あなたにちょうどいい、リズム|Rhythm

バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.2

バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.2

  • Food

バブル期の「イタ飯」ブームから30年。当時は子供だった日本の大人はいま、“本物のイタリア料理”を食べているか?Vol.2

更新日:

| ライフスタイル | 料理 | 食事 |

フードライター&エディターの浅野陽子です。
 
1980年代後半のバブル期に起きた「イタ飯(めし)」ブームから30年あまり。パスタ、ピッツァ、カルパッチョなど、イタリアからやって来た料理であることを忘れるほど浸透し、日本の食卓にイタリア料理は欠かせなくなりました。「パスタは家と外で週2〜3回食べる」という人も少なくないと思います。
 
しかし筆者自身を含め、イタ飯ブームの当時、子供だった世代も中年以上になりました。食べ歩き好きの人も増えたいま、大人はこの30年で目を肥やし、「本物」と呼べるイタリア料理や食材をきちんと食べているでしょうか?
 
この壮大なテーマについて、イタリアの食のプロたちに「本物のイタリアンの選び方・楽しみ方」について取材し、シリーズで紹介します。(第1回目の記事はこちら

シリーズ第2回目は、東京にある在日イタリア商工会議所のイベント・マネージャーとして、日本に本物のイタリア食文化を広く伝えるべく、活動されている中島峻介さん(写真下)にお話を伺います。


在日イタリア商工会議所(略称:ICCJ/Italian Chamber of Commerce in Japan)
1972年設立。「イタリアと日本のビジネスの架け橋役」として40年以上、在日イタリア関連企業の日本での商業活動をサポートしている。


イベントを通じて真のイタリア食文化を広めたい

−−中島さんは東京で料理人をしたのちイタリアに6年間在住、そして現職は在日イタリア商工会議所(以下「ICCJ」)のイベント・マネージャー、というユニークなご経歴をお持ちです。現在はどんなお仕事をされていますか?


全国の若手料理人が同じテーマでイタリア料理を競い合った「イタリア料理コンクール」(協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July)

食をメインとしたイベントの企画・実行を行っています。若手料理人が競い、著名なイタリアシェフとメディアが審査員をした「イタリア料理コンクール」(写真上)やパスタなどのイタリアブランドを六本木ヒルズで楽しめる祭典「イタリア・アモーレ・ミオ!」(写真下)を担当しています。


2日間で5万人を動員した昨年の「イタリア・アモーレ・ミオ!」(協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July)

日本全国にイタリア料理店は18,000軒あるが…

−−私も取材しましたが、どれもイタリアの美食を楽しめるイベントでした!中島さんは、近年の日本のイタリア料理をどう感じていらっしゃいますか?

日本にイタリア料理店は18,000軒もあるそうで、パスタの存在感も圧倒的ですし、身近になっています。しかし日本でのイタリア料理の理解に、違和感を感じる点も多々あります。

−−違和感とは、どんな点でしょうか?

大前提は「食事は自由に楽しむもの」が、料理人でもあった私自身の考えで「本物のイタリア料理はこれしかない」と押しつけたくはないのですが…

まず、日本でイタリアの「郷土性」が理解されていないことが残念です。イタリアは20州あり、元は20の王国だったのがまとまって共和国となったので、郷土色がとても豊かです。日本も江戸時代は別々の藩でしたが、イタリアの場合、北部・中部・南部の各州の違いが、現代でも如実に、食文化や人柄に出ています。

−−わかりやすいところでは、麺文化の違いですよね?

そうです。日本でパスタといえばまっすぐな乾麺ばかりですが、イタリアで乾麺はナポリやシチリアなど南部で食べるもので、北部ではいまでもマンマや、料理人が厨房で手打ちしたやわらかいパスタがメインです。

日本で一番食べられているミートソース・スパゲッティーは、北のエミリア・ロマーニャ州の、ボローニャ発祥の「ボロネーゼ」ソースを、南イタリアの乾麺にかけるという、イタリア人から見ると不思議な食べ物なのです。


先日もボローニャ出身のイタリア人女性と話したら「ボロネーゼソースは手打ち麺だからこそからむもので、あんな表面がつるつるした乾燥パスタで食べるなんて、あってはならない」と怒り心頭で(笑)

ナポリタンや明太子パスタもない、イタリア人に違和感のない料理店を

−−日本で人気の「ナポリタン」も、イタリアの本場を知る人には違和感のあるメニューですよね。


日本在住のイタリア人たちは「ナポリにあのような料理はない」と口を揃えて言っています(笑)。パスタのソースにケチャップやタバスコを使うこと自体、イタリアではありえないのです。スパゲッティーはイタリアから日本に直輸入されたのではく、第二次世界大戦前後にアメリカを経由して来たので…当時はソースを作る余裕がなく、ケチャップをかけた方が簡単だ、と生まれたのかもしれませんが。

−−「明太子(たらこ)スパゲッティー」や冷たいパスタもイタリアにはないですよね。中島さんから見て日本のイタリア料理は、まだ独自の解釈が多いのでしょうか?

ただ、一部の日本人にはイタリアが大好きで、郷土やワインにも詳しい方も確実にいらっしゃいます。そういった方が満足する、本物のイタリア料理を提供するレストランも日本全国にあります。ICCJではそのようなお店を認定する「A.Q.I.(Adesivo di Qualita Italiana)」というプログラムを2011年から実施しています。

−−「A.Q.I.」はどんな基準を満たしたレストランが認定されるのですか?

来日したイタリア人や、在日イタリア人を連れて行って、彼らが違和感を感じない内観や伝統に基づいた料理、サービスを提供しているお店です。ICCJの日本人スタッフが推薦し、審査に進む場合や、お店側から自由にエントリすることも可能です。ただ、明太子・たらこスパゲッティーやナポリタンがメニューにあるお店はお断りしています。

日本人が海外で和食店に行って、日本国旗があるだけで料理や内観は洋風だったりして違和感があると「本物の日本料理を出す店」ではない、と考えるのと同じ基準です。


写真:日本のA.Q.I.の認定店一覧。「郷土料理別」「カテゴリ別」に検索できる(ICCJウェブサイトより)

−−「A.Q.I.」の認定店なら「本物のイタリア料理」を食べられるのですね?

そうです。また、A.Q.I.は日本のICCJが独自に認定しているものですが、イタリア本部でより厳格に審査している「Ospitalita Italiana(オスピタリタ・イタリアーナ)」という認定もあります。

日本を含む48カ国のイタリア料理店が対象で、ミシュランのような抜き打ち審査はないですが、シェフとの面談はイタリア語で行い、完全なイタリア人の視点で選ばれたお店のみが認定されています。

A.Q.I.はウェブサイトで認定店86店が一覧になっていますが、「Ospitalita Italiana」は閲覧できるリストがなくてすみません…こちらの認定店は日本国内に49店あり、お店に掲示されている「認定証」で確認いただけます(写真下)。


写真:内観・料理・サービスともに「本物のイタリアンを食べられる店の証」

−−「本物のイタリア料理」が日本国内でもまちがいなく食べられるようになったのは嬉しいですね!

私がA.Q.I.を担当した当初は、日本で「おいしいイタリア料理店を知らない?」ではなく、「おいしい『トスカーナ料理』や『ピエモンテ料理』の店を知らない?」と「州で名指し」してもらえるくらい、各郷土の魅力が浸透することが目標でした。認定店はいずれも郷土色を強く出しているので、日本でより理解が深まることを願っています。

サラダの「ドレッシング」はイタリアで見つからない

−−ほかに中島さんが取り組まれていることはありますか?

ICCJでは最高品質のエキストラ・バージン・オリーブオイルを決める国際コンテスト「J.O.O.P. (JapanOlive Oil Prize)」を主催しています。エントリできるのは世界各国のオリーブオイルですが、審査員はイタリア政府認定のオリーブオイルテイスターを中心とした、トップクラスのエキスパートたちです。


「J.O.O.P.2017」の表彰式の様子(協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July)

−−オリーブオイルは、イタリアで生野菜を食べるときに必ず使いますよね。どのレストランでも、客席にオリーブオイルとバルサミコが置いてあり、自由に大量にかけるスタイルに驚いた記憶があります。

日本でおなじみの「ドレッシング」は、イタリアではまず見かけません。オリーブオイルとバルサミコ、塩、こしょうから好きな組み合わせを、好きなだけかけるのが文化で…私はウンブリア州のペルージャ大学で勉強したのですが、大学内の食堂にもそのセットがありました。

高品質のオリーブオイルで、「家イタリアン」も本物の味に

−−オリーブオイルはドレッシングより飽きないですよね。かけすぎてもしつこくないですし。

サラダや、パスタ、カプレーゼ(モッツァレッラチーズとトマトの前菜)にかけてもおいしいです。ただ、日本で手に入るオリーブオイルは品質の差が大きくて。本物のイタリア料理をご自宅でも味わうなら、ぜひ高品質のオリーブオイルを選んでいただきたいです。


高品質のオリーブオイルは香り、辛み、味わいの深さ、すべてが圧倒的(協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July)

−−本物の、高品質のオリーブオイルはどうやって選べばよいのでしょうか?

こう言うといつも躊躇されてしまうのですが、1本3000円以上のものが基準です。入手先は百貨店やチェーンの輸入食品専門店でもどこでもかまいませんが、その値段ならまちがいなくおいしいものに出会えると思います。

−−調味料に1本3000円は、ちょっと迷う値段ですよね?(笑)

そうなんですが…「エキストラ・バージン」と表示されながらも、1本400〜500円で売っている工業製品的なオリーブオイルと比べると、どれだけ手間をかけて抽出されているのかわかる味で、感動します。ワインは1本3000円でもひと晩で飲んでしまいますが、オリーブオイルは鮮度を保ったまま一カ月は楽しめます。オリーブオイル1本にこだわるだけで、イタリア料理への世界観も変わります!


−−たくさん興味深いお話が聞けましたが、最後にひと言ありましたら。

郷土性への理解はもっと広めたいですが、一方でここ10年の日本のナポリピッツァの進化は、目を見張るものがあり、イタリア料理や食材を見極める目も、より研ぎ澄まされていくと期待しています。

イタリアのフェスティバル「イタリア・アモーレ・ミオ!」は今年も行います。昨年より規模を大きくし、試食できる食のブランドも増やす予定ですので、イタリア料理に詳しい方も少しだけ興味がある方も、遊びにいらしてください!(東京の4月21・22日開催を皮切りに名古屋・大阪でも開催)


2018年の「イタリア・アモーレ・ミオ!」は昨年の六本木ヒルズ開催から天王洲アイルに変わり、より大規模になる予定(協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July)

−−中島さん、今日はありがとうございました!次回はイタリア料理店の現場を取材します!
 
協力・写真提供:在日イタリア商工会議所/Hotter than July
取材&文・写真:浅野陽子

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • Line
  • Hatena
  • Pocket

関連キーワード

| ライフスタイル | 料理 | 食事 |

関連記事

疲労回復・食欲増進レシピ!韓国風ピリ辛牛肉炒め弁当

  • Food

疲労回復・食欲増進レシピ!韓国風ピリ辛牛肉炒め弁当

体を冷やさない夏野菜の食べ方

  • Beauty
  • Food

体を冷やさない夏野菜の食べ方

香りと旨味がやみつきになる大人のグルメ、燻製料理がじわっとブーム!(前編)

  • Food

香りと旨味がやみつきになる大人のグルメ、燻製料理がじわっと ...

美容にも身体作りにも!手作りナッツミルクのレシピ

  • Food

美容にも身体作りにも!手作りナッツミルクのレシピ

忘年会&新年会では「あたため効果のあるお酒」をチョイス

  • Beauty
  • Food
  • Relaxation

忘年会&新年会では「あたため効果のあるお酒」をチョイス



新着記事

青山剛の美BODYストレッチ(全12回) ~vol.9:脚(膝より下)編~

  • Beauty
  • Exercise
  • Special

青山剛の美BODYストレッチ(全12回) ~vol.9:脚(膝より下)編~

体温計はコンビニでも買える?急な発熱でも慌てない買い方のコツ

  • Column

体温計はコンビニでも買える?急な発熱でも慌てない買い方のコツ

腰痛対策にコルセットを使う場合のメリット・デメリットまとめ

  • Relaxation

腰痛対策にコルセットを使う場合のメリット・デメリットまとめ

腰痛の原因となる筋トレと腰痛持ちでもできる筋トレ:下半身、体幹、脇腹を鍛えよう!

  • Exercise

腰痛の原因となる筋トレと腰痛持ちでもできる筋トレ:下半身、体幹、脇腹を鍛えよう!

筋トレ後に筋肉痛がこない理由:筋肉がついた証拠?

  • Exercise

筋トレ後に筋肉痛がこない理由:筋肉がついた証拠?

人気記事

インタビュー:村山彩 旅先で何を食べる? トライアスリートの体を作る食事【特集:トライアスロンと旅】

  • Special

インタビュー:村山彩 旅先で何を食べる? トライアスリートの体を作る食事【特集:トライアスロンと旅】

筋肉の疲労回復におすすめのマッサージ4選:筋肉痛になる前に対処できる!

  • Relaxation

筋肉の疲労回復におすすめのマッサージ4選:筋肉痛になる前に対処できる!

疲労回復レシピ!野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」の作り方

  • Food

疲労回復レシピ!野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」の作り方

ロンドンの男女は自転車ライフで輝いている!

  • Beauty
  • Column
  • Exercise

ロンドンの男女は自転車ライフで輝いている!

PAGE TOP

PAGE TOP

閉じる