを再現し、感じたズレ

−−ナポリピッツァの本場の空気感や味を、どっぷり体感してこられて、帰国後は日本で「本物のイタリア料理」を再現されてきたのでしょうか。

若かったこともあり、「時差のない、東京でもNYでもどこでも本物と同じ味を出すこと」にこだわっていましたね。当時はナポリピッツァは日本にあまりなくて、モッツァレッラチーズ一つとっても良質のものが手に入らず、苦労しました。しかし、年を重ねるにつれ、考えも変わってきました。

−−どのように変わられたのでしょうか?

ナポリから帰ってしばらくは現地と同じ材料やレシピを突き詰めていましたが、ナポリで習得したことをそのまま日本で再現すると、ズレが出てきてしまうんですよね。

−−面白いですね。馬島さんが感じられたズレを、詳しく教えていただけますか?

前回、うちのシェフの「パスタの塩分がちょうどいい」と話されていましたが、ピッツァもナポリのレシピをそのまま再現すると、気候や水のちがいか「しょっぱいね」と言われてしまうのです。また、ナポリではピッツァ5〜6枚を薪釜(電気やガスより非常に高温になる)で一度に焼くので、ピッツァの端っこはやや焦げるのが普通です。

イタリア人は、そうした少々の焦げも含めて「手作り感」を楽しむのに、日本では「焦げている」とクレームが出ます。また、ナポリと同じ分量(ピッツァ1枚約210g)を出すと食べきれないお客さまが多く、本場のサイズを無理やり通す必要があるのかなと、長年やるうちに考え始めて…。


写真:馬島さんが店内の釜で焼き上げる「マルゲリータ」。ふっくら、もちもちした生地にトマトの酸味とチーズの甘みが合わさり、とても美味

ナポリでは9割の人がマルゲリータを注文するが…

−−なるほど…イタリアと日本を両方、熟知された方ならではの視点ですね。

またナポリでピッツァと言えば「マルゲリータ」で、お客さまの9割はマルゲリータしか召し上がりません。でもせっかく四季折々のおいしい魚貝や野菜が豊かな日本にいるのに、ナポリの本場にならってマルゲリータを出しているだけではもったいない。

薪や釜の温度管理など基本はきちんと守り、イタリアと同じ粉や、鮮度のよい真正品のオリーブオイルやチーズを選んだうえで、日本の旬の具材を使ってアレンジしたものも、正しいナポリピッツァなのではと思うようになりました。


写真:ポンペイの遺跡。2000年前に繁栄したが、火山により一瞬にして壊滅した古代都市。

2000年前のナポリピッツァのルーツをたどれば、アレンジも本物

−−日本ならではのアレンジや調整も必要だと?

ナポリのポンペイの遺跡に行くと、いまのピッツァ釜とまったく同じ構造の釜があって、2000年前からパンのようなものが食べられていたのがわかります。豪華な食材はおろかトマトもなく(※)、焼いた生地にありものの具材などをのせていたのがピッツァの原型だったと言われ、そのルーツを考えると、日本ならではのオリジナリティを加えてご提供するのも、本物のイタリア料理ではないでしょうか。

※トマトの原産地は南米で、ヨーロッパに輸入され食用になったのは18世紀からだと言われる。
 
−−いろいろ面白いお話を伺いましたが、最後に何かひと言ありましたら。

スマホの普及で「インスタ映え」という言葉がはやって、味より見た目のインパクトが重視されがちな風潮は残念ですが、一方で最近のお客さまは、新店情報や食材・ワインも本当によく調べていらっしゃるのに驚きます。我々レストラン側も気を抜かず学び続け、新しいものをご提案していかなければならないと思っています。


写真:馬島さんおすすめのイタリア産白と赤。お店では食べる料理や、好みに合わせたワインの提案をしてくれる。

−−ピッツァが2000年前からあったことにも驚きますが、ルーツを伺うと、日本でのアレンジも本物になるというのは納得です。馬島さん、ありがとうございました!次回は日本でイタリア食材を扱う小売業界のプロにお話を伺います!
 
協力:Taverna Marco Polo(タヴェルナ・マルコポーロ)
取材&文・写真:浅野陽子

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